問題児たちが異世界から来るそうですよ?YES! ウサギが呼びました! (角川スニーカー文庫)

【問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました!】 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

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魔王を倒そう!
うざぎはそんな大それたこと頼んでおりませんっ!


世界に飽きていた逆廻十六夜(さかまきいざよい)に届いた一通の招待状。『全てを捨て、“箱庭”に来られたし』と書かれた手紙を読んだ瞬間――完全無欠な異世界にいました! そこには猫を連れた無口な少女と高飛車なお嬢さま、そして彼らを呼んだ張本人の黒ウサギ。ウサギが箱庭世界のルールを説明しているさなか「魔王を倒そうぜ!」と十六夜が言いだして!? そんなこと黒ウサギは頼んでないのですがっ!! 超問題児3人と黒ウサギの明日はどっちだ!
これはまた、商業作品としては望外なほど突き抜けた大風呂敷を広げてきたものだ。箱庭世界という精緻に行き届いたルールの整備された世界を舞台にしながら、主人公たる三人にそれらのルールを問題にしない絶大なまでの力を持たせた上でフリーハンドを与え、さあ好きなように好き放題思ったようにやってみろと解き放つその小気味よいまでも潔さ。前提からして暴走上等、小賢しさを放棄してシッチャカメッチャカにしてやんよ、とばかりに勇んだ主人公三人組のキャラ設定。
よくぞまあ、ここまで突き抜けた作品を創りだそうと思い立ったもんだ。普通はある程度手綱を取っちゃうものなのに、実に楽しそうに放し飼いにしちゃってまあ。
ただ、さすがに主人公三人ともが三人とも、完全チートだと制御を失ってしまうと思ったのか、本当になんでもありなのは取り敢えず逆廻十六夜一人だけだった、というのはちと残念だった気もする。いっそ、久遠飛鳥と春日部耀にも十六夜クラスの力と野放図さがあったら、もっとシッチャカメッチャカになって面白かったのに。それを物語として制御できるかは定かではないけれど。でも、少なくとも力関係についてはまだ飛鳥も耀も行き着くところまで行くだけの余地がありそうなので、その辺は今後覚醒編とかありそうだなあ。現段階でも相当アレなのに、さらに覚醒って何よ、という話何だけど。
まさか、十六夜がパワー馬鹿だけでなく、智にも長けているとは思わなかったので、せめてそういう方面は飛鳥たちに担って欲しかったのだけれど……いや、それじゃあ十六夜がそれこそ単なる力で押し切るつまらない無敵ちゃんになっちゃうか。力だけじゃないあの享楽的な陰険さこそが彼の魅力に繋がっているのだろうし、ウサギが弄られる絡みにも繋がっているのでしょうしね。
今のところ、弱小コミュニティーを率いるお坊ちゃまは自分の望みにしがみつくだけで、それを貫くだけの資質をまだ見せられておらず、旧来の仲間や新たに加わることになった三人組をまとめて率いるだけの器を示せてないのだけれど、その辺期待できるんだろうか。現段階だと舐められて見下されても仕方ないと思う程度なのが勿体ない。少なくとも、現段階だと十六夜たちがコミュニティ「ノーネーム」に在籍しているのは単に面白そうだから、という以上ではなく、リーダーである坊ちゃんに対して付いていくだけの魅力を感じたわけじゃないですしね。十六夜なんかは積極的に彼にリーダーと成り得るだけの資質を持たせてやろうと、強引に色々と画策しているあたり、何気にお節介というか世話焼きなところがあるのかもしれないけど。いや、単に弄って面白がっているだけなのか?
一応コレ、女性陣は飛鳥と耀もいるけれど、メインヒロインはウサギになるんだろうか。十六夜とのやり取りや関係性を見る限り、そんな感じがするけれど。

メインの三人がチートと呼ばれて仕方ない力を持っていて、それを好き勝手に使いまくって大暴れしているにも関わらず、この箱庭世界の舞台設定が破綻していないのは結構凄い気がする。けっこう大雑把に見えてこれが実は舞台設定は頑丈に出来ているのかもしれない。この箱庭世界という神造空間もゲームともファンタジーともつかない独特の雰囲気を纏っててなかなかいい感じですし、ストーリー展開も悪党をぶっ飛ばし、仲間を見つけ、弱小コミュニティーを大きくしていく、という爽快感あふれる痛快なものですし、これは勢い良く楽しい作品でした。さて、どこまで暴走していくのか、まだまだ十六夜含めて底は全然みせていない段階なので楽しみ楽しみ。