おお、流石に茶々を利用して秀吉に翻意を迫る、という展開にはならなかったか。そうりゃそうだよなあ。茶々が幾らお気に入りに吹きこまれたとはいえ、他家のことに興味を持ってその興亡に口を挟むようなことはしないと思うし、あの秀吉が茶々から何かを言われたからと言って翻意するとは思えない。

もっとも、徳川の真田攻めに関しては石田治部の言うとおりになったのだけれど。詳しいことは言わないまでも、石田治部、ちゃんと本当のことを源次郎に告げていたのか。
この件について、三成は源次郎にチクリと刺しているのだけれど、面白いことになぜ自分の言った事を信じない、と攻めるのではなくて、もっと相手の言葉から物事の裏を読め、と忠言してくれてるんですよね。信州へ送った手紙をぜんぶ回収してることについても、あれそのまま秘密にして確保しておけば、後々いろんなことに利用できるだろうに、届いてないよ、ちゃんと届くようにもっと考えろ、と教えてくれてる上に、源次郎が書いた手紙に関しては返してくれてるわけだし……めっちゃ優しいよ?
あれ、昌幸パパや本多正信なんかなら一度手に入れた手紙は武器としてずっと隠し持ってるんだろうなあ。多分、謀将の卦がある人なら大概そうするんだろうか。
だとすると、やっぱり石田治部は腹芸とかあんまり出来ない人なんだろうなあ。
不器用な男、なんてのはまあ好意的すぎるんだろうけれど。明らかに性格は抉らせてしまってるし。
清正と福島正則との確執だって、あれ直前に石田治部が熱心に源次郎に対して、家康は秀吉の母の大政所を人質に送っても、大切にしてくれるだろうか、と心配して確認を繰り返し、自分は大政所さまの安全を確保しなければならないのだ、と熱く語ってるのを清正が聞けば、それだけで納得してくれただろうに。正則は心底石田治部を嫌ってる様子なので、捻くれた見方するかもしれないけれど、清正があそこで悔し涙を流したのは石田治部のこと、嫌いじゃなかったからなんだろうなあ、と思っちゃうじゃないですか。わざわざ屋敷に押しかけて酒一緒に飲んで、太閤殿下のことについて愚痴をこぼすなんて、嫌いな相手のところで出来ることじゃないんだし。
まあ、清正は心があるからこそ、狂信的なくらいの忠臣になってしまっているのでしょうけれど。井戸の件でビビってしまったけれど、清正やっぱり熱くて嫌いになれないなあ。
その熱さをさあ、嗤っちゃあいけないよ石田治部。向いてる方向性も熱量も同じはずなのに、それを剥き出しにする感情的な連中を馬鹿にしてしまう石田三成。いや、本当に馬鹿にしてるのかはわからないんですけどね。口や態度では突き放した小馬鹿にしたような様子を見せるけれど、本心では違うと思いたいなあ。
あと、石田治部に突っかかってくるくせに、秀吉当人には突撃していかない虎と市松……。
もう一つ、大谷刑部さん、そんなフォローじゃ全然心響かないよ!? 


姉ちゃん、登場。
本能寺の変の混乱の折に琵琶湖に身を投げて行方不明になっていた姉の松さまが、まさかの阿国舞踏団の一員として登場。なかなか再登場しないんでどうするんだろうと思ったら、このタイミングかー。案の定記憶無くしたままみたいだけれど、記憶無くしても元気だ!
これは、夫の小山田茂誠の登場が待たれるか。

キリちゃん、北政所さまの侍女になったことで良い情報収集役になってる模様。役に立ってるよ!! それどころか、茶々さまの追求を避けるために、源次郎苦慮した結果、きりと良い仲です、と茶々に言ってしまう。
それ、源次郎自身は安全かを確保できるかもしれないけれど、きりが危ない!! まあ、きりが北政所の保護下にある、というのはここで生きてくるのかもしれないが。あれ、違うところに居たら、来襲井戸の底からお送りします、みたいなことになってしまってた可能性大なんじゃね!?

秀吉、源次郎のこと確かに気に入ってるんだろうけれど、彼の意見を聞くつもりなんかは全然ないんだな。徳川との戦の件で取りすがった時も、あとで詫びを入れた時も「うるさい」の一言で取り付く島もない。あれ、源次郎のこと気を使ってるとかじゃなく、本心でうるさい、と思って言ってるのが伝わるだけに怖い。
いつ、お手打ちにされるのか、とビクビクしてしまう。
源次郎役の堺さんも、今回は特にずっと声がこわばってるんですよね。緊張の糸をビンビンに張り巡らせているのがよくわかる。ほんのちょっとのことで何をされるかわからない、という緊張感が源次郎をガチガチに縛ってるんですよね。返事の声も甲高くなっちゃってるし。
上田や上杉のところに居た頃の、あのゆるゆると奔放で柔らかい源次郎の姿勢が完全に失われてる。
面白い。

片桐且元さん、もうこんな頃から徳川と豊臣の板挟み、という運命を背負っていたのか。単なるメッセンジャーならともかく、片方からの言いがかりみたいな一方的な通告を、彼自身の責任をもって持ち運びせざるを得ない運命。胃が持たない!!


一方の信濃。今までは昌幸の元から状況を見ていたけれど、今源次郎が居る大坂側から天下の動きを見ていると、昌幸パパがどれだけトンチンカンな事を言っているのかがよくわかる。完全に時流から乗り遅れてるよ!! 何気に徳川側からの正確な情報が、徳川家臣になった信尹叔父から流れてきてるのはさすがだなあ、と思うところなのだけれど、事後とは言え徳川と秀吉の動きの推移を掴んでいるにも関わらず、それから導き出される答えが全然的外れなんですよね。
もう豊臣も徳川も真田なんて眼中になくなってる、せいぜい釣り針の先につけた餌程度のものなのに。やっきになってた徳川も、上洛の件で一気に目は中央に向き、おそらくは据える腰もあっちにいってしまいましたからね。
信幸兄貴の危惧は見事にあたっているわけだ。実のところ、折々で信幸兄が言い募ってた判断というのは大概あれ、当たってたんですよね。所詮、天下なんて視点を持たない田舎者である昌幸パパよりも、いや武田信玄という大きすぎる虚像を追いかけ続けたパパよりも、信玄亡きあとの動乱の世をダイレクトに見続けた信幸の方が、天下の動きというのもを正確に捉えていたのか。
この昌幸の的外れな考え方、というのは関東以東の大名・国衆の判断ミスにも通じてるんですよね。北条氏政のそれもそうだし、東北大名の動きの遅さも、まさに秀吉という存在、中央に突如出現した謎の成り上がりに対する軽視が招いたわけだ。その事については書物の字面としては理解していたけれど、こうして昌幸パパの言動を実際に見ると、なるほどこういう見方をしてしまっていたんだなあ、とすごく腑に落ちたんですよねえ。なるほどなあ。


家康公、ここは見せ場多かったですよねえ。秀吉に礼を尽くして真田攻めの許しを得たのに、それを直前で覆されて、怒り心頭にも関わらず、その怒髪天で判断を間違わない。怒るのは怒ってるんだけれど、ブチ切れる直前でグッと我慢できる。正信などの側近の制止でグッと冷静な判断を取り戻せる。
そのまま怒りを通してしまう、そして家臣はその意に従うだけ、の豊臣サイドとは如実に違う。天下を取った男と、その下にくだらざるを得なかった男との立場の差かもしれないけれど、少なくとも家康の方はこのスタイルで一貫している。えらい。
それでいて、秀吉が誠意を見せて、実母を人質に送ってきて、先に正室として送り込まれていた秀吉の妹の旭との再会を見て、大政所が本物かどうかの確認のはずが、思わず貰い泣きしてしまってるところで、この人は(笑 とすごい人情家としての一面を見せられてしまって、これはッ負ける。
これは、秀吉と家康の深夜の会談の時も同様で……って、あの秀吉の「ああもうめんどうくさい!」からはじまった展開には爆笑してしまいましたが。そりゃ、家康もうわぁ!と悲鳴あげてひっくり返るわ。
前振りもなく、いきなり明日の対面ではこうしろ、と言い始める秀吉に困惑しながらも、段々興が乗っておそらく昔の信長の家臣だった頃の、相手の懐に飛び込んで頭を下げることも厭わない人誑しの秀吉の懇願に、思わず感極まってしまう家康、これも情の人、という一面が感じられてしまうんですよねえ。
あれ、秀吉は本気は本気なんだけれど、「本気の演技」というものなんでしょうなあ。自分でも信じこんでるくらい感情を込められるけれど、多分すぐにカチリと切り替えられる。
一方で、家康はあれ、天下人の懇願、二人で天下を治めるのじゃ、という秀吉が頼ってきてくれてる、自分を頼みにしてくれてる、という想いに本気で打たれちゃってるんですよねえ。
それがまた魅力的なんだよなあ。芝居は苦手、芝居が増えておりまするー、と思わず本音で弱気零してしまうところとか。
そして、秀吉がどこまで考えていたかはわからないけれど、これが家康が豊臣政権のNo.2となる分水嶺になるわけだ。

……二人の実際の大坂城での対面、マジで棒演技なのには苦笑してしまった。これが猿芝居かw

石田さん、源次郎のこと、皆が次々と惚れ込んでいく不思議な男だ、とか他人事みたいに言ってるけれど、傍から見るとあんたも十分、源次郎に入れ込んでるよ!? 単に太閤殿下のお気に入りだから、という対応以上に、源次郎に対してあれこれと口うるさく面倒見てるんですよねえ。
自分では絶対に気づかない、あるいは治そうとしない面倒臭さだなあ、治部省も。