我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

【我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~】 あわむら赤光/ 卵の黄身 GA文庫

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天下無双―アレクシス大帝、レオナート一世の驍勇は真実そう評される。しかし、後に大陸統一を果たす彼も、若き日には“吸血皇子”の汚名を着せられ、故郷を奪われた、武骨で不器用な青年でしかなかった。これは、大反撃の物語である。再起を誓ったレオナートはまさに一騎当千!そして一本気な彼に惹かれて集うは、神とも魔物とも例えられる数多の名将、賢者、才媛、奇才。やがて彼らは腐敗した祖国を呑みこむ一大勢力となり、群雄する大国全てと渡り合っていく!痛快にして本格―多士済々の英雄女傑、武勇と軍略が熱く胸を焦がすファンタジー戦記、堂々開幕!!
真っ向勝負な戦記だなあ。主人公からして実に男臭い。無骨で寡黙で硬派な青年というと戦記物の主人公としてはどうしても愛嬌に欠けてしまうのだけれど、それを補うのが軍師にしてヒロインであるシェーラなのでしょう。作中でも触れられていますけれど、シェーラって軍師としてはかなり異質なんですよね。軍略謀略を司り、物事の裏の裏まで勘ぐり操ってみせる軍師という役割の人間は、どうしたって人間というものの裏側や心の闇を覗くせいか、ある種の陰を帯びているキャラが殆どなんですよね。頭が良すぎるが故に、物事に対しても人間に対しても達観し、或いは苦悩している。厭世家であったりキレキレすぎるカミソリのような人だったり、皮肉屋だったり必要以上にクールだったり。
ところがところが、このシャーラという少女は軍師でありながら、ひたすらに陽の人間なのである。わりと悪辣な手段を取ったり、危ない橋を渡る作戦を導き出したり、と戦場の軍師として戦国乱世の謀臣としてやることはやっているのですが、そこに闇を感じさせないのである。むしろ、その明るく天真爛漫なキャラクターでレオナーととその一派のムードメーカー的な役割を担っていて、その愛嬌たっぷりの在り方はマスコット的でもあり、周りの人たちの不安や絶望を才知と雰囲気の両方で振り払うキャラなのである。
そんな彼女に懐かれ、ひっつかれることで……そんなシェーラにいちいちちゃんと真面目に相手をして、構って、応じることで、本来寡黙なレオナートにも、その掛け合いで妙な愛嬌が生じて、暑苦しいだけじゃない微笑ましさ、ちょっとした隙のような真面目故の可愛らしさ、みたいなものが垣間見えてくるのである。
シェーラって娘が、レオナートという主人公の魅力を引き立ててるんですよねえ。これは、よいコンビなのです。
そして、戦記物といえば群像劇。主人公の傍らには、綺羅星のごとく将星が集まってくるのですが、意外なことに男率結構高め!! ライトノベルの戦記物だとどうしても女性キャラが群がってくるし、そういうのも好きなのですけれど、今作は男臭さと暑苦しさを雄叫びを浴びるように堪能するのがもっぱらの楽しみ方じゃあないですか。やっぱり、男同士の揺るぎない友情というのはいいものなんですよ。親友の危機に、助けに来たぞ、なんて野暮なことは言わず当たり前のように、叛逆の疑いを欠けられた友のもとに馳せ参じる。この情熱的な自然体の素晴らしきかな。
やっぱり、戦記物の主人公は情の厚い人の方が読んでいて痛快なんですよね。強さや能力で人を引っ張る以上に、その情の厚さ、熱さ、篤さに周りの人たちが惹かれ、集っていく話が好きなんだよなあ。

ちょっと残念だったのは第二王子の体たらくよりも、その黒幕だった公爵の方ですか。凄い大物感があったにも関わらず、のあの結末でしたからね。この手の黒幕は非常にしぶとく、前になかなか出てこないことで逆に手の出しづらいところから政治的戦略的デバフをかけ続けてくるからこそ、恐ろしいキャラになるだけに描かれていたポテンシャルの割に不用意だったんじゃないかな、と。いささか、倒した時のカタルシスがその分弱くなってしまった気がします。
とはいえ、この程度はただの前座か。どうも後ろにはもっとえげつない相手が控えているようですし、物語としてはレオナートの旗揚げがはじまったばかりですし、本格的に物語が動き出すであろうこれからが非常に楽しみな期待の新シリーズであります。

あわむら赤光作品感想