妄想少女の観測する世壊 (MF文庫J)

【妄想少女の観測する世壊】 二階堂紘嗣/きみしま青 MF文庫J

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Kindle B☆W

人々の歪んだ想いが具現化してしまう妄想具現化症―それが集合的無意識下で蓄積、発症することで“吸生種”という怪物が生まれ、ひそかに世間を賑わせていた。そんなある日、主人公・木須一騎は“吸生種”の事件に巻き込まれ、妄想具現化能力を持つ“夢飼”の少女・白神千和と出会う。彼女に命を救われた一騎は、それをきっかけに千和と行動を共にすることになり、“吸生種”と“夢飼”との争いに身を投じてゆく…。“夢飼”の五島笹羅、春風髑髏、東南との出会いや、幼馴染み・安城蛍との日常。そして千和の想い―美しい願望は、世界を歪ませる。「わたしは、誰かの役に立たなければならないんです」新感覚ホラーバトルラブストーリー、ここに開幕。
えらくコスプレチックな衣装といい、四文字熟語をモジッた能力名といいゆるいギャグ調の厨二異能モノかと思ったら……ダークサイド入ったガチシリアスじゃないですか。
いや、初っ端からギザ付きスプーンで目玉抉ってくる奴が相手な時点でなんかグロいぞ!? と意表を突かれたのですが、そこから一向に緩むことなくそのままどんどんヘヴィな展開に。
自分ではどうにもならない現実に直面して、打ちひしがれるしか無い主人公の無力感。衝動的にぶちまけたく鳴る衝動を、その対象であるヒロインの千和にぶつけるわけにも行かず、そのまま行き場をなくしたまま内側でグルグルと抱え込んで苦しまないといけないわけですが、この苦しみとそれを見守る千和の哀切のコントラストがいいんですよね。そして、物語はそのまま二人の世界に完結してくれることなく、より残酷な事実を一騎に突きつけて、彼が今まで疑いもせずに信じていた世界を根本から破壊していくのである。
この妄想と現実の境界線が曖昧になる夢の世界の描写は、わかっていてもどこまでが現実かわからなくなって、随分不安定な雰囲気が良い感じで出てたんですよねえ。そのまま、気持ちが通じ心が届いても、ほろほろと手のひらからこぼれ落ちていって消えていく、容赦なく主人公を打ちのめしていく展開は好みドストライクでした。
足掻く主人公よりも、あのヒロインたちの終着の裏返しともいえる透徹とした諦観と、それ故に深く静かに刻まれた献身的な愛情がより印象的でねえ。
だからこそ、個人的には救済はなくてもアリだったかなあ、と思わないでもないのですが。同時にそれだとあんまりだ、という気持ちも湧き上がるわけで。あのラストの救いは、あるがままに受け入れるべきかなあ、と。