マグダラで眠れ (7) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 7】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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錬金術師たちの次なる目的地は、太陽の召喚により一夜で滅んだというアッバスの町。クースラは、長く旅を続けていく中で巡り合った旅の同伴者たちに、居心地の良さを感じていた。その気持ちを振り払うかのように、天使が残した『太陽の欠片』の調査を始めるクースラの前に、書籍商を名乗る男フィルが現れる。フィルもまた異端審問官アブレアが残した伝説の足跡を追っており、アッバスの町に古くから伝わる『白い悪魔の生贄の儀式』こそがその手がかりではないかと語る。儀式が行われる祭壇を調査するうちに、伝説の真相に近づいていくクースラたち。だがその時、思いもよらない事態が彼らを待ち受けて―?
ああ、この書籍商のフィルってスピンオフ作品の【少女は書架の海で眠る】の主人公だったフィル少年なのか。そりゃ、クースラとも意気投合するよなあ。おんなじタイプの業の持ち主だし。クースラとしても一番共感を持ててしまうタイプの夢追い人なんじゃなかろうか。
しかし、随分とふくよかというか貫禄がついてしまって。すっかり青臭さは消えて強かな商人らしさを纏うようになったけれど、むしろ自信と実力がついた分、思う存分夢を追い掛け回しているようなキラキラしてる感が出ていて、充実してるんだなあ、と。
しかし、フィルがこれだけ大人になっているとなると、あの作品でヒロインだった少女はどうしてるんだろう、という方にやっぱり意識は向けてしまうわけで。その話はあるのかなあ。

さて、クースラたちの旅だけれど本当にクースラは丸くなった。彼だけじゃなくウェランドまでがすごく安定してきてるんですよね。フェネシスのことだけではなく、ウェランドとイリーネの四人をひっくるめてこうして一緒に旅をし、謎を探求する時間を掛け替えのないものと感じ始めたクースラ。餓えた獣のようにガツガツと真理を探求し続けていた危険な男の陰はそこにはなく……しかし、当人たちのメンタルが安定するのとは裏腹に、彼らをひごしてきた神殿騎士団の方がどんどん立場を崩壊させてってるんですよね。竜のカラクリを復活させたことで、現地の北方派遣軍の方は持ち直したものの、現場の勝利だけではどうにもならない大きな事態が本拠の方で起こり、その激動の余波がクースラたちの元まで押し寄せてくることになるわけだ。
クースラが見つけたマグダラは、まだ容易に失われかねない脆いもので、見つけたからこそクースラは必死でそれを守らなくてはいけなくなったのだけれど、それを楽しく嬉しいことと思えるならば、幸せなんだろうなあ。
いや本当に、ちょっと幸せ満喫しすぎてませんかね、クースラさんw
もうフェネシスに対してデレッデレじゃないですか。友達と別れることになったり、色々と心細い環境になることで落ち込むだろうフェネシスに、俺を頼れよっ、なんて言って慰めようと、イリーネにアドバイスまで貰ってキリッと待ち構えていたのに、成長したフェネシスは全然頼ってきてくれなくて、めっさ拗ねてるクースラさんがちょっと可愛すぎやしませんかねw 構ってちゃんか!
でも、変な見栄をはらずに自分をごまかさずに、素直にイリーネに頭さげて助言してもらったり、自分からフェネシスにイチャつきに行ったり、とこの男わりとストレートなんだよなあ。賢さを抉らせて迂遠に自分たちの気持ちを偽りまくっていたホロとロレンスのカップルと比べると、ほんとこのクースラとフェネシスは不器用だけれど分かりやすくイチャイチャしてくれるので……いやまあどっちも同レベルでこっ恥ずかしいんですがw
気持ちに余裕が出来ると、人間関係まで余裕が出てくるのかウェランドとさえ、なんかイチャイチャしはじめるし。なに、この思わず目があったら微笑み合ってしまうような熱々さはw おまえら、もっと刺々しい信頼できるのは錬金術士としての在り方だけで、人間的には殴り合い殺し合い上等、な関係だったのにいつの間に、こんな普通の親友みたいな関係になってたのかしら。
まあウェランドからして、ヤクキメてるんじゃなかろうかというくらい危なっかしい何をしでかすかわからない剥き出しの刃物でお手玉してるようなヤバイ感じがしてたのが、いつの頃からか気心がしれて背中も預けられる、うまいこと気も使ってくれて、フェネシスやイリーネと拗れかけても仲裁してくれたり、と頼りになる人になってたもんなあ。
まったく、恥ずかしいくらいに息の合う関係になっちまって。
人間関係も充実してしまったクースラですけれど、それと錬金術士の業はまた別で、新しい発見を前に実験に嬉々として没頭する姿は以前と何の変わりもなく、本質的にクースラもウェランドも純正の研究者なんだよなあ、と改めて思い知ったり。イリーネも、これまた生粋の鍛冶師だし、自分たちのやりたいことをやりまくれるって、そりゃ充実してるし楽しいし、その上で仕事仲間は同志であり友人であり愛する人であり関係は円満極まる、となったらもう……羨ましいくらいに満たされてるよなあ、これ。
でもだからこそ、今彼を満たしているもののどれかが永遠に失われてしまったら、今度こそ悲しいだけでは済まないんだろう。大事なものを見つけたからこそ、それを守るための必死さを得たのだ。

つまり、クースラがフェネシスを好きすぎてどうしようもないw

シリーズ感想