その拳の重みを知れ。



ブルブランを退け、第三階層への扉と、転送ゲートを解放する。
転送ゲートで一気に一階に戻れるようになったので、それを利用して再びアルセイユに帰還。パーティー編成を変更する。

新メンバーは、エステル・ヨシュア・ジン・ケビン。

そう、第三階層で待ち受けていたのは【痩せ狼】ヴァルター。
ジンの泰斗流拳法の兄弟子にして、キリカさんの元婚約者。そして、彼女の父であり彼らの師匠であった男を死合で殺め、姿を消した拳法家。
なぜ、彼が師と殺し合う羽目になったのか。キリカを残し、姿を消したのか。
まさしく、その理由は、ヴァルターの、師匠の、そしてジンの、武林に生きる男たちの哀しい業そのものにあった。
キリカが、どうしてああも達観した様子で、どこか憐れみと優しさ混じりの視線で男たちを見守っていたのかが、なんとなくわかった気がします。
不器用で我儘な生き方しかできない男たちが、どれほどバカに見えていたんだろう、この女性は。そして、そんな男たちだからこそ、愛おしく思ってしまう自分を、彼らの生き方を肯定してしまう自分を、どれほど自嘲して生きてきたのだろう。

泰斗流を離れ、活人拳の志を喪い破壊のための拳を握るようになってしまった墜ちた拳士であるヴァルターを、意外なことにジンもキリカも、最後まで全否定することはなかった。
ただ、同じ道を行くはずだった男との別離を哀しみ、互いの道がぶつかりいずれ拳を交えるしかないことを認めるだけで。

ヴァルターも、己の道を見失いながらも、その因となった弟弟子を妬む様子も憎むも伺えなかった。ただ、純粋に敵として、拳を交える相手として受け入れていた。
ジンの態度からして、兄弟子としてのヴァルターは、ヤンチャなところはあっても弟弟子を気遣ってくれる、尊敬に値する兄弟子だったのだろう。
ヴァルターとの仕合を制したあと、ジンは自分が彼に勝てたのは泰斗流を背負っていたからだ、と語る。もう一度戦えば、勝敗はわからない、と。
泰斗流を失ってからのヴァルターは、技こそ極限まで冴えたかもしれないが、拳に重さを失っていたのだろう。
逆にいえば、彼もまた、元来背に重きを負うことによって強さを得る型の人物だったのではないだろうか。

ジンとの戦いで、自分を縛ってきた過去と一つの決着をつけたヴァルター。何か吹っ切れたように倒れた彼が、再び立ち上がったとき、彼の背には罪とはまた別の重みが負われているのではないだろうか。