はたらく魔王さま! (14) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 14】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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異世界エンテ・イスラから、魔王を追って時空を越えた勇者エミリア。無事東京へたどりついたものの、魔王を見つけられず、たった一人街を彷徨っていた。そんな勇者が迷い込んだのは、永福町に建ついわくつきの高級マンション。偶然開いていた窓から部屋に忍び込んだ勇者が、地球人と出会うことになる『勇者の部屋探し』。
さらには、恵美と千穂がお寿司を食べながら友情を深めた『回転寿司』。マグロナルド幡ヶ谷駅前店店長・木崎が幼なじみと激闘を繰り広げた『マグロ店長会議』。いつも通り仕事に出掛ける真奥だが、何かお尻に違和感が……な『魔王の破けたズボン』ほか、『芦屋の圧力鍋』『魔王新しい携帯を買う』も収録。
電撃文庫MAGAZINE本誌と、電子限定号掲載の5編に加え、書き下ろし中編を追加。エピソード大盛りでお贈りする庶民派ファンタジー第14弾!

【勇者と女子高生、友達になる。】一巻で真奥たちの正体を知ってしまった千穂ちゃん、やっぱり相応に動揺し、悩んでたのね。そりゃそうだ。どれほど出来た高校生だって、こんな突拍子もない事態をなんでもないことのように飲み込めないもの。でも、そのぐちゃぐちゃになった思いを整頓して飲み込む助けになったのが、魔王と対立する勇者ご一行だった、というのがまたいいなあ。
まあ実質、異世界からきたエメとアルバートが初めて地球で食べるご飯(回転寿司編)でもあるのですが。
ともあれ、この問題に対して勇者たちに率直に相談してしまう千穂ちゃんの肝の座り方には、相変わらず感嘆を覚えるほか無い。それに対して、自分たちのことは気にするな、と行ってのけれる恵美たちも飛び切りなんだよなあ。両サイドともに、尋常じゃないくらい公平であろうとしてるんですよね。どちらかというと、感情側の問題にも関わらず、だからこそ感情的にならずに理性的になろうとしている。このあたりが、知恵ちゃんにしても恵美にしても尊敬に値する部分なんだよなあ。


【魔王、節約生活を振り返る】
商店街の福引で圧力釜があたってテンションあがりまくる魔王軍大元帥アルシエルww
喜びすぎだろう、悪魔大元帥なのに。とドン引きする恵美やベルが何ともはや。でもそれ以上に、芦屋の家事スキルが圧巻過ぎて、もう笑えてくる。
節約料理がそもそも準備段階や調理方法が全然節約じゃないよ! という話には目がウロコ。そうだよなー、単に食材が残り物だったり処分品だったりしても、油を大量に使ったり調理器具がそこそこ揃えないとダメでお金がかかる、ってなら本末転倒だもんなあ。


【魔王、勇者の金で新しい携帯電話を手にする】
ボロボロになった携帯電話使い続けてて、危ないからとお店の人にガチで怒られる真奥さんがもう、ダメだよ。そこまで壊れたものを修理してもらおう、という時点でちょっとせせこましすぎる。というより、無理と言われてるのに未練がましくゴネるのは、恵美に買い換えてもらうことに引け目を感じてるのか何なのか。自分から弁償しろと言っておいてねえ……このあたりから、真奥の攻めっけが空回りしはじめるのよねえ。思った通りに恵美側が打ち返して来なくなった、と。
アニエスがくっついてるのはおまけとして、アラス・ラムスを連れた恵美と真奥ってもう完全に若夫婦にしか見えんなあ。何も考えてないようで、意外と気ぃ使いのアニエスが恵美とちょっとお近づきになる話でもある。
そういえば、本編ではちょうどゴタゴタしていて、恵美のお父さんにアニエスが娘として一緒に暮らしていた件について、娘同士の初対面から距離感の構築に関してはちゃんとやれてませんでしたもんね。それを短編とはいえ、きっちりこうして話書いてたのか。


【勇者、敵幹部の力に驚嘆する】
やべえわ、すげえわ芦屋さん。昭和三十年か四十年代くらいまで遡らないと、ここまでの裁縫スキル持ってるオカンってなかなか居ないんじゃないだろうか。ちーちゃんも相当にレベル高いはずなのに、彼女ですら太刀打ち出来ないハイレベルすぎる家事マスターだ。
ズボンの破れ方については、すげえ実感篭ってるなあ。こんな破れ方したかなあ、というところだけれど、誰も指摘してくれないあたりには苦笑してしまった。女性陣、それはみんな逆にデリカシーありすぎなんじゃなかろうか。


【魔王、上司の過去を知る】
おお、この水島さんてアニメで真奥が応援いった店の店長か。友人関係という設定を此処で活かして来たのね。しかも、幼馴染。
もう一人、腐れ縁、好敵手、天敵と言っていいのか。ケンタのエリアマネージャーとして現れたもう一人の幼なじみと、思いっきり火花飛ばし合って衝突する木崎店長。
以前、自分の店を持つ、という将来の夢を語ってくれたけれど、そんな彼女の過去から今に至る背景やそのスタイルの元となった部分がわかる話である。ってか、これぞ本物の意識高い系だよなあ。言動にきっちり中身と結果が詰まってるタイプの。もう学生時代から、がっつりと目的意識が構築されてるんですよね。
面白いのは、その向上と練磨が姫子との激しい衝突によって磨かれたフシがある、というところか。誰よりもお互いを認めながら、しかし絶対に認められない相容れぬ関係。難儀やなあ、と思いつつも、その関係を巧みに維持し続け傍から面白がってる水島さんが一番ヤバイのはよくわかった。
ラストの口説き文句は、もう真奥がちゃんと目的持ってなかったら絶対陥落するそれだよなあ。ぶっちゃけ、木崎さんにくっついていく回り道もありなんじゃ、と思うほどに。


【はたらく前の勇者さま! ―a few days ago―】
なんか、事故物件に住んでいた幽霊に日本について教えてもらった、みたいな話を以前していたけれど、違うやん、幽霊あんたのほうやん!!
幽霊なんて非常識な、とは異世界だのこの世界でも神様みたいなのが出てる以上、否定するものじゃなくて、普通に幽霊居たんだー、と思い込んでたんだけれど、普通に違ったやないですかー。
ってか、遊佐恵美ってちゃんと由来あったんですね。勇者エミリアのもじり、だけではなかったのか。こればっかりは後付だろうけれど、納得はできる。
しかし、真奥が芦屋と二人だったのに比べて、やはりエミリアの方は一人で異世界に放り出されて相当に苦労したんだなあ、というのが伝わってくる。相談する相手も弱音を吐ける相手もいない状態で、手探りでかなりの綱渡りをしながら最初の時期をくぐり抜けていたわけで、これ冒頭に関しては真奥たちよりもやばかったんじゃないだろうか。速い段階で大家さんに拾ってもらったわけですしね、あっちは。一方でエミリアの方は、ボロだしまくって下手打ちばかりでしたもんね。
それでも、一山越えたらあっさりそこそこの暮らしをゲットしてるあたりに、エミリアと真奥たちとの違いを実感してしまうわけで……勇者すごい。


シリーズ感想