ひでえ。徳川にしても治部殿にしても、秀吉に遺言を無理に書かせようというやり方が、今時の痴呆老人に強制的に遺言書かせるやり方となんら変わらない、という。
あれほど秀吉に忠誠を誓う石田治部が、眠い眠いと書くことを渋る秀吉に「眠くない!!」と怒鳴りつけるとか、かなりキツいシーンだったなあ。治部殿が秀吉を慕っているのは、水垢離しているのを見ても変わっていないと思うのだけれど、それでも彼の中ではもう秀吉は終わっていて、彼の守る対象は豊臣家という体制にすでに移ってしまっているのを思い知らされたようだ。秀吉のために、秀吉のために、しかしもう秀吉は豊臣家を守るために役に立たないので、秀吉のために秀吉を蔑ろにしてしまう、という治部殿のあまりに真っ直ぐな迷走。
でもね、秀吉は今際の際で源次郎を呼んで、源次郎の名を呼んで、意識がある時はひたすらに秀頼を頼む、と誰彼構わず頼み込んでいた秀吉が、その時だけは源次郎にこう懇願するのだ。
佐吉を頼む、と。佐吉を支えてやってくれ、と。あいつは、寂しいやつなのだ。
治部殿は知らないのだ。知らずに進んでしまったのだ。今際の際で、秀吉が名を呼んだのは秀頼だけではなく、佐吉のことも呼んだのだと。佐吉のことだって、息子のように思っていたのだと、石田治部は知らずに生きていくのだ。それが、あまりにも悲しい。
そして、また源次郎に新たな呪いがかけられる。

呪いは、佐吉にも振りかかる。
秀吉が見た悪夢。自分をじっと恨めしげに睨みつける童子。あれは、茶々さまの兄であり、浅井家の嫡男で秀吉が磔にして殺した万福丸だったのだろうか。
そんな悪夢を見て飛び起きた秀吉が、なぜ徳川家康を殺せ、と叫んだのか。佐吉に命じたのか、関連性はわからない。しかし、その命令が石田治部の運命を決定づけてしまったのだと思うと、あまりにも悲惨すぎる。

その徳川殿はというと、野心をむき出しにして謀臣として暗躍しまくる本多佐渡や阿茶局などと違って、家康は終始乗り気じゃなさそうなんですよね。その心情は、あとで秀吉の枕元で源次郎に吐露することになるのだけれど、家康はずっと生き残るために手をつくしてきたのであって、決して天下を狙っていたわけじゃないんですよね。戦はいやじゃあ、もう伊賀越は二度とごめんじゃ。徳川内府のこぼす嘆きには、胸の内にずっと溜め込んでいた心情が溢れだしたような感があって、なんとも感慨深かった。そんな思いは、家臣の前では吐けないもんねえ。
本多佐渡が無理やり朦朧としている秀吉に遺言を書かせている時の、家康殿のあの罪悪感に押しつぶされそうな表情。そして、意識を取り戻すごとに懇願するように秀頼のことを頼んでくる秀吉の願いに、感じ入り打たれたような面持ちになる家康。
前回の上杉景勝も、秀吉の懇願に打たれた顔をしていたけれど。家康が一人で再び訪ねてきて、秀吉に懇願された時のあの表情。あれは景勝と同じ、死にゆく者の最期の想いに胸打たれてしまった男の表情だったように思う。
この真田丸では、家康は積極的に豊臣を滅ぼす気はなかった、という説を取り上げていくのだろうか。そうあって欲しい、と思うのがほんとうのところである。この徳川内府、本当に嫌いになれないのよねえ。

しかし、秀吉のもう一つの遺言。家康を殺せ、という命はまわりまわって治部殿から真田昌幸へと伝達され、ついに出浦さんが出陣する。
家康を暗殺せよ。

一方その頃、徳川家康の屋敷では、側室にも子供ができていた事を舅本多忠勝に伝えてなくて、もう自分からは伝えられないから、徳川さま代わりに伝えてくださいお願いします、と史上稀に見る情けないお願いをしにきていた信幸兄ちゃんの姿が……。
そんなん頼まれても、家康公が困るよ!
話を聞いて、脇でめっちゃ笑ってる秀忠くん。そのリアル「プークスクス」はやめれww
家康さまも、稲が未亡人になっては困るからなあ、と兄ちゃんが忠勝にぶった切られる前提で話をしてるし。家康公にしても昌幸パパにしても、とにかく信幸兄ちゃんはぶった切られる前提なのな!!
しかし、その信幸兄ちゃんが、屋根裏に潜む出浦さまの気配に一番最初に気づくのだから、運命であり皮肉な話。
兄ちゃんの指摘によって、出浦さまの存在が暴かれ、ついに東国無双本多忠勝と真田忍軍棟梁出浦昌相の決闘が繰り広げられる。
まさか、大河ドラマでこんな武張ったカッコいい殺陣が見られるとは!! ガチで手に汗握る攻防だったんですが。出浦さんの中の人の寺島さん、ちょっとすごすぎるよ。本郷猛とガチで戦ってるよ。
しかし出浦さん、堂々と顔を晒して大立ち回りしてるけれど、これって信幸兄ちゃん居なくても顔割れしそう。
不意に兄ちゃんを遭遇してしまったことで虚を突かれた出浦さま、隙をつかれてついにばっさりと背中から切られ、手足にも手傷を負い、満身創痍になったところで囲まれついに絶体絶命か。というところで、最後の力で自爆紛いの爆薬を炸裂させて、命令無視してついてきた佐助に助けられるのだけれど……。
これ、出浦さんどうなったんだろう。意識を失った出浦さんを昌幸パパが抱きしめて号泣するのだけれど、史実ではパパより長生きしてるんだが。
でも、これでパパの徳川家康への恨みがさらに募ることになりそう。

今回は、茶々の強さと弱さが引き立つ話でもあった。鶴松の死以来、茶々は死を恐れるようになった、と語る大蔵卿局。しかし、敢えて死にゆく秀吉に会いに行く茶々。しかし、今にも黄泉路へ旅立とうと言う秀吉の死の気配に怯える母に、秀頼は率先して秀吉の元へと歩いて行く。
この秀頼はこの幼いころから本当に賢そうで、茶々や北政所が褒めるのも親の目から見た贔屓じゃなさそうなんですよねえ。
そんな息子に引っ張られるように、怯えきった表情を立てなおして、常からのように天真爛漫な様子で秀吉に語りかける茶々。
このワンシーンでもわかるように、決して秀頼は茶々の言いなりなんかじゃなく、一方茶々の方こそ息子に支えられているような様子なんですよね。
そして、こらえ切れずに逃げるように崩れおちた茶々がしがみついた相手こそ、北政所。慰められよく秀頼を育てたと褒められて、はにかむ茶々の表情は、母の懐に抱かれた娘の顔をしてるんですよねえ。此処に至ってもなお、鶴松の死の時に育まれた二人の仲が断ち切られず続いていたことが、感慨深い。
この真田丸では、お寧と茶々の関係はずっとこのまま最期まで行くつもりなのか。だとすると、お寧さまにとってまだまだ辛いことが続いていくことになるんだなあ。

秀吉の最期は、誰にも見とられず、孤独に無力に、這いつくばって絶えていく、寂しく惨めな末路に。光の消えた瞳から流れ落ちた一筋の涙。これが天下人の最期なのか、あまりにも哀れで無残な最期である。