我が名は怪盗紳士

キール兄貴が看守のお喋りから聞きとどめていたパスワードを教えてもらい、地下通路の封鎖を解放。
工場区画から、ついに中枢塔へとたどり着く。
さあ、最終ラウンドだ。

まずは、パーティー編成をエステル・ヨシュア・オリビエ・クローゼに。
二階層で待ち受けていたのは、執行者【怪盗紳士】ブルブラン。
以前からたびたびヨシュアなどが口にしていたけど、結社において執行者と呼ばれる身分の人間は非常に権限が強いようだ。結社の大幹部にあたる蛇の使徒であるワイスマン教授にすら彼らに命令をくだすことはできないらしい。
ということは、今回教授の計画に参加している執行者たちは、全員自分の意志で教授に協力しているということになる。

ブルブランは元々リベール王国とは関係の薄い人物。以前、帝国で活動していた点や、その貴族趣味な風貌、言動から推察するに帝国人なのだろうか。執行者は、皆闇を抱えている存在。ならば、ブルブランの抱える闇とは何なのか。
今回の作中においては、その点について触れられることはほとんどなかったが、彼の発言などからいろいろと推察することはできる。これは乏しい情報から組み立てた単なる妄想なので、適当に読み流して欲しいのですが。
たびたび、彼は希望が潰え去ることの美しさに拘泥する姿勢を見せてきた。今回、彼の趣向とはあまり沿わない教授の計画に最後まで付き合ったことにも、エステルたちが苦境を跳ね返して強烈に輝かせていた希望の光に引き寄せられ、最後までこの一件に関わったようにも見える。
彼が望むのは、希望の失墜。
過去に、彼は希望に裏切られたことがあるのではないだろうか。
以前、前ルーアン市長ダルモア氏の一族が保有していた宝物を盗んだ際、彼はいずれこの宝物が本来の持ち主である民衆の手に戻ることを祈る、という趣旨の声明を残していることからも伺えるように、基本的にこの人物は享楽的ではあるものの善性の人物であり、以後結社の実験として行った事件や、エステルたちに付きまとうように繰り返していた窃盗犯罪も、決して他人を傷つけるような行為はしてこなかったことからも、彼の性質が窺い知ることができる。
そんな彼の性質からして、その希望の失墜に対する負の拘りは逆に違和すら感じさせるのだ。
それは嫉妬か羨望か。
一連の事件の中、リベールという国は、そしてそこに生きる人々はどれほど困難な状況に置かれようと、決して希望を失うことはなかった。その情景は、希望を信じられなくなった人間にとってどれほど眩しくいらだたしいものだっただろう。
リベールが失わなかった希望の光、その象徴とも言うべき人物がエステルたちだ。
ブルブランが信じる美。それと真っ向から反抗する、だがブルブランの目にも美しいと感じてしまった輝き。それがエステルたちだとしたら、ブルブランが最後まで彼女らに拘らざるを得なかった理由も納得できないだろうか。

エステルたちとの戦いで、ブルブランは仮面を割られ、教授の計画から手を引くことを約束し、姿を消す。
リベールから去る彼の胸中に去来した想いとは、なんだったのだろう。

この英雄伝説の続編で、彼の足跡が垣間見えることがあればうれしいのだが。