感想とは、読んだあとに浮かんだものを記していくものです。しかし、その物語を読む前にタイトルを見て、作者を見て、あらすじを見て、表紙絵を見て、思い巡らせるモノもあるわけで。
それに期待というもの、楽しみという感情が乗ればなおさらに焼き付けておきたいものもあるわけです。
最近、新作の出版から購入して読んで感想記事書いて、というサイクルの速度が落ちていて、発売されてすぐにこれ面白いよ、と感想で叫べない。
ならせめて、これ面白そうだよ!! と事前に推したり紹介したり、するのもありかな、とまあ【Babel】がついに出るという事実を前に辛抱たまらんくなった、ということなのですが。
月一、こんなピックアップをあげていけたらなあ、と思っております。ちょいちょい、追加もしていく予定。


Babel -異世界禁呪と緑の少女-】 古宮九時(電撃文庫) Amazon


著者が「藤村由紀」名義で書いていらっしゃる【memoriae】シリーズの中でも私が一番好きだったのがこの【Babel】シリーズだったんですよね。それがこうして書籍化されるんだから、良い時代になったものです。
「バベル」のタイトル通り、言葉・言語がキーワードとなってくる物語なのですが、同時に主人公雫の波乱万丈の異世界生活がまた楽しくてねえ。特に特別な力を持たない女子大生雫が、様々な面倒くさい人たちに絡まれ構われ関わるうちに、やさぐれていくもとい逞しく成長していく姿は、【流血女神伝】を彷彿とさせるものがあって(流石にあれほどハードじゃないけれど)、それも好きな要因なのか。しかし、公式のあらすじには自分に自信が持てない女子大生なんて書いてあるから内気な女の子と勘違いされそうだなあ。
ともあれ、決して派手なエンタメ作品ではありませんが、その分じっくりじんわりと、それでいて軽快に物語を堪能できる作品です。このゆったりとたゆたう空気感こそ、作者さんの本領なんですよねえ。


S級御曹司たちがゆく、異世界契約支配者生活《ルーラーズ・ライフ》】 明月千里(GA文庫) Amazon

アニメ化もされた【最弱無敗の神装機竜《バハムート》】シリーズで知名度を挙げた感もある明月千里さんですが、それでも代表作は【月見月理解の探偵殺人】シリーズだ、という人は少なくないのでしょうか。自分はそうです。
金と暴力によって支配された世界での、命をかけた賭け事勝負。金の力、暴力による支配、口八丁に手八丁の詐術に情報を操り騙し合いを繰り広げるクセのある主人公たち。これはもう、月見月理解の系譜だと期待したくなるじゃないですか。まずは一献。


幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。】 二宮酒匂(カドカワBOOKS)  Amazon

かなり前評判高く話題になってるんですね、この作品。本作は読んでいないのですが、二宮酒匂さんというと、【山内くんの呪禁の夏。】。これがまた、実に胸を擽るボーイ・ミーツ・ガールだったんですよね。男の子と女の子の心の距離感の描写が実に素晴らしく、フッと相手の心の懐に入り込むタイミングの自然さが絶妙なのです。あの安心感のあるドキドキした感覚を描ける人は決して多くはないでしょうから、だからこそその人が描く幼馴染、プロポーズ、青春恋愛劇と来たら、注目せざるを得ないでしょう。トドメに、人と人じゃないものの隔てられた世界を跨ぐ恋の物語ときたもんだ。これは回避不可能でしょう。


魔法使いと僕】 十文字青(オーバーラップ文庫) Amazon

また、生きづらい過酷で残酷な世界で生き足掻く男と女を描くのか、この人は。いっそ、探求と思えばいいのか。時々だけれど、十文字さんの作品ってガチで失敗することがあるんですよね、善く生きることに。基本的にどれだけ苦しくても希望を信じて前に進んでいく物語でありながら、時として判断を間違え、時として現状が能力の限界を超えてしまい、失敗することがある。未だに幾つかのバッドエンドの作品のラストは衝撃のまま脳裏に焼き付いている。それだけに、安易に大丈夫だろうと安心は出来ない。だけれど、いつだってこの人の描く人物たちは一生懸命なのだ。書いている作者当人こそが希望を信じているかのように、置かれる状況こそ容赦なく過酷ではあっても、そこに悪意は見当たらない。常に生き足掻くことに敬意があり、真摯であり、そうやって生きる人達に親愛がある。だからこそ、結末にこそ安心はできないけれど、信頼は出来るのだ。
本作も、恐らくそんな信頼を突き詰めていく作品となっていくのだろう。楽しみである。