ついに、ついに真田安房守昌幸、逝く。
大河ドラマ史において語り継がれる名キャラクターでありました。草刈正雄、役者人生の中の最大の当たり役だったのではないでしょうか。その最期の力演たるや……。
秀吉役の小日向さんもそうでしたけれど、老いさらばえる演技というものの凄まじいこと。あれ、どうやるんだろう、本当に。成り切って成り切って成り果てないと、出来ないよなあ。源次郎に遺言を伝えているときの、あの自然と形が歪になる口元とか、どう意識してやってるんだろう。
思えば、一話からぶっ飛んだ、しかし歴史クラスタが思い描く表裏比興たる真田昌幸そのものが飛び出してきて、あれでハートを鷲掴みにされたんですよね。今回の大河ドラマは今までと違う、と確信させてくれた。
その昌幸が、何だかんだとこの作品の根幹を支え続けてきた真田昌幸が、逝ってしまった。なんて寂しいんでしょう。
彼のみならず、ポロポロと歯が串抜けていくように多くの登場人物が亡くなっていくのです。
稲の子とおこうの子、二人の孫を平等に可愛がってくれる本多平八郎忠勝。彼が生涯初めて傷を負う、小刀での切り傷。確か史実では仏像をほっているときに、という話でしたけれど、真田丸では孫に竹とんぼを作ってあげているときに手元を誤って、という話になっていましたけれど、これって蜻蛉切もかけてるんでしょうなあ。
それでも、自分の引き際を悟りながらもそれを朗らかに家康に伝える忠勝の姿にはどうしても胸が熱くなってしまいます。
まだ西に不穏な空気が有るのだ、と隠居を押しとどめようとする家康に、事が起こればこの老いた身でも槍を持って馳せ参じましょう、と笑う忠勝。家康は、労るように彼の隠居を許すのでした。
初めて登場した時、あれは甲斐攻めのときでしたか。家康さん、忠勝のこと凄い鬱陶しそうにしてたんですよねえ。本当に心から、長らく仕えてくれた部下を慈しむように肩を叩く家康の姿に、ふとあの頃を思い出してしまいました。長く、長く時が流れたんだなあ。
その長い間を、ただただ主君のために尽くしてこれた本多忠勝。幸せな生涯だったんだなあ。彼もまた、大坂の陣を待たずして去っていく。

そして、九度山暮らしの中で、主君北条氏直の墓参りに高野山を訪れていた板部岡江雪斎と再会する源次郎。
このまま、やりたいこともないですしこの山奥の村で穏やかに過ごしていきたい、と語る源次郎に、江雪斎は首を振り、その瞳の奥に熾火が見える。いつか、その熾火を求めてお主を訪れる者がいよう。
その時を。再び真田左衛門佐が世に現れることを、楽しみにしているぞ。と薄っすらと笑う江雪斎殿。彼もまた、源次郎という青年の才を愛し、高く評価してくれた人物の一人だったんだなあ。そんな板部岡江雪斎、北条家を見守り続けた外交僧もまた、源次郎の活躍を見ることなく大坂冬の陣の五年前に没する。
最期まで、山西さん演じる板部岡江雪斎、かっこよかったなあ。

石田治部から豊臣秀頼を託された、加藤清正もまた……。
あの時、石田治部が清正に囁いた内容。それは自分が亡き後の秀頼を託す、命をかけて守れ、という友への遺言だったのか。その言葉に殉じるように、凛々しい青年へと成長した秀頼の側に侍る清正。
尤も、史実ではこの頃にはむしろ豊臣家からは距離を置いて、徳川の親族として振る舞っていたというから既に豊臣秀頼という象徴は担ぐものの居ない神輿に成り果てていたんだろうなあ。
真田丸においては、秀頼に近づくものすべてに噛み付く虎のように尖りきった態度で徳川に相対する加藤肥後守。すでに杖をついて足元も怪しい本多佐渡を、制止されたからといって突き飛ばすのはいかんですよ。本多佐渡、いい人だけれど根に持たないわけじゃあないのよ?
二条城の秀頼と家康の会見で、まず二人きりで会見するという約定を無視し、制止する本多佐渡を押しのけて秀頼について会見の場に入り、家康の出て行けという言葉は無視。そして豪快だったのが、秀頼の下がれという言葉に対して、清正は部屋から下がるのではなく、一端立ち上がったあと、家康の側に座りなおすんですよね。これ、最初意味がわかんなかったんだけれど、「下がれ」と言われて秀頼より下である家康の側に下がった、という意味だったんですね。これは徳川家康も不快感を隠せないですわ。
この一件で、家康と本多佐渡は加藤清正の排除を決め、世代の改まった服部半蔵に清正の暗殺を決行させるのである。
こうして、加藤清正は治部殿の遺言を果たせぬまま、肥後に帰る旅路の途中にて突然発症した病に倒れ急逝してしまうのでした。

図らずも、武田最後の重臣である真田昌幸、北条を看取った板部岡江雪斎、徳川家の興隆を守り続けた本多忠勝、豊臣家最後の槍である加藤清正、と各家の守護者がこうして去っていく回だったのでした。

寂しい……。

にしても、今回はわかっていたとはいえ怒涛のように年月が流れましたねえ。真田丸が始まってから作中で一年立つのに、あれだけ時間がかかったのに比べるのがおこがましいほどに速い速い。場面が変わるたんびに登場人物の見た目に年輪が刻まれていく。
家康や秀忠が征夷大将軍に任じられるのを期に、恩赦を願ったのは本当の話のようで、この時本多佐渡は実際に積極的に支援してくれてるんですよね。本多忠勝亡きあとも、彼に代わって真田家に何かと便宜を測ってくれていたようですし。
真田丸としても、本多正信はいざとなると謀殺もじさない冷酷な謀略家であるものの、ことが徳川家の命運に関わらなければ、本当に優しい人情家なんですよね。かつて、頑張る若者である源次郎を損得抜きで助けてくれたりしてくれたのも嘘ではなかったわけで。徳川嫌いの真田源次郎ですけれど、佐渡守だけは沼田問題の件もあって、ずっと敬愛してる節があったのですが……。
そんな佐渡守の恩赦嘆願にも、頑として首を振る家康。結局、最後まで家康は昌幸を許さないままでした。

そう言えば、正式に徳川につくこととなった真田信之とその家臣団……全員、月代をいれて頭剃っちゃったんだw 一斉に髪型変わってるので、なんか画面に凄まじい違和感があったんですけれど、不思議とすぐに慣れてくるのでした。特に信之は、月代にヒゲを生やすと貫禄が出て似合ってたなあ。
思えば、最近長らく登場していない真田信尹叔父も、徳川家臣になったら月代してましたっけ。

九度山暮らしの方は、史実では昌幸が生きている間はわりと悠々とした生活だったみたいですけれど、本作では村の住人との関係も悪いというわけではないものの打ち解けたものにはならず、なんとも灰色の重苦しい日々を感じさせる描写でしたね。やることないので、ひたすら子供を作り続ける源次郎w
この時期には、正室の春だけでなく、きりちゃんとも娘二人こさえてるはずなのですが……って、それは次回以降になるのか。次回には、呂宋に送っていた秀次の娘が現れるみたいですし。
そのきりちゃん、相変わらず過ぎて変な笑顔に。正室の春ちゃんに自覚なく喧嘩売りまくってるんだけれど、実際春ちゃん面白くないんだけれど、あまりにアレな言動に「別に、負ける気しませんし」とか言い捨てられちゃってるし、きりちゃん……。
むしろ、お春がライバル心を燃やしているのは既に亡きお梅の方で、初子の娘にお梅という名をつけて、源次郎のお梅のイメージを上書きしてやる、と暗い情念を燃やしてるこの正室、怖いです、怖いですww
プスプス障子に穴開けるのやめれw
だめだ、嫁が癒やしにならないww

ともあれ、クライマックスである大坂の陣へと加速しだす、これまでの真田丸を支えてきた面々が次々と消えていった回でありました。
そして、ラストを飾る最大の登場人物である豊臣秀頼のデビュー回。凛々しく聡明な好青年に成長した秀頼ですけれど、その置かれた立場を思うとあそこまで堂々と天下人のように振る舞うのはやっぱり悪手なんですよね。慎重で臆病なのはついぞ変わらない徳川家康という人が、そんな秀頼を見てどう思うのか。
思えば、周りにバカにされようがへりくだってバカのように振る舞ってみせた伊達政宗という人は、あれはとんでもない男ですけれど苦労人でしたなあ。
個人的には、秀頼のお披露目をまるで自慢の孫を送り出すように目を細めていた片桐さんの微笑みが印象的でねえ……。