自分用のMy包丁を欲しがるりん。彼女の場合、遊びや好奇心という自分も役に立ちたいという健気な気持ちが透けて見えるから、可愛くて仕方ないんですよね。いや、或いは自分も料理の一つやって当然という自負心が垣間見えるというべきか。小学校上がる前の幼女にして、ただ育てられるのではなく既に大吉と共同生活を営もうという気概が垣間見えるのだ。

電車で正面の席で赤ちゃんを見つけて、「赤ちゃん、かわいいね」。お前のほうがかわいいよっ!!

という訳で、また大吉の両親の家に何をしに訪れるのかと思ったら、単にお母さんがりんちゃんに会いたかっただけのような気もするが、目的は親のところにりんを預けて、連絡のとれた正子さんと話し合いに赴くことになっていたようだ。しかし、お祖母ちゃんもうりんにメロメロだなあ。
件の正子さんとの電話のやり取りが明らかになったのだが……これはなんとも酷いなあ。酷いどころか不気味ですらある。もっとこう、拒否するにしても何にしても、激しい反応を予想してたんですよね。それが、暖簾に腕押しのように手応えがない。

ファミレスで面会。って、聞き覚えのある声が後ろから。なにやら編集さんと相談する漫画家みたいな内容の話が……って、正子さんって漫画家だったのか!?
そして、ついに面通し。……え!? これが正子さん!? なんか、全然予想していたのと違った。具体的にこれだという容姿だのを想像していたのではないのだが、さすがに清楚そうで大人しそうな黒髪ロングのメガネっ子だとは思わなかった。えーー。うん、そうだな。もっとりんに似たフワフワと明るい髪質の人か、もしくはりんの回想の中にあった神経質そうで厳しく感情的な女性を想像していたんだと思う。
それがこれかーー。
しかし、その発言たるや……。こいつ、当事者意識あるのか!? もっと、自分の子供をあずかっている相手が突然現れたのだ。糾弾される事への怯えや反発、動揺や罪悪感みたいなものを浮かべてみせてもよかろうに、まるで自分には関係ないことみたいに喋りやがる。
どうも自分のこととして捉えていないっぽい。そして言うことは自分のことばかり。自分の都合ばかり。りんの事は尋ねないのかよ。今どうしてるとか、どういう子になってるとか。大吉が伝えても反応が薄い。
そも、大吉よく冷静にしていられるな。これも元敏腕営業マンの経験の賜物か。内心相当イライラっと来ているのは透けて見えるんだが、完璧に理性の下に封じてる。見事に冷静に徹したなあ。
そしてついに核心の質問。自分が今りんをあずかっていることをどう思うのか。りんと一緒に暮らしたいと思わないのか。についてこの女、即答しやがった。りんを要らないだと!? あんなイイ子を要らないだと!?
なんて無責任。完全に子供だ。親になる資格なんざどこにもねえ。いや、その自覚は本人にもあったからこそ、母親で居るのをやめようと思ったのか。だがいずれにしても無責任すぎる。
そのくせ、りんの今後についてりんの意志関係なく決めようとするあたり、親の意識バリバリなんだよなあ……。
ただ、自分が育てるわけじゃないのに、という話を抜きにしても、普通親の考え方としては正子さんの方が一般的だと思うんですよ。まだ幼稚園の子供に人生の判断を任せられるのか。それを決めてやるのが保護者としての責任じゃないのか。幼児に決めさせるのは酷い話じゃないのか。
そこで、りんとちゃんと話しあおうとする大吉は、やっぱり違うんですよね。偉いとかイイ人とかいうんじゃなく、りんとの関係性が親子と違うというべきか。
これは、大吉から正子との話し合いの内容を聞き、怒り心頭であれだけ正子の人間性をけなしまくっていた大吉母が、りんの苗字の問題については完璧に正子と同じ意見だったのも同じだと思うんですよね。女同士だからというよりも母親同士だからと捉えるべきかと。

養子にしようか、という提案。オレ、りんのことなら腹をくくれるよ。

オレ、りんのことなら腹くくれるよ。

ものすげえセリフ。こんな事、人生でも一度でも言える人間がどれくらいいるだろう。いや、これほどの事を言ってもらえる人がどれだけいるだろう。

My包丁買ってもらったりんが料理しているのを、大吉が傍らで見てるんですよねー。もう、このシーンすごい好き。

そして御飯のあと、大吉はりんに直接相談する。自分が本当のお父さんになるか? 養子になって、苗字同じになって、本物の父娘になるか?
すると、りんの答えは。お父さんはおじいちゃんだから。加賀りんがいい。そして、大吉はお父さんじゃなくていい。大吉は大吉がいい。
大吉はお父さんじゃなくて、大吉「が」いいんだって、この子はいうんですよ。大吉のままがいいと。これ、あなたはお父さんじゃないよ、という否定じゃなくて、大吉をまるごと肯定してくれてるんですよね。
今までの大吉の頑張りを、りんの為に頑張ってきたことを、そのりんが全部認めてくれたのです。全部まるごと、そのままでいいよ。大好きだよ、と。
そりゃ、泣くさぁ。泣くよぉ。なんだかんだと大変だったもん。これでいいのかと悩みながら、幾つもの決心と覚悟を重ねて重ねてここまで来たんだもん。この子のためなら、腹くくれるとまで思って。
そりゃあ泣くよぉ!!
しかしこの場面って、将来においても重要だったんだなあ……。

これからもずっと、ここがお前の家だからな。こんなセリフを、一緒に歯磨きしながらという何気のない日常のワンシーンの中で普通の会話として発するのがこの作品の素晴らしいところだよなあ。いいセリフだからって、大仰にやらなくてもいいんですよ。むしろ、さり気なく紛れているからこそ、心の底まで浸透する。

幼稚園のお遊戯会。前にりんが踊ってみせてくれたあれ、ただのお遊戯会かと思ったら、卒園式だったんかー! もう幼稚園卒園か。小学生になるのか、りん。いや、机もランドセルも買ってたけどさ。
そして、正子にはどうも男がいる様子。正子との縁はこれでおしまい、というわけじゃなさそうだな。

そしてラストのCパート。これがまた泣かせる。
今度大吉が泣いたら、わたしが抱いてあげるよー。

俺がりんを育てているのか、オレがりんに育てられているのかちょいちょいわからなくなる。

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