「良き、策じゃ」


うおおおお! 素晴らしい、素晴らしかった。真田丸の中でもこれはもう屈指の神回と言って間違いないでしょう、これ。前々から宣伝して、満を持して送り出してきただけはある、というものです。
感極まった源次郎役の堺さんのボロ泣きに、思わずこちらももらい泣き。
あれはガチ泣きだよなあ。リハからボロ泣きしてたらしいけれど、あの「兄上……」と言葉を漏らしてからもう何も出てこなくて、ただただ涙が溢れてくる源次郎の姿は、ものすごい弟してて、それ見て目をうるませながらウンウンとうなずいて肩を叩く信幸兄ちゃんが、ほんと兄ちゃんしてて、真田兄弟最高だよ、最高だよ。
昌幸パパの、あの寂しそうでありながら凄く嬉しそうな表情。息子たちの成長を心から喜び、そして寂寥を
感じているあの複雑な表情、仕草の演技。
今回はもう草刈りさん、大泉さん、堺さんの真田親子の演技が極まってて、素晴らしかった。素晴らしかったしか言えないよ。

そうかー、犬伏の別れは戦国の習いでも悲劇でもなく、親を越えていく息子たちの成長を描く場になったのか。
まさか、徳川と豊臣に陣営を別れることを提案するのがパパでも源次郎でもなく、源三郎兄ちゃんになるとはなあ。


さて時間を巻き戻して今回冒頭から。徳川主軸による会津征伐に対して上杉に味方すると決めた真田親子。事情を真田家の女達にも伝えて、いつでも上田と沼田に逃れる準備を、と言い含める。
ここで女衆の取りまとめを源次郎が、きりに頼むんですよね。……いや、きりちゃんあなた細川家に仕えてるのに何しれっとコッチ戻ってるのw
わたし、真田の女ですからー。
これにカチンと来たのが源次郎の正妻の春で、きりに張り合うように薫さまに取り付いて自分が自分が、とアピール。うわぁ、これは面倒くさい本性が露わになってきたぞ。
一方で信幸兄ちゃんの嫁である稲の方は、徳川とはきっぱり縁を切り、真田の女として生きる旨を昌幸パパに誓うのである。変わったなあ、稲姫。それを嬉しそうに見つめているおこうさん。揉めてた二人だけれど、何だかんだと息のあったコンビになってるんですよね、こっちの女衆は。

上田に出立する前日、大坂城に挨拶に寄った源次郎が会ったのは石田治部の送った桃の木を手入れする片桐さん。この桃の木はずっと大坂城の中で豊臣の行く末を見守り続けるのだろうか。
北政所にも別れの挨拶をして、大坂城の天守を見上げる源次郎。思いをはせるは、ここでの思い出。秀吉との出会い、そして茶々との出会い。
再び、彼がここを訪れるのは大坂の陣が起こる14年後、となるんだよなあ。


場面変わって会津征伐。上杉主従は相変わらずで、注目は徳川の方。ここで、家康は一軍を秀忠に預けて本多佐渡をサポートにつけるんですよね。これを、お目付け役と思って機嫌を悪くする秀忠を宥めるのは……茶々の妹のお江……。この江姫、暑苦しい。なんかすごい暑苦しいぞww 飄々としている姉ちゃんと違って、なんかこうねっとりとした暑苦しい姫だ。この僅かなシーンだけで、キャラが伝わってきてしまうw

そして、上方で決起した石田治部は、美濃で陣を張る大谷刑部に味方になってくれるように頼むために訪れるのですが……
ここからが、大谷刑部の屈指の熱演。病に冒され死を目前にした男の、凄まじい熱量が画面を焼きつくす。
「私が、お主を勝たせてやる!!」

関ヶ原合戦に際して、これほど熱くたぎる大谷刑部少輔吉継があっただろうか。諦観でも、黄泉路の共連れでもなく、この生命を燃やし尽くしてこの不器用な男を勝たせてやるのだ、と気炎を上げる大谷刑部役の片岡愛之助の熱演、熱演、熱演!! 
思わず目を真っ赤にして泣く石田治部がまたいいんだ。男の、そう男と男の友情である。これほどの熱い思いを一身に自分に向けてくれる相手に、思わず言葉もなくハラハラと涙をながす石田治部に、
「泣いているヒマはないぞ!!」と叱咤する大谷刑部。でもね、刑部殿、目が見えてないはずなんですよ。あとで、娘の春が報告に来た時に、彼女がどんな表情をしているのかわからず「笑っているのか?」と尋ねたくらいにもう目も見えてないはずなのに……治部が泣いているのは、目が見えなくてもはっきりとわかるんですよ。

一方で、熱があがらないのが小早川秀秋。伏見城攻めを命じられたものの、気が乗らないのを臣下となっている板部岡江雪斎に愚痴るのですが……この段階で板部岡江雪斎、自分が徳川から送り込まれた間者であることを明らかにするのである。
おお、この段階で既に徳川方であることを教えてしまうのか。これは、土壇場で裏切る既存の展開を引っくり返す話になるのか!?

石田方が、大坂在住の大名たちの家族を人質として集め出したさなか、自ら屋敷に火を放ってしまったのが、細川ガラシャこと玉姫。きりちゃんが駆けつけるものの、夫である細川忠興にもし人質にされるようなことがあれば、その前に自害せよ、と言われております、となんか恍惚とした表情で殉じようとした挙句、家臣に自らを槍に突かせて死んでしまうのである。石田方の暴走、という形ではなく、ちゃんと細川忠興の言葉を取り上げて、ガラシャが自ら死を選んだ、という形にしたのか。
これは治部と刑部殿も想定外で、人質を死なせてしまったことで大義が薄れる事態に、治部殿またお腹痛くなる。
実際、これを見て危機感を覚えた稲姫は、おこうと共に沼田に脱出。また、混乱に乗じて上方にいた阿茶局もこっそり脱出。さすがである、阿茶局。

細川屋敷を脱出したところで捕まってしまったきりと佐助でしたが、幸い面識のある治部と刑部のおかげで解放。大谷刑部殿が事と次第を記した文を昌幸に渡すように佐助に託すのですが、何日で着く?と尋ねられて4日半、と答えた佐助に……微笑んでうん、と頷くだけの大谷刑部さま。容赦なく日数削ってくる出浦さまや真田家の面々と違って、すごく……ホワイトですw

そして、届けられた文によって上方の事態を知り、……犬伏の別れとなるわけですなあ。

「夢物語はもう終わりにしてください!!」
こうやって親父殿を怒鳴りつけるのが、信幸ではなく信繁の方だった、というのはパパにとってもショックだったかもしれません。
様子を覗きに来た河原綱家に、下駄が投げつけられて綱家の歯が折れてしまったエピソードもこの時。途中、家臣として河原綱家が登場した時から、この時要員なんだなあ、と思って待ってましたけれどw


くじ引きでどっちにつくか決めよう、から「私は決めました、決めた、決めたぞ!!」。この連呼は、ちょうど第二回のあのシーンの繰り返しなんですよね。それを、信幸兄ちゃんが決然と行ってみせたのが、本当に感慨深い。
敵味方に別れるのではなく、どっちが勝っても勝った方の陣営が負けた方の陣営についた家族を助けるのだ。どんな手を使っても、どんな手を使っても、絶対に助けるのだ。その為に、徳川と豊臣の両者に着く、まさに生き残るための大戦略。三人がまた一緒にこうして膝を突き合わせ、酒を酌み交わし、一緒に笑い合うための、策なのだ、と。
たとえ離れ離れになっても、真田は一つ!!
あのババさまが遺言として遺してくれた言葉を胸に、今一度違う道を歩もうとも真田はいつも心一つに。

「……良い、策じゃ」


昌幸パパがこぼしたセリフが、本当に染みました。信幸兄ちゃんのひねり出した策を、ただただ一言で褒め称えた昌幸パパ。ついに、策を褒めてくれた昌幸パパ。
息子が、父を超えていく瞬間でした。


「我等はこのときのためにうまれてきたのかもしれない、いずれまた三人で飲める日が来ることを祈ろう」


犬伏の別れは、涙涙の哀しみではなく、何気ない談笑で……よりにもよって韓進の話題なのですが。酒を酌み交わしながら、親子三人で笑って盛り上がって和やかにくるまれて行く、そんな別れでした。
これがまた、胸に染みて……素晴らしかった。大泉洋さん、すごいよ、素晴らしい真田信幸でしたよ。
この回こそ、真田丸の一つの集大成だった、と言って過言でナシ。ただただ、感動感激するばかりでありました。良かったよ、良い兄弟、良い親子だった。感無量です。