アテナが解き放った力によって訪れる闇。これは、単純に停電が起こっているのではなく、彼女の本質である闇の女王、原初の夜の女神としての力が解き放たれたために、プロメテウスの火、つまり人の叡智によって生み出された人工による光や火の力が掻き消されてしまった事によるものです。なので、あらゆる明かりは駆逐され、炎が封じられたためにアテナの力の圏内では完全な闇が訪れ、火を使って動く自動車なども動かなくなってしまったのです。ちなみに、電話、無線や冷房などといった光と火に関係ないものは通常通り動いている。電気も通電しています。動かなくなった車から脱出した甘粕さんと祐理が向かうは芝公園の七緒神社。

甘粕さんがここで色々と解説してくれるのですが、祐理がメダリオンから感じ取った起源、これはアフリカからもたらされたものではないか、という疑問に対して、彼はアテナ神とアフリカはリビアの女神ネイトが同一のものである、と記したギリシアの古書の話をしてくれます。



そして、そもそもギリシアの神々は余所からもたらされた外来の神が多い、という事も。そして、古来アテナの像の持つ盾には必ずその似姿が意匠として施されたという絆の深いメドゥサもまた、元々は魔物ではなく北アフリカで生まれた大地の女神なのでした。メドゥサ以外にも、南欧から北アフリカ、トルコやシリアなどの中東に至るまで地中海沿岸部にはアテナ神と相似の女神が非常の多く存在します。アタナ、アトナ、アナタ、アシェラト、アセト、アト・エンナ等など。ちなみに、アニメやカンピオーネ!とは関係ないですけれど、HJ文庫の【ひきこもりは神なのです】という作品の登場人物である千那さんという女性がウガリット神話のこの女神様だったりします。その女神様は、バアル神の妹でそりゃもう凄いシスコンでお兄ちゃんに対する執着がとんでもないのですけれど、このバアル神、じつは護堂の権能であるウルスラグナ神と習合したヘラクレスの最も古い原型の一つなのだと、原作では語られてるんですよね。
そういう観点から見ると、今後のアテナの護堂に対する執着にも因果が感じられてなかなか面白いんじゃないでしょうか。

さて、話は逸れましたが、アテナと類似するこれらの女神たち。その属たるは王たる主神の妹/娘/妻。戦いの女神であり、蛇の女神であり命を司る女神。
アテナの使者であるフクロウは、夜にのみ現れる不吉の鳥として凶兆として扱われながらも、知恵の象徴として崇拝されるという聖凶双方を表すシンボル。様々な要素が浮かび上がり、徐々に原初の女神としてのアテナに情報がまとまり近づいています。

アニメでは、ゴルゴネイオンに近づいてくるアテナに対して、祐理は逃げろ、と促す護堂ですが……実は原作では断ってもイイとは前置きしているものの、危険を承知でアテナを待ちぶせして欲しい、と依頼してたりします。
ウルスラグナ第一の権能「風」の化身の力で、一気にアテナの元に急襲をかけよう、という腹づもりだったのですな。ただ、この風の化身の権能、アニメでも語っている通り今まで使ったことがなくて、ちゃんとした効果範囲とか解っていません。そのあやふやさに、さすがに祐理も大丈夫なのかと不安がりまして、護堂も無茶言ってるなー、と理解していたのでサバサバと、じゃあ良いから逃げて逃げて、と。
この辺りの護堂の態度は、えらくサッパリしてるんですよね。ジメジメうじうじしていない。細かいことは気にしてないし、こだわりもしない。その代わり、どこか絶対的な信頼感を醸し出している。祐理が無茶苦茶言ってる護堂に激高しながらも、その依頼に身を委ねたのは、そんな絶対の信頼感を感じ取ったからでした。
彼の王たる由縁は、もうこの時点から発揮されていたわけですな。

アニメだとこの辺りのやり取り、非常に頼りないんですよね、護堂。むしろ、ここはあっけらかんとした態度でありながら根拠のない自信に溢れている自然体、という風にするのが、草薙護堂らしさだったのですが……根本的に演技指導間違えてないか?

人気の消えた街並みをひた走る護堂とエリカ。ここも原作とは違うところで、小説では動かなくなった交通機関に混乱した人ごみが大騒ぎしてします。ここで、これら「まつろわぬ神」が起こす災厄に対して普通の一般人にはどう説明されるのかがエリカから解説されるのですけれど、表向きは自然災害や何やら人が理解できる形で
説明されるようなんですが、実際は一般人もある程度神々やカンピオーネの仕業と察してるようなんですね。魔術の本場ヨーロッパなど、わりと頻繁にこういう事が起こるので、一般人も慣れておとなしくしているそうです。東京近辺はこれまでカンピオーネも存在せず、あまりこういう神々にまつわる災厄が起こっておらず、人々も慣れていないだけに混乱が巻き起こってますが、まあいずれ慣れるでしょう、という嫌なエリカの予言が(笑
ちなみに、ロスアンゼルスなんかだと、ジョン・プルートー・スミスがアメリカン・ヒーローよろしく、派手に大活躍しているので、こういう事態は一般人にも自明の事のようです、はい。

と、ここでエリカさん。祐理を弐号さんにせよ、と護堂に迫りました!! 
これ、ふざけているように聞こえますけれど、かなりエリカは本気です。彼女の考えとしては、能力的人格的に優れた祐理という人材は護堂の為にも是非ゲットして置きたいんですね。彼女の女としての心向きは、そりゃ勿論、護堂が他の女にかまけるのは面白くないのですけれど、王の臣下としては戦力の強化は必須。という、かなり健気な考えに基づいているのです。傍若無人に見えて、エリカってもの凄く献身的なんですよ。しかし、護堂の一番の女としての立場は、彼から一番愛情を受ける女であるという座は譲るつもりはない、という女としての自負もあり、ここから護堂ハーレムの女主人としてのエリカ・ブランデッリの凄まじい手腕が発揮されていくので、要注目。


ゴルゴネイオンを取り戻したアテナは、ゼウスの娘にしてアテナイの守護者、というくびきから解き放たれ、メティス/メドゥサ/アテナの三位一体の古の地位を取り戻し、天地冥府を総べたる女王、闇の地母神としての原初の姿を取り戻すのです。元の姿を取り戻した彼女から解き放たれた闇の風は、彼女が常から纏い続けるただ近づくだけで死へと誘われる冥府の冷気。霊力で守られた祐理ですら、冷気にまとわりつかれただけで死に至るほど。このアテナが都市の真ん中に現れたら、それだけで大惨事が起こるでしょう。まあ、将来的に殆どどうレベルの大惨事を、このアテナは引き起こしてくれるのですけれど。
繰り返しますが、この作品は原作では概ね怪獣映画のノリですからw
神話に曰く、かの軍神は強風の姿で聖者ザラシュストラの前に現れ、告げたという。我は最強にして最多の勝利を掴む者、人と悪魔の敵意を挫く者なり、と。
なぜかアニメではそよ風とともにいつの間にか現れていた護堂ですが、無論本来ならは強風の姿で現れた、という神話にある通り、渦巻く強風の中心から、忽然と登場するのです。王者の如く、覇者の如く、傍らに従者にして騎士である魔女を抱き寄せて。

この時、アテナと対峙した護堂の力の源泉。アテナに対する闘争心の起点は、かの女神の人間に対する蔑ろな態度そのものでした。自分と並び立つエリカを一顧だにしない、死に瀕した祐理へのどうでもよさそうな、人間そのものを無視した、足元の蟻と変わらぬ存在としてしか捉えない傲慢な態度に対する怒り。
ウチのエリカに舐めた真似をしてくさり、さらには健気な巫女さんをこんな目に合わせてくれておきながら、まともに見ようとすらしない。そのくせ、力を取り戻した愉悦に興じて、無分別に暴れ回ろうと無邪気に振舞っているその態度。
落とし前つけてやらにゃあなるめえさ。
平和主義者を標榜しながら、その実基本倍返し。仲間や身内が傷つけられたら、きっちり2倍にして殴り返す。それのどこが平和主義者なのやら。
そんな獰猛な笑みを浮かべて手ぐすねを引く平和主義者があってたまるか。

アニメでは、何故か黄金の剣を発動させるとともに、固有結界が発動してしまったのですが……なんぞこれ? いや、こんな設定微塵もありませんよ? そりゃもう、アテナと護堂の戦いは公共施設や建物や道路などを盛大にぶっ壊しながら繰り広げられる大迷惑極まりないもので、繰り返しますが怪獣映画みたいなものなのです。
アテナの攻撃も、眷属である蛇やフクロウを呼び出し襲わせるもの。護堂も別に剣なんか振り回しません。ってか、護堂って基本的にド素人なんですから、剣なんか操れないんですよね。むしろ、バットよろしくフリ回してたら、それはそれで似合うのですが。
護堂がアテナの眷属、そして彼女がコンクリートを造成して創りだした20メートルをも超える大オロチをあしらいながら駆け、人気のない戦場として選んだのは「浜離宮恩賜庭園」。
そこで抜き放つのは、アテナの神性を引き剥がす、言霊の剣。神の来歴を語りあげ、神秘のヴェールを引き裂く知恵の剣。
ここからは、原作で語られるアテナの来歴。
曰く、北アフリカの地よりギリシアに招来される以前、アテナは蛇の女神メドゥサと同一の女神であり、同時にアテナの母とされる知恵の女神メティスもまた彼女本人だった。その他多くの類似の名を持つ地中海沿岸の女神たちもまた、オリジナルである原初のアテナ……つまり、今此処で護堂と早退している女神の分身であり姉妹。
イシスやイシュタルと同じルーツを持つ、大地の女神にして冥府を支配する闇の女王、そして天上を司る知恵の女神。天と地と冥府の三位を司る三位一体の女神。戦神としての属性は、死をもたらす冥府神と戦争が結びついた後付けの属性。そして三位一体の本質となる部分は死と再生の循環、季節の移ろいを象徴するものである「蛇」。
同時に彼女のメドゥサとしての神格は、アテナが「鳥」と結びつく証明でもある。
ゴルゴン三姉妹は、その髪が蛇であるという特徴の他に、その背に黄金の翼を持つ女神でもあった。次女エウリュアレの名の意味は「遠くに飛翔する者」。そしてメドゥサは翼持つ天馬ペガサスの母。
フクロウがそうであるように、鳥には大地と冥府を行き来する往還の力があると信じられてきた。その鳥をも象徴するということは、アテナが大地と冥府の二界を支配するという証明でもある。
蛇であり鳥でもあるもの。すなわちアテナとは元来未だ神話が確定しない原初の時代において、「翼ある蛇」として崇められた生と死の女神。
大地と冥府を統べ、天上の知恵をも司る女神は、まさに女神の中の女神。女王の中の女王。
しかし、女権社会が遠のき王の時代が始まった時、至高の女神は男にとって徹底的に貶められることになる。陵辱によってゼウスに知恵を奪われたメティスを始めとして、生と死の女神たちは男神の妻となり妹とされ娘として括りつけられ、神話は改ざんされ、女神たちは落魄させられていく。蛇は魔物とされ、鳥は不吉となり、そして翼ある蛇、すなわち「竜」は邪悪の象徴として討ち果たされる魔へと駆逐されていった。
つまり、このアテナとは、原初のアテナとは竜であり、かつて地中海に君臨した神々の女王そのものなのである。

このアテナの過去を暴き立てる神殺しの剣をもて、護堂はアテナを追い詰めるのだが、実はこの剣、振るえば振るうほどに切れ味を失っていく。護堂は結局、蛇として不死を司り再生を繰り返すアテナを押しきれずに剣を使い果たしてしまう。
ここですでにアテナは、護堂の切り札が太陽の権能であることを見抜いています。闇の女神でもある彼女にもっとも効果的なのは太陽の光。護堂の権能がウルスラグナのものであることも見抜いているアテナは、その化身の一つである白馬の事も知っていて、彼がその最後の切り札を切る瞬間を虎視眈々と待ち受けていたのでした。
勿論、護堂もまあ見ぬかれていることを承知の上。まさに、相手の思惑を読みあった上での最後の鍔迫り合い。
ここで護堂が最後に切ってみせた切り札は、白馬……と見せかけて、アテナが無視し続けた人間の手。エリカがもたらしてくれた彼女の愛剣クオレ・ディ・レオーネ。白馬による太陽の焔を防ぐために全力を出しているアテナには、護堂が投じる魔剣を防ぐ余裕も、その魔力に耐える余裕もなく、彼女が侮り無視した人の力によって潰えることになるのでした。
ここで、エリカと護堂、何の打ち合わせもしてないんですよね。なのに、エリカと来たら待っていたかのように最適のタイミングで魔剣を護堂に投げ渡し、護堂もまたエリカが此処ぞという時に力を貸してくれる事を疑いもしていませんでした。この以心伝心極まった信頼関係。護堂自身、相棒と呼んで憚らないこの二人の関係、ホントに素敵なんですよねえ。

とは言え、白馬の力によって名勝「浜離宮恩賜庭園」は、見るも無残な有様に。さらには、東京汐留ビルか日本通運本社ビルか、名前は明言されてませんが浜離宮に隣接した高層ビルの屋上付近が消し飛び、首都高の高架線も溶け落ちて、とそりゃあもう甚大な被害が。まあ、護堂さんはまたやりすぎてしまった、くらいにしか思ってないのですがw 反省しているフリしても、あくまでフリなんだよなあ。そして、祐理には貴方は周辺への配慮が足りていないと言ったばかりなのに。と案の定叱られる護堂さんなのでした。

エピローグでは、ようやくエリカがイタリアから転校してきて、護堂の日常に堂々と踏み込んで蹂躙し始める、という展開を迎えるのですが……このあたりはアニメではすでに通過してしまったようですね。
なんか次回予告で無茶苦茶言ってるんだが、どのあたりのエピソードをやるつもりなんだろう。

ちなみに、原作者の丈月城さんの解説ツイートがこちらでまとめられているので、ご覧になるとより詳しく内容を理解できるかと。

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