終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?#05 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 5】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

Amazon
Kindle B☆W
ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉(シヤントル)の結界は崩壊した。正規勇者(リーガル・ブレイブ)の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神(ほしがみ)は、その余波で空魚紅湖伯(カーマインレイク)とはぐれ、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす。その日、〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が浮遊大陸に降り注ぐことになるまでは――。〈獣〉に対するのは、アイセアとラーントルク。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、終末最期の煌めき。次代に受け継ぐ第一部、幕。
……ふはぁーーーー。
うん、うん。
はぁ……。
しばらく、こう、余韻に浸っていたいと思う。感想? うん……うん、そうだねえ。そうだねえ。
………………。
色々と思うところがあり、考えに耽るところもある。いずれにしても、最後までただ見ているしかなかった、という感慨がある。
彼と彼女たちは最後まで、誰も叫ばず訴えず、自分の胸に思いを秘めて自分だけのものとして外にぶちまけず、持って行ってしまった。だからだろうか、悲しくはないけれど寂しいのだ。そして、少し憧れる。多くの後悔に足を取られず、絶望に知らん顔してやり遂げていった彼と彼女たちのことが。
幾つもの後悔を抱えながら、しかし嘆かず振り返らず。
運命に逆らわずに受け入れて、しかし徹底して抗い。
誰かのためではなく自らの願いの為に生きて、生き抜いて、費やし切って、そうして残された想いを誰かが拾ってまた己が願いとして抱きかかえていく。
その生き様は、多くを突き放していて、この上もなく健気だ。健気と、言わずしてなんというのか。
なんて、いうんだろうね、本当に。
本当にさ、この娘たちはみんな自分から選んじゃってるんですよね。兵器であること、戦って死ぬことを運命づけられながら、自ら望んで戦うことを選んでいく。それしかないからじゃなくて、それぞれ戦う理由を見つけてく。その果てに死ぬのは結果でしかなく、みんな望んだ願いを叶えるために戦って、そうして満足そうに逝ってしまうのだ。誰にも何も押し付けず、託さずに、重荷を残さず、思うがままに散っていく。
リーリァもクトリも、ネフレンもアイセアも。誰も彼もが、責任でも使命でもなく、自分の命を自分の為に使っていった。だから、これはきっと悲劇じゃないんだろう。笑って流す涙は、きっと悲しいだけの涙じゃないのだ。

頑張ったね、ありがとう。

次々と紐解かれていった真実、星神の正体であり、人類滅亡の真相であり、黄金妖精たちが生まれた理由。謎、或いは不可解な錯誤に思えたシリーズ当初からの過去の歴史と世界の成り立ちが、びっくりするくらい綺麗に一つに繋がっていって、ぜんぶ明らかになった時には思わずため息が漏れるほどだったけれど、この終末が誰が悪いでもなく、みんなが抗って抗ってそれでもどうにもならなかった結果だというのなら、やはりこの世界は悲劇なのだろう。でも、誰も悲劇に負けなかった。この終末の中で、誰も絶望しなかった。自分自身の未来のすべてを投げ出してしまったかもしれないけれど、きっと幸福だったのだ、彼女たちは。
ヴィレムは、最期まで穏やかに笑っていた。なら、クトリの願いは叶ったのだろう。
そうして、彼は最後に戻れたのだろうか。帰りたかった場所に、帰れたのだろうか。それなら、リーリァが命を賭けた理由もまた、ちゃんと叶ったのかもしれない。
一番救いたい人を救えないことが運命づけられた正規勇者の、覆せない運命がもし覆されたのなら、それはきっと、幸せな結末なのだ。
ヴィレム・クメシュという主人公の物語は、彼を想う少女たちの願いが叶った、ハッピーエンドなのだろう。
そう、思う。

この終末世界の物語は、また別のシリーズとして続くことになる。それが、いったい誰の物語なのか。何を語る話なのか。わからないけれど、この不可思議にして穏やかな、静やかな物語のその先をもう少しだけ見守ることが出来るのなら、それもまた幸せなことなのでしょう。
そんな幸福に、しばし余韻とともに浸る……。

シリーズ感想