妹さえいればいい。3 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。 3】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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妹モノの小説ばかり書いている妹バカの作家・羽島伊月は、様々な悩みや問題を抱えながら慌ただしい日々を送っている。原稿の締め切り、恋、そして家族のこと…。アニメ化で大ダメージを負った友人作家の不破春斗から恋愛相談を持ちかけられたのを皮切りに、伊月の周囲の人間関係も動いていく。果たしてその先に待ち受けるのは激動か、平穏か―。一方、天才イラストレーターぷりけつは千年に一度のケツを持つ少女を捜していた…!羽島兄妹の事情も明らかになるかもしれない、大人気青春ラブコメ群像劇第3弾!!

えっ……伊月ってそんなにカニちゃんの事好きだったの? いや、普通に考えてあんな良い子にあんなド直球(危険球込み)の好意を投げつけられて、それも一方的じゃなくて普段から一緒に遊んで過ごすわ、家でダラダラ一緒に過ごすわ、と生活的にもリズムが合っていて、条件的には悪いなんてもんじゃないんですよね。勿論、恋愛なんてものは条件さえ揃えば成立したりするものじゃあないんだけれど、条件が揃えば成立しやすくはあるわけだ。その意味では伊月にそういう感情が生まれる、というのは何ら不思議ではない環境だったにせよ、ここまでハッキリと好きだと言わさしめるとは思わなかったなあ。しかも、カニちゃんの攻勢に押し切られたとかそんな感じでもなく、わりと自然に芽生えて育んできたみたいな雰囲気じゃあないですか。
すごく、上手くいきそうなんですけれど。似た感じで言うと秋★枝さんの【煩悩寺】のカップルみたいで。
しかし、そこで伊月がどうしても踏み切れないのが、作家としてのプライドというわけか。現状、圧倒的に作家としてはカニちゃんの方が売れっ子。比べるのもおこがましいほど知名度や人気に差がある。勿論、収入も。そのあたり、気にしない人は気にしないんだけれど、結婚が上手くいかない傾向としては確かに無視できない要因ではあるんですよね。伊月も、コンプレックスには事欠かない神経質なタイプですし。
一方で、どうもカニちゃんの方にも作家として持ちたるものは持っているようで、今まで比べられる相手というのが居なかったのかもしれないけれど、いざ比較された時に負けたくない、という思いが生じるのは極々自然なことだと思うのですよ。それが、ついにカニちゃんにも芽生え始めたというのは作家としては喜ばしいのかもしれないけれど、その対象・ライバルとして伊月を意識し始める、というのは恋愛的には自分でハードルを上げにかかってしまっていそう。これ、お互いに負けたくない気持ちが募っちゃうと、相手に勝ってから、というゴールじゃあどっちも永遠にたどり着かなくなってしまいかねないし。その辺の調整が問題になってくるのかなあ。
と思い巡らせてしまっているあたり、どうも伊月の相手としてはもうカニちゃんに決定、と自分の中で決め込んでしまったのかもしれない。京ちゃんの長年拗らせ続けてきた想い、というのも掛け替えのないものだと思うんだけれど、今のところ伊月の方には脈なさそうなんだしなあ。それなら、春斗の方を素直に応援してあげたい。お似合いといえば、春斗の方がお互いを補い合えそうな性格ですし。京ちゃんの気持ちにさっさと気づいて、伊月に間取り持って、なんてややこしくなりかねないお願いをさっさと取り下げるあたり、見事な修羅場回避能力ですよ、春斗くん。登場人物の中でも人間関係の機微の敏感さに関しては、彼だけかなり突出してるんだなあ。それに、周りの友人たちは随分助けられている気がする。問題は、彼が機能しなくなった時、ということになるのか。
あとは、伊月が自分に実は妹が居た、という事実を知った時か。伊月が本気でカニちゃんのことを好きだとわかってしまうと、何気にこの地雷は結構深刻なものだと思えてくる。妹に溺れるか、妹を卒業するのか。彼の妹作家としての小説家人生をも左右しかねない案件なだけに、爆発するのが楽しみでも在る。段々と、妹ちゃんの性別を知る人も増えてきてますしねえ。今のところは漏れ出る筋には漏れてませんけれど。

しかしなー、何度読んでも社会人として悠々自適も良いところ、な毎日にしか見えなくて、楽しくもじわじわと脇の下あたりから羨ましいという怨念がにじみ出てきてしまうぜ……。

シリーズ感想