覇道鋼鉄テッカイオー 2 (覇道鋼鉄テッカイオーシリーズ)

【覇道鋼鉄テッカイオー 2】 八針来夏/Bou スーパーダッシュ文庫

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「わたしの分まで生きてね。愛してるわ。さようなら」
銀河に響く愛の言葉。この心は君を救うために。


心身を極限まで鍛え、兵器をも超えた力を持つ存在・武俠。
童貞のみが極めることのできる『童子神功』を使うカザンは、幼馴染みの美少女・ルゥランや、とある星の姫・アルフェミナたちとともに旅を続けていた。
そんな一行の前に暗黒武俠『神算魔女』ミャウ=ガーが現れ、取引を持ちかける。
不可解な内容のそれを拒絶したカザンたちだったが、今度は自分と同じ名をした少女を捜すジルエッダという少女が訪ねてくる。
このジルエッダこそがミャウ=ガーの求めていた少女だったことから、カザンたちはミャウ=ガーとその義父にして暗黒武俠最凶の男、『巨凶暴星』ガーナラクと対立することになってしまう。
アルフェミナからの依頼にも拘わるジルエッダを追う中で、カザンたちはジルエッダたちにまつわる哀しい、あまりにも哀しい物語を知る…!!
第10回SD小説新人賞大賞受賞シリーズ第2弾!


大陸間弾道鉄拳(オービットナックル)ッッ!!

もう最高じゃね、これ。
この技のイカした馬鹿馬鹿しさだけでも読むに値する。これロケットパンチなんですけどね、いわゆる。でも、スケールから何から今までに見たことがないレベルの段違い。ハッタリの効かせ方も段違い。一度躱してもスイングバイで再加速。惑星外周を一周して再攻撃とか、もうね、もうね♪
このスケールの馬鹿馬鹿しさを真面目にやるのって、なんかあれですよね。【斬魔大聖デモンベイン】と【鬼哭街】を合体させたような底抜けの楽しさがもう素晴らしいのなんの。やっぱ、宇宙を舞台にした武侠モノって、素敵極まるわ。

今回の敵となる十絶悪鬼の『神算魔女』ミャウ=ガーと『巨凶暴星』ガーナラクは、それぞれ悪党ではあるものの、一本筋の通った武侠としての誇り持つ格好良い悪なんですよね。勿論、暗黒武俠である以上、銀河武侠であるカザンたちとは拳と拳を交える間柄であり、それぞれに相容れぬ思想によって反目せざるを得ない関係なのですが、それでもお互いにある種の信頼を交えられる、敵として相交えるに胸の高なる敵なんですなあ。
特にガーナラクの爺さんなんぞ、銀河第一武侠と双璧をなす、暗黒武侠の第一人者にも関わらず、親馬鹿で小気味の良い実に楽しい爺さんで、いやもうなんでこのジジイ敵なの? と思ってしまうくらい素敵な爺さんなんですわ。ぶっちゃけ狂って頭のおかしい所がある銀河第一武侠と比べても、このじいさん娘思いだし、イカしてるし、三枚目さ加減がひっくり返ってむしろ格好良いくらいだし、ジジイ最高!!
その養女であるミャウ=ガーもまた、計算高い悪女かと思ったら、何だかんだと情深いし、約束は必ず守るし、悪ではあるものの非道は嫌いでこの一件でもやらかしている事に対していちいちフォローして被害が深刻にならないように手回ししているし、何より彼女らの今回の目的が、カザンたちとはやり方が違うとはいえ人助け、だったりするんで、全然憎めない。どころか、むしろ惚れ惚れとするようなイイ女っぷり。
自分を助けてくれなかった銀河武侠には、並々ならぬ思う所がある、というのもむしろ苦悩を抱え込む美少女という点でポイント高いですし。後半の、思わず計算も何もうっちゃって、感情に任せたまま爆発してしまうところなんかも、ガーナラクのジイさんじゃないけれど、この子の場合はそれくらい発散した方がいいんじゃないか、というような感じで、根本のところで暗黒武侠という以前に女の子らしさがあって……いやあ、実にイイ新キャラでしたよ。
もうラストの略奪愛宣言には、むしろ嬉しくなったくらい。この子は鬱屈してるよりも、そんな風に暗黒武侠として開き直って好き勝手やってくれた方が気持ちがいいですわ。この子の場合はどれだけはっちゃけても、悪の道を外れず、残虐非道な外道働きはしない、という安心感もありますし。

前回の直接拳を交えた敵であり、仇であった『氷棺冥送』グントラムへのリスペクトが多分に含まれていたのも、なんか感動モノでした。お互いに家族の仇同士でありながら、戦いの果てに認め合い、最後は自分の魂そのものである武術の秘奥を託して逝った仇敵グントラム。そのグントラムが残してくれた技が折々で切羽詰まった事態を打開するための鍵となり、今回の最後なんぞは亡き男の魂が手助けしてくれたように新たなる技が生まれ落ちる展開なんぞ、激燃えであると同時に胸が熱くなるようなシーンの連続で……もう、お腹いっぱいですわー。

とまあ、テンポのよいギャグや掛け合いを交えながら、涙あり、笑いあり、萌えがあり、感動があり、何より宇宙に浪漫があり! 宇宙を股にかける銀河武侠活劇、この第二弾もまたパワーも熱量もいささかも衰えず! 一期からのメインキャラたちも相変わらずいい意味ではっちゃけてて、ほんと読んでて楽しかった。アルフェミナ姫さまが元々ツッコミ担当だったけれど、朱に交わってしまったのか更に頭がいい感じに悪くなって、色々大変なことになってますが、それもまた良し!!
此処に来て、童貞で無くなれば無力になってしまい、ルゥランに守られるだけの存在になってしまう、という兼ねてからの男の矜持の問題もつきつけられ、ただ単純にルゥランが冒された内功の「毒」を解除するだけでは話が終わらないという点も浮き彫りになってきて、さあどうなるどうなる?
読む前から読んでいる間じゅう、そして読み終わった後も次の展開に思いを馳せて、とどまることを知らないこのワクワク感。たまんないっすわー。
いやあ、期待通り、それ以上の最高さ加減でした。バンザイ!! 次回も期待しておりますぞ♪

1巻感想