七日の喰い神 3 (ガガガ文庫)

【七日の喰い神 3】 カミツキレイニー/nauribon ガガガ文庫

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人喰う神を乗せて、列車は走り続ける。
超高級蒸気機関車『カムパネルラ』に乗り込んだ七日とラティメリア。煌びやかな車内装飾に、豪華な食堂車、そして上流階級の乗客たち。そんな浮き世離れした世界とは異にする車両があった。祈祷士たちが強固に警備にあたる物々しい雰囲気……。この高級列車は、祈祷士協会によって捕らえられた“六花のマガツカミ”の一人である“掴み神”を秘密裏に移送するためにカモフラージュされたものだった。列車に潜入した七日の目的はただひとつ“掴み神”ヘリアンサスを斬ること。タイムリミットは目的地到着予定の深夜まで。そんななか、七日はかつて戦場でともに戦った元六花隊の一人と再会する。“妖刀使い”獅童巳月――彼は“掴み神”ヘリアンサスの移送を監督する看守長となっていた。一方、初めての列車旅行に浮かれるラティメリアもまた、ある人物と出会っていた――
「やあ、“喰い神”ラティメリア。君は本当に六花に似ているね」
マガツカミを殺す者と護る者、かつての戦友同士が繰り広げる熾烈な攻防戦! それぞれの思惑を乗せて列車は走り続ける。
デブメリア! って、喰い神なのに太るの!? 喰い神なのにダイエットするの!? 
第一話「肥やし神」での、美味しいラーメンに太らされてぽっちゃり体型になってしまったラティメリアの、このマスコット感たるや(笑
マガツカミとは人の強い想いから生まれいでるもの。その想いとは悪心や邪な念からだけではなく、純粋でひたむきな想いからも生まれるもので、その根源に善悪など関係ない。どれほど真摯な想いから生まれたもので、一度生まれてしまえば人を喰う。鬼怒川刑事がやりきれぬ思いで歯噛みするように、マガツカミという存在はそれほどに理不尽な、行き会うことが不運という災厄なのである。
でもだからこそ、そうなるとラティメリアのマガツカミとしての不可解な在り方が浮かび上がってくるんですよね。
喰い神なのに、人を食わないマガツカミ。

前回、友達になった雪生をついに食べられなかった、食欲という本能を拒絶したラティメリア。
六花の生み出したマガツカミの中でも、容姿も性格も最も六花に似ているというラティメリア。
暴走列車編、というアクションの王道ともいうべきシチュエーションの中で、かつて同じ六花隊だった面々である獅童巳月と紙燭龍之介の二人と再会する七日。過去の六花を知るかつての仲間、特に紙燭龍之介の方はあの過去の回想シーンからすると、六花と恋人関係にあったみたいなんですよね。元来のサイコパス的な気質を拗らせ、六花に似たラティメリアに執着を見せる龍之介。
でも、紙燭龍之介と七日が見る六花に瓜二つなラティメリアは、まったく違う姿なんですよね。六花のマガツカミ・喰い神としての在り方を肯定しようとする龍之介に対して、喰い神としての自分に逆らい続けるラティメリアに、かつてマガツカミの本能に抗い続けた六花の姿を映し見る七日。同じ六花を愛し、彼女の生き様を肯定しながら、決定的に道を違えている二人。
彼らの二人の決定的な違いは、喪われた人の形にこだわり続けるか、それとも違う姿違う存在になっても今生きているラティメリアを、そのままに見つめているかの違いなのか。
七日は、最近どこかラティメリアを六花の身代わりではなく、ラティメリア個人として見つつあるようなきがするんですよね。当初より随分と優しくなったラティメリアへの態度。ラティメリアの喰い神としての在り方を必死に拒絶する姿に向ける慈しみの眼差し。それはラティメリアに六花の映し身を透かし見ている一方で、彼女そのものをちゃんと直視できるようになった感じがあるんですよね。
まだ、その終着点として七日がどこを見ているのかはわからないのですが。

しかし、六花隊の祈祷師たちって伝説になるだけあって、ガチでバケモノ揃い。マガツカミとどっちがバケモノなんだ、と言わんばかりのキワモノばかりじゃないですか。精神異常者である紙燭龍之介はともかくとして、獅童巳月の方も完全に人間やめてますし。なるほど、雪生が六花隊の中で自分が弱いんじゃなくて、他が強すぎるんだ、と主張するのもわかるというもの。雪生自身、並の祈祷師とは比べ物にならないくらい超絶レベルの術師ですもんねえ。ヘリアンサス相手でも、他の祈祷師なら相対しただけで絶望感しかないのに、彼女が立つとなんとかしてくれるという安心感がありましたし。ってか、2巻から連続で彼女、出番あるとは思ってなかった。ラティメリアに七日のことを託した風に見せて、呼ばれたらひょいひょい着飾って来てしまうあたり、ちょろいなあ。そして、折角の一張羅をボロボロにされてしまうという不憫さ(笑
でも、馴れ合わずに状況によっては敵対しながらも、何だかんだと息があってるというか仲良さそうなんですよねえ、六花隊。相容れぬとしても、立場上剣を向け合わなければならないとしても、裏切られ騙されたとしても、相手を否定しなければならないとしても、どこか仲間の気安さだけは消えないこの人達の関係、なんだか好きですわー。

シリーズ感想