ゴブリンスレイヤー2 (GA文庫)

【ゴブリンスレイヤー 2】 蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫

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「どうか、わたくしどもの街を救っては頂けないでしょうか」
「救えるかどうかは、わからん。だが、ゴブリンどもは殺そう」

ある日、ゴブリンスレイヤー指名の依頼書が冒険者ギルドに届いた。差出人は水の街――辺境一栄える至高神の都の大司教(アークビショップ)だった。大司教はかつて魔神王を打ち倒した金等級の一人として、剣の乙女と呼ばれる英雄でもあった。彼女いわく、水の街の中に何故かゴブリンが出るという。

ゴブリンスレイヤーは妖精弓手、女神官、蜥蜴僧侶、鉱人道士とともに水の街の地下迷宮に挑む!
「この小鬼禍は、人為的なものだ」
蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第2弾!
勇者居るのか、この世界! しかし、都市を脅かす陰謀も、それに立ち向かう光の使徒も関係なく、ゴブリンスレイヤーはゴブリンを殺す! ひたすら殺す! 
でもですね、辺境で軍を派遣するにもお金の掛かる上にキリがない場所に兵を出すのは渋るにしても、大都市の地下にゴブリンが繁殖しているのを、さすがに放ったらかしにする為政者というのは如何なものか。現状で対処できているじゃないか、というけれどそういう問題じゃないでしょうに。安全なはずの、しかも観光も重要な産業の一つの大都市の中に魔物が発生しているというのに。
というわけで、ゴブリンを殺す話にも関わらず、まさかのシティ・アドベンチャーである。都市の地下水路を舞台に、いつの間にか地下に侵入し増殖しはじめていたゴブリンを退治してくれ、というゴブリンスレイヤーへの指名依頼。何気にハリウッド映画によくありそうなネタである。
ゴブリンスレイヤーさん、決して近視眼的でも頭がまわらないわけでもなく、ほぼ事件の構図を洞察できていたにも関わらず、まったくそっちは無視してひたすら目の前のゴブリンを殺すだけなんですね! 根本の原因を排しようとは思わないんだ。
でも、なるほど目の前の脅威はとりあえず後回しにして、という姿勢こそゴブリンという弱い魔物に対する無関心故に、その対処に力を傾けないこの社会の構図そのもので、そんな中でひたすら目の前のゴブリンを殺すことで喫緊の脅威に立ち向かってきたゴブリンスレイヤさんにとっては、ゴブリン発生の原因を排除するのではなくまず目の前のゴブリンを皆殺しにしていくことこそ、いつもと同じ行動になるわけですなあ。
根本の原因をなんとかするのは、他にやるやつがいるだろう、と。

世界の危機よりも、大都市の闇を払うよりも、まず身近な恐怖を打倒する。その姿は、そんな身近な恐怖に怯える人にとっては、魔王を倒す勇者よりも邪悪な狂信者を駆逐する英雄よりも、救世主に見えるのかもしれないなあ。大英雄でありながら、その心身につけられた傷によって複雑な内面を抱え込む剣の乙女にとっても、なるほど彼女の見ている世界ではこうなるわけだ。

そんなブレないゴブリンスレイヤーさんですが、ブレないにしても変わりつつはあるんですよね、明確に。
前巻ではゴブリンを殺す人間の姿をした復讐機械じみたところが強く出ていた彼ですけれど、ゴブリンを殺すという一念の強さこそ変わらないものの、それ以外のことにちゃんと興味を抱き、反応し、周りの親しい人たちがどう思うかを考え、彼らが良きように計らう思慮が働き、慮り気持ちが生じている。
不器用では在るものの、明らかに人間以外の何者でもなくなってるんですよね。ちゃんと、仲間が出来て、ゴブリンを殺すという目的こそブレないものの、一緒に冒険をしている。仲間の命を大事に思い、彼らを守りたいと必死になり、ともあれゴブリンを殺す。
一人じゃなくパーティーになったからこそ、より出来ることは増え、しかし出来なくなったことも生まれ、何より仲間の命に対して責任が生じてくる。これは大きな違いであり、ピンチに陥った時の危機感や絶望感、振り絞るべき何かの違いが全然また違ってくるのだ。
歴戦以外の何者でもなく、またゴブリンに対するエキスパートであるゴブリンスレイヤーさんが加わったこのパーティーをして、一つ歯車が狂うとゴブリンの集団殺法に押し込まれ全滅しかねないのを思い知らされた、あの罠にかかっての絶体絶命のピンチのシーンにはハラハラさせられましたが、妖精弓手をはじめとして死ぬ思いをして脱出したにも関わらず、そのあと再びゴブリンを殺すために地下に潜ろうという時に当たり前のように一緒についてきてくれたのにはちょっとした感動があった。あれこそ、彼らとゴブリンスレイヤーが一時的なパーティを組んだだけの関係じゃないのを示していたんじゃないかと。妖精弓手たち、いい奴らだし何より心映の強さこそ、これこそ本物の冒険者だなあ、と思わせてくれるところでしたね。
あと、ゴブリンスレイヤーさんにものすごく率直に一番信頼できる、と言われてツンツンしながら照れてた槍使いさんが可愛かったです。乙女か!