りゅうおうのおしごと! 2 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 2】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「私はあなたを師匠だなんて呼ばないから」
『竜王』九頭竜八一の前に現れた黒衣の少女は高飛車にそう言い放った。夜叉神天衣。小学4年生。弟子と同じ『あい』という名を持つJSの教育を将棋連盟会長より依頼された八一は密かに特訓を施す。だがそれが弟子にバレた時―かつてない修羅場が訪れた!
「ししょう…?だれですか?その子…?」
はじめてのライバル、はじめての修羅場、そしてはじめての家出…幼い師弟に訪れた危機を乗り越え、二人のあいを救うことができるのか!?悲しみの雨に閉ざされた少女達の心に、若き竜王の角が虹を描く!!
ああ、これぞ人の縁だなあ。棋士と棋士の戦いの物語であると同時に、師匠と弟子の物語……世代を経て引き継がれていく将棋への想い、そして将棋に関わる人への想いもまた、様々な形で次の世代、次の世代へと引き継がれていくのだ。若くして弟子を持つということの重み。いや、若い若くないは関係ないな。弟子の人生を背負う師匠として、果たしてこの子をどう育てるべきなのか、自分のやり方は果たして合っているのか間違っているのか。悩み迷い、時に弱気になって周りを頼り、そうやって試行錯誤しながら自分のもとを訪れ、自分を頼り、自分に教えを乞い、自分に将棋という人生そのものの導べを求めてきた弟子という存在に、自分の将棋を伝えていく。その苦しみと喜び。そんな想いを、また自分の師匠たちもまた自分たちに投げかけ、うちに秘めながら、自分たちに多くを与え続けていくれていた、と気付き知った時の、こみ上げてくる感慨。そして、それを今度は自分が伝える立場にあり、伝えることの出来る自慢の弟子が今、自分の腕の中に居るという事実への感動。八一がこの物語の中で知り得ていく経験は、どれもがギラギラと光ってて、なんかねー、エネルギーが迸ってる。凄まじい熱量が噴出している。恐るべきは、その熱量を棋士たちは皆が漲らせているんですよね。想いの爆発が、そのまま将棋という概念への情熱となって、火山のように噴き出している。その地獄のような熱さたるや、溶岩のような粘度たるや、まともな人間が生きる領域じゃないんですよね。修羅たちの闘争の場、これこそが、呼吸と勝負を等価にした化け物たちの遊び場。
ぬるま湯の中でまどろんでいては、決して届かない領域なのだ。そこには年齢の大小など一切関係ない。たとえ小学生だろうと、同じフィールドで同じ条件で、同じ熱量に晒され、それに対抗するだけの修羅とならねば追い立てられ食いつくされるだけの戦場なのだ。
だからこそ、愛がある。憎しみや怒りではない、純粋なまでの勝負への欲求が満ち満ちている。そこへ自ら身をおどらせる同士たちに、後ろから続いていく者たちに、棋士たちは、師匠たちはこんなにも愛を与えてくれるのだ。ようこそ、と祝福してくれるのだ。自分の持っているすべてを与え、その上で叩き潰そうとしてきてくれるのだ。
なんともまあ、凄まじい。

八一の先達にも師匠にもライバルにも弟子にも恵まれた、その地獄のような残酷な環境はなんとも羨ましく、とてもじゃないけれど近づきたくない世界だなあ、としみじみと思う。それでも、本当に楽しいんだろうなあ。充実しているんだろうなあ。こんなにも深い育ててもらった感謝と、育てる手応えのある喜びがある人生を、この年令で体験してるなんて。そして、こんなにもひりつくような真剣勝負の世界を、最高峰の戦いを味わい尽くせる日々を過ごしているなんて、壮絶にも程があるよなあ。
個人的には、一番弟子のあいよりも、新たに現れたもう一人の弟子・天衣の方が棋士として非常に好み。何気に姉弟子とスタンスにシンパシーがあるからかもしれないけれど、一番弟子はうつつを抜かしてるんですよね。ししょうに寄りかかりすぎている。それは、師匠としては思わずにやけてしまうことかもしれないけれど、棋士として弟子の様子は将棋に対して甘いとしか言いようがなく……それ以前に恋愛としてもちと舐めた態度なんですよね。その点、天衣の方はトゲはありまくりにしても、運命の人に対してもストイックで自分からガツガツいくのではなく、むしろ八一の方から我慢できなくなって奪いに来させるほどに見事なあの誘い受け。あれに比べると、あいは舐めてる、ぬるい、甘い、独占欲を履き違えてる、とわりと女としては鬱陶しいタイプなのを露呈してしまってるわけですよ。姉弟子ほど辛辣すぎるのもあれはあれで問題だと思うけれど、わりとあれは周りの人たちには知れ渡ってるっぽいんだよなあ。
まあともかく、あのあいVS天衣のひりつくような名勝負のみならず、まさかのラスト、八一による「竜王のお仕事」。伊達に竜王位じゃないところを見せてくれるあたり、主人公の面目躍如ですねえ。もう後半ビリビリきっぱなしでしたよ。もうどの棋士たちも魅力的すぎる。

にしても、銀子と月夜見坂さんとの女王戦。カラー口絵であれだけ見開きでかっこ良く「開幕!」って銘打ってたから、どれだけの名勝負が繰り広げられるのかと思ったら……。
月夜見坂燎女流玉将……蓮っ葉姉御入ったヤンキー系の強面美人(ギザギザ歯)という強力な見た目の派手さが、なんとも引き立ちますねえ……逆に。この人がああなるかと思うと、かなり素で笑っちゃうんですが。
銀子さん、ひどいですw

1巻感想