うおぉぉん、室賀さぁーーん!!

個人的には第一話の武田勝頼様の悲哀に勝るとも劣らぬ万感の篭った演技だった、室賀役の西村さん。
碁盤を挟んで碁をうっている昌幸と室賀正武の感情を押し殺した、そう押し殺しているけれどその奥に凄まじいまでに様々な想いが渦巻いているのが伝わってくるような対峙と、その言葉の端々から漏れ出してくるモノに圧倒される時間だった。

今回、いつもいつも楽しそうだった昌幸パパが、一切笑ってないんですよねえ。全然楽しくなさそうだった。室賀を殺さなくてはならないことに関しては、全く迷っていないんだけれど、全然楽しそうじゃなかった。
大体、ズルいですよ。昌幸本人が居ないところで、家康に呼び出されてアイツ悪いやつだよね、ろくでなしだよね、君もそう思うでしょ、と昌幸の悪口言われた時に、相乗りして声高に昌幸の悪辣な性状をあげつらうどころか、昌幸は少県の国衆を良くまとめて、熟慮を重ねて導いてくれている、と庇い立てたシーン。あれだけ、昌幸の朝令暮改を罵っていた室賀さんが、昌幸のことをあんな風に言ってくれるなんて。庇い立ててくれるなんてさぁ。
ぶっちゃけ、これまで昌幸って罵倒されれ呪詛され、ろくなこと言われてこなかったけど、彼の悪辣さを身をもって知りながら、それでもこれだけ褒めてくれたのって室賀さんが初めてなんじゃないですかね。身内である家臣や息子たちですら、こんな風に昌幸はしっかりやってる、なんて言ってくれたことなかったし。
その上で、さらに暗殺の執行を迫られながら、無理だ、奴は幼なじみなんだ、出来ない! と苦悩する室賀さん。
思えばあそこで、信幸に遠回しに浜松行ってきて何してきてん、と問われて、黙れ小童っと退けられなかった時点で、もう胸の内から思うがままに声を発することが出来ない、やましさを、苦悩を抱えてしまってたんだなあ。

あれだけ丁々発止とやりあっていた二人の間に、これほどまでの濃密な関係が横たわっていたとはなあ。お互いに、特別な相手だったんだなあ。

暗殺が見ぬかれていた事、仕掛けるつもりが殺し場に引きこまれたことを悟りながらも、慌てることも暴れることもなく、殺気が飛び交う場で静謐に見つめ合う室賀と、昌幸。
家臣になれ、そうすることでしかお前の逃げる道はない、と告げる昌幸の声音に込められていたのは、威圧や脅迫、勝ち誇ったようなそれではなく、むしろ痛切で縋るような押し殺したもので。
露程にも、聞き届けられるはずがないとわかっているような諦観が込められていたかのようで。

わざわざ、碁で勝ってみせてから、懐に忍ばせた小柄を碁盤において立ち上がり、立ち去ろうとして改めて足首に仕込んだ針で背後から昌幸を襲おうとした室賀さん。
あの行動は、単に油断を誘うためのものだったのか。それとも、家康に唆されたからという理由を、懐の小柄を晒して置き去りにすることで抹消し、ただの室賀正武個人として昌幸とケリをつけようとしたのか。
もう、生き残る術がないと理解していた上での行動だけに、色々と思い巡らせてしまう。

一方で、今回女の意地を見せ続けたのがキリちゃんでありました。もうちょい、みっともない姿を晒してしまうのかと思ったら、一貫して梅ちゃんを祝福する姿勢を崩さずに、悔しさも悲しさも憤りも時々漏れでてしまっていたとはいえ胸の奥に押し込めて、慶事として振る舞い続けた。あの意地は、評価されて然るべきなのではないかと。
最後、信繁と梅ちゃんの祝言を暗殺に利用したことにキリが憤って怒ったのは、全部梅ちゃんのためなんですよね。人生の晴れの舞台を、血で穢され利用され使い捨てられたことに、純粋に憤っていた。それは、戦国の世の習いとして無為な怒りではあるのですけれど、人としては正しく、好ましい感情であり、他者の為に友達の為に怒れる姿はこの上ない真っ当さなのである。
繰り返しになるけれど、それは戦国の世の習いの中ではきっと何の価値もないものなのかもしれないのだけれど、信繁はそういう真っ当な心の動きが出来ない自分を、真っ先に父の策の凄まじさに賞賛が浮かび、それを見抜けなかった己に悔しさを感じ、晴れの舞台を、愛する女性が祝福される場を穢されたことに何の怒りも感じなかった自分を、嫌悪する、嫌いだと彼は兄に涙ながらに語っているのを見て、すとんと腑に落ちるものがあったんですよね。
ああ、キリちゃんもちゃんと信繁の人生のパートナーとして必要な人間なんだなあ、と。
梅ちゃんが信繁を肯定して支える人なら、キリちゃんは信繁を否定して彼自身が気づけない部分を指摘し、自身の嫌いな部分を嫌いだ、駄目だ、と言って叩いてくれる人なわけだ。
今回、はじめて真田源次郎信繁がキリちゃんを意識したのかもしれない。今までどうやったら、この娘のこと信繁が好きになるんだよ、と思ってたんだけれど、ちゃんと要素仕込んできたなあ。

それにしても、出浦のカッコいいことカッコいいこと。徳川から使わされた刺客二人を逆撃して討ち果たすシーンの刀捌き、ピンと芯が通っていてカッコ良かったなあ。
今までなんでこんな作りになってるんだ、と半笑いだった真田屋敷の回転板戸、あれちゃんと役に立ちましたねえ。
そして、今回もお兄ちゃんの弟愛が炸裂していた。弟の祝言を血で穢すことに忸怩たる思いを懐き、涙する弟の肩を抱き慰める。ほんとにじんわりと胸に来る兄弟愛だ。
誰よりも真っ先に信繁が梅との結婚を打ち明けるのが兄信幸、というのも源次郎もお兄ちゃん大好きなんだなあ、というのが伝わってくる。
当初は天衣無縫な弟の姿に、父親へのそれと同じく自分の理解の及ばない存在のように思えていたのか色々と思うところあったみたいだけれど、様々な経験を経て非情な現実の数々に打ちのめされて苦悩を抱えるようになってきた、大人になってきた弟をより身近に感じるようになったのか、信幸兄ちゃん、凄い親身になって弟の事見守るようになってきてるんだよなあ。

できの悪いホームドラマのようなこれまでの大河ドラマよりも、ずっと「家族」を感じさせる作りなんですよねえ、この真田丸って……。

何にせよ、実に見応えのある迫真の回でした。すごかねー。