折れた聖剣と帝冠の剣姫(3) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 3】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

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エルドームでの激戦から帰還したルシードとファル。長くパルミア、カーヴェルに伝わってきた聖剣伝承に疑念を抱く二人のもとにパルミア王国の政権を奪った将軍クログスターからの使者が現れ、ルシードらにとって困難な協力の要請を伝える。時を同じくして、ファルの姉にしてパルミア第一王女のアルトもまたルシードたちの前に姿を現した。正統なる王家の指導者としてクログスター政権の打倒をかかげるアルトは、妹のファルとルシードに合流を促す。いっときは兄弟姉妹のように育ったルシードらは快くアルトを迎え入れるのだが、姉であるアルトの隠すことのないルシードへの好意が徐々にファルの心を曇らせていく。再会を果たした王子と王女、4人の新たな体制は何をもたらすのか?!
アルト姉様、後々普通に合流するものと思っていたので、まさか合流したことで逆に昔のままの関係じゃ居られない、という現実の立場に基づく亀裂を入れてくるとは……。国を割る、国を起こすということは旧体制との決別を意味する以上、これはどうしようもないことだったのか。アルト姫からすると、あくまでパルミア王国の正統としての立場を譲らないのであれば、どう国内を改革しようと新しい国を起こしたファルと同じ道はもう歩めない。なまじ姉妹仲がいいだけにこの決別は辛かったなあ……。ただ、そこにルシードという男が絡んでいるだけに事態が余計に拗れているのですけれど。
ファルが生まれた国を捨てて新しい国を創ろうと思ったのはルシードが居たからで、彼が居なかったらそもそもどう国内で立場が追い込まれようと、アルトから離れることはなかったんですよね。そのルシードを一時的にでも手放してしまうことは、ファルにとって立脚点を失うことに等しい。
そんなルシードを奪おうとする姉は、どれだけ仲が良かろうと大切だろうと敵認定するほかないんだよなあ。まさか、こんな形で男の奪い合いが発生するとは思わなかったけれど。ハーレム展開はどうやったって無理なんですよね、二人の立ち位置からして自分の地位を捨てる以外にルシードを共有することが出来ない関係になってしまっている。
まあこれだけアルトが積極的で、なおかつファルの感情を刺激することになるとは予想外でしたけれど。もうちょっと緩やかにファルのルシードへの気持ちは成熟していくと思っていたから、相当性急にファルは自分の気持ちを自覚して、なおかつそれをフル駆動せざるを得なくなったわけで。アルト姉様、けっこう容赦無いですよね、こうして考えると。実質、可愛い妹から男を奪うのに殆ど躊躇らしい躊躇がなかったわけですから。それだけ、アルトも切羽詰ってたとも言えるのかもしれませんが。ファルが追放され自身も亡命政権を率いる事となり、一人で反乱勢力と内部の旧弊と戦わざるを得なくなったわけで、心から信頼し寄りかかることの出来る相手を欲するという意味では、飢餓状態だったのかもしれません。それが、あのルシードへの過剰なくらいのアプローチににじみ出てしまっていたのかと。
なかなか辛い道を歩いてるなあ。彼女がもっと姫としての立場に無責任なら、全部放り捨ててファルたちのもとに来るという選択肢だってあったでしょうに、それは端から頭になかったみたいですし。

しかし、相手が悪い。

パルミラを制圧したクログスター卿、明らかにただの簒奪者じゃないんですよね。建国の物語であるものの、戦記物ではなくむしろ王道な冒険という要素を重視したファンタジーらしい本作ですけれど、聖剣というものが作られた過去の歴史にまつわる謎が、どうやらダイレクトに事態に介入してきそうで、その根幹に居るのがどうやらクログスター卿。彼がやっぱりラスボスとなってくるのか。またぞろ、人智を超えた人外の存在がバックでうごめいている気配が垣間見えてきた。

あと雷竜さん、あんた金に汚い! 詳しい情報が欲しいなら、約束の財宝とはまた別に金払え、って守銭奴か!!

シリーズ感想