英雄都市のバカども (3) 〜アルコ・ホール三番街の何でも屋〜 (ファンタジア文庫)

【英雄都市のバカども 3.〜アルコ・ホール三番街の何でも屋〜】 アサウラ/たぶ竜 富士見ファンタジア文庫

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英雄の末裔が住む街リキュール。血の気の多い住人が巻き起こすトラブルは厄介なものばかりだが、何でも屋のモルトたちや一騎当千の自警団がいる限り街の平和に隙は無い。たとえ、男に惚れた棒遣い男と百合拳法少女が大げんかを始めようが、極悪ギャンブラーが美女の体を狙おうが、凄腕のスリが人々の“心の宝物”を奪おうが…。そんな騒がしくも平穏なはずの英雄都市で、陰惨な殺人事件が起きた。容疑者は―なんとモルト!?彼の捕縛に抗った親友・ライもまた投獄されてしまった。背後で国際規模の陰謀が蠢くこの事件を、牢の中の二人は解決できるのか?
男でも顔が良かったら気にしないとか、五歳の幼女の大事な部分を熱心にイジったりとか、モルトくん君アウト! 紛れも無く変態です。
今回の話は一貫してちょっとアンニュイな雰囲気のしっとりとした空気感で進んでいっていたのに、その中でナチュラルにこういう行為をしてしまうこの男は……。
しかし、三巻にしてようやく登場人物たちの過去語りとなったのですが、これはもっと早くやっても良かったんじゃないかな。モルトを中心としたキャラクターたちの関係性とか、人物像とか深味が全然違ってきてるんですよね、この過去編を知ると知らないとでは。モルトが本来縁のなかったこの街に抱く想いの深さとか、ライとの親友関係、そして大家の娘であるリッツとの掛け替えのない絆とか。特にリッツなんか、これもう完全にメインヒロインじゃないですか。いや、以前から12歳にして正妻感をずんどこと醸しだしていましたけれど、ここまでモルトの人生をリッツが決定づけてたとはねえ。一生頭上がんないでしょう、これ。モルトが人として生きていけるようになった諸々の理由であり要因こそが、リッツの意志であり思いであり存在そのものなわけですから。いっそ、モルトの女神と言ってすらいいんじゃないかと。その結果として未だ幼女の枠を脱していないうちから凄まじいセクハラ、被ラッキースケベ対象となり続けているのだから、この娘の運命やいかにw
もっと他におぱーい担当はたくさんいるにも関わらず、圧巻の被災数だもんなあ。
ともあれ、モルトの過去は以前から複雑な背景があるものと断片的に語られていましたけれど、ここまで凄惨なものを心の傷とともに抱えていたとはなかなか想像できなかったんですよね。今の彼が本当に自由に、心のままに楽しそうに生きているから。それだけ、この街の人たちに、この街の独特の雰囲気に癒されたからこそ、というのがこの過去編を通じてよくわかる。彼にとって、リッツとライがどれだけ特別なのかも。
なんともしっとりとした気分に浸れる……ジョッキでガバガバ飲むそれと違う、カウンターでチビチビとグラスを傾ける酒の楽しみ方に似た、普段の馬鹿騒ぎとは味わいの異なる話で、これはこれで良かったなあ。面白かった、という以上に「良かったなあ」と染み入れる話でした。そんな中にも普通に出てくる「ピーちゃんw」。

しかし、ここでまさかのサシャの素性とモルトの過去との思わぬリンクを、そのまますれ違わせてしまうのかー。なんか、話の締め方が続きが出なさそうな雰囲気だったんですけれど、もしかしてこのシリーズこれで終わっちゃうんだろうか。なんか、あとがきもそれっぽい書き方だったしなあ。

シリーズ感想