横浜ダンジョン (3) 世界を変える最初の五人 (角川スニーカー文庫)

【横浜ダンジョン 3.世界を変える最初の五人】 瀬尾つかさ/やむ茶 角川スニーカー文庫

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世界各地にダンジョンが出現した世界―。無詠唱で魔法を使える特殊な力を持つ少年・黒鉄響の前世の記憶、それは異世界で四人の仲間と共に『異界神アグナガラグ』を倒した、白き賢者アルランとしての記憶である。再び覚醒しつつあるアグナガラグの調査を進める響だったが、各地で魔物の大暴走が立て続けに発生し、春菜たちを連れて討伐へと向かうことになり―。響、春菜、彩、シンシア、クレアの五人が世界の危機に立ち向かう!!
異質な外界からの侵略者によって、世界が滅亡の危機、というシチュが多い瀬尾作品の中でも、特に本作は迎撃の態勢も整っておらず、まず敵の存在、危機感の認識からして持っていない事から非常に危うい状況にある、とは前回の感想でも触れたところでありますけれど、その危機感を『異界神アグナガラグ』と相対した経験があるからこそ、異世界にて一致団結して総力戦を戦った経験を持つ響だからこそ、誰よりも危機感を持っているがゆえに、手段と問わずに敵の脅威を知らしめ、共有し、その上で迎撃の態勢を整えるための下地を作るために奔走する、というのが今回の話の肝でありました。
その為に、そりゃもう世界規模で暗躍しまくる主人公。完全に、フィクサーです。場合によっては、黒幕と言われてもおかしくないくらいに、世論の操作から被害の選択、敵サイドの謀略を逆手に取って誘導、など
文字通り、世界を裏から操り動かし導いていた彼はある意味正面切って大暴れするよりも、やりたい放題やってたんじゃないだろうか。
勿論、何もかも都合よく物事が動くわけでもない。異界神アグナガラグに対抗するための戦力を育てるためには、なりふり構わぬ国家による非人道的な活動にも肯定的だし、メリットが多ければ人的被害も許容する、どころか自分から率先して「コントロール」するような所業にも手を出している。
ここまで冷徹な合理性に徹底している主人公、というのもなかなか珍しい。
一方でプライベートの方では思いっきり甘ちゃんで、周りの女性陣には振り回されてばかりで全く彼女らを制御できないどころか、完全に乗っかられてしまっている、尻に敷かれてしまっている、という部分が、彼をまったく冷たい人間に感じさせないところなのだろう。
彼の割り切りというのは、実体験に基づくものであり、より過酷で人権意識の薄い世界で育った故の、個人の特質としての価値観ではなく、そこに住んでいた人が共感できる価値観、という点も大きいのだろう。
小悪魔な女性陣にやり込められつつ、逆にいじり倒したり、という日常のキャッキャウフフなやり取りは楽しかった。瀬尾さんのハーレムの距離感は、毎度ながらベタベタしつつサッパリしているので、凄い好みなんですよねえ。
とはいえ、打ち切り展開ということでだいぶ急いでまとめた感もあり、これから本番、というところでの終了はやっぱり勿体無かったかなあ。ぶっちゃけ、下地を整えた段階で終わってしまったわけですし。不穏な、響が敵側に回ってしまう、という未来予知も、原因不明のママでしたしね。それが起こりうる可能性を、響が潰して動きまわっていましたけれど、まさかのイレギュラーがラストに明らかになったわけで。
正体を明らかにした彼女との問題は、まさにこれからが面白いところだっただけに、尚更に。
帰ってきた夏美さんとどう絡むのか、などまだまだラブコメ的にも楽しめる要素はたくさんあったでしょうからね。次は、もっと長く続いてほしいけれど。

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