そうか、源次郎が兄に背を向けてもなお豊臣に尽くそうとしていたのは、かつてこの人のようになりたい、この人のように生きたいと思った真田信尹叔父、上杉景勝の二人に、自分のようにはなるな、と言われたことを、忠実に守って人の心を捨てず、義を尽くそうとしていたのか。
真田源次郎の生き方として、それは凄く理解できる。
でも、それが故に真田家のために生きられず、敬愛する兄を裏切っている現状が苦しくてたまらない。
悩んだすえに、大谷刑部義父に苦しい胸の内を吐露してみれば、義父は誰かに言われたからではなく、真田源次郎の思うとおりに生きてみよ、と諭される。
そうして、源次郎は秀吉の現状を、それが徳川に伝わって利用される情報となる、と承知のうえで信幸兄ちゃんに告白するのだけれど、この時の源次郎、何を思っていたのだろう。どんな風に生きたいと思った結果、豊臣よりも兄ちゃんを選んだのだろう。
まだ、真田源次郎信繁が選んだ真田左衛門佐の姿は見えてこない。

大叔父どのーー! YAZAWA死す! 戦乱の予感に気を高ぶらせていた、と思ったらいきなり大往生していたよ! ナレ死を延長回避したババ様とは真逆に、矢沢の叔父貴の方はナレ死の入り込む隙間も与えぬまさに速攻であった。御歳80。最期まで元気なYAZAWAらしい生き様であり死に様であった。

まったく、あんな風にあっさりと逝ってしまうなんて思えないくらい活力にあふれた元気さだったのに。
そんな矢沢の大叔父さまで80である。対して、秀吉はまだ60代入ったところなんだぜ。それがあの見る影もない耄碌っぷり。
このあたりで、けっこう早回しで年月流れていて、南蛮船漂着はまだ文禄年間だったけれど、二度目の朝鮮出兵はすでに慶長年間に入ってるんですよね。加速度的に老化が進んでいく秀吉。
源次郎の介護スキルが否応なくあがるあがる。なんかねー、昌幸パパの晩年もあんなことにならないか心配になってくる。九度山で、介護再び、なんてことにならないだろうか。
醍醐の花見で、茶々さまの無茶振りに答えて、花咲爺をやろうとして木から転げ落ち、足腰立たなくなる秀吉。茶々さまの、無自覚にトドメさしていくスキルは秀吉にも当たり前のように作用してしまったのか。いつもいつも、最期の一押しをやってしまうのだ、彼女は。

形見分けがなされていくなかで、秀吉は側についていた源次郎の顔をついに忘れてしまう。恐れ慄き、その残虐無情な所業を嫌悪しながらも、偉大な天下人を見上げ続けた源次郎。その人に可愛がられつづけた彼が、秀吉にその存在ごと忘れ去られてしまった時の、あの複雑極まる面差しは強く印象に残ったのだけれど……、その後のあの秀吉との初対面でのエピソードが再現されるんですよね。
色々なことがあり、色々なものが失われ、色々な人がこの男の狂気によって潰えていった。それを思い返してなお、この初対面の時、秀吉が源次郎に示してくれた好意、それが老いさらばえて無垢となった今になって、あの時と同じように繰り返され、与えてくれた。そう、才ある若者が好きじゃ。お前のこと、気に入ったと言ってくれたあの日の秀吉の想いは、何の偽りもない真心だったのだ、とわかってしまう。わかってしまったのだ。
なんて悲しい、あの日の再現。もう市松は現れない。あの栄光の、輝けるような日々は訪れない。老人が開こうとする現実のふすまをそっと閉じ、源次郎は秀吉が夢から覚めぬよう寝床の中へと導いていく。
老人は、素直に若者の導きに従い、眠りへと落ちていく。色々なものが抜け落ちてしまった、その老いさらばえた寝顔が……本当に切ない。切ない。


秀吉、会う人会う人に、みんなに秀頼のこと、頼んでいくんですよね。あんただけが頼りだ、わしが死んだあと秀頼のこと頼む、頼むって。それが、どれほどの楔となって、後の託された人たちの運命を縛り付けてしまうのか。秀吉が哀れであり、託された人々にとってあまりにも残酷な先行きが待っている。

一方で、着実に真田家当主として公私ともに充実していく信幸兄ちゃん。領地である沼田の方ではきっちりと配下に統制を効かせて乱世に備え、プライベートではついに稲姫様が徳川のスパイではなく、本多忠勝の娘でもなく、真田信幸の妻として生きることを選び、つまりはめっちゃデレた上で、息子が二人も誕生。
悩み苦しみながら自分に嘘をついていた弟を、責めもせず滾々と諭せば、思い通じて弟は自分のために仕えていた豊臣の内情を打ち明けてくれ、まさに順風満帆じゃあないですか。
対して昌幸パパとくると、生き甲斐になってた伏見城普請は、地震が原因による方針転換で担当から外され、再び通いだした吉野太夫はなんと偽物で徳川のスパイだった挙句に、出浦さんにぶった切られ、もうこうなると爺として嫡男に生まれた可愛い孫達をかわいがるしかないじゃないですか。
なのに、来週また余計な野心を滾らせてしまうのか。なんか、予告すごいことになってるぞ。