異世界食堂 3 (ヒーロー文庫)

【異世界食堂 3】 犬塚惇平/エナミカツミ ヒーロー文庫

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七日に一度現れる、遠い異世界へとつながる、魔法の扉。その扉の先には、不思議な料理屋がある。洋食のねこや。窓一つ無いのに不思議と明るい部屋の中には見たこともないような内装。出てくる料理は不思議な、されど美味しい料理。どの料理が一番旨いか。時折話題には上るが結論が出たことはない。彼らは料理を食べて語らい、時に新しい発見をする。そんな『異世界食堂』に、気配を消して働く、新たな給仕が加わった。チリンチリン―そしてまた、土曜日が来るたびに鈴が鳴る。

あれ? この娘が新しくウェイトレスに加わるのかー。確かウェブ版では彼女はお客のままだったんじゃなかったかな。なので書籍版の独自展開と思われるのだけれど、新店員が増えてると既存のウェブ公開されてる話に支障が出るんじゃないか、と疑問に感じたんですがなるほど……半ば幽霊店員なのか。よっぽど超一流の実力を持った人でないと、彼女のこと認識すら出来ないのね。大司祭とか数千年を生きるエルフの賢人とかですら気づかないのだからよっぽどだよなあ。
一応、店の関係者には赤の神の加護がついている、という話だったけれど間接的な影響力ですしいざとなったら赤の神がすっ飛んでくるにしてもタイムラグというものがありますから微妙に不安要素はあったのですけれど、こうなったらもうねこや店内は世界最強の絶対安全領域だなあ。

相変わらず美味しそうな料理描写で深夜に読んでしまうと夜食テロとなってしまう。一方で、異世界食堂に来て美味しいご飯を食べる、という行為に対するお客たちのスタンスの差異もまた興味深いんですよね。
あるお客は過去の思い出、或いはもう亡き人との繋がりを思い出すようにかつてあの人が食べた、もしくは昔から変わらない料理に舌鼓を打ち、思いを馳せる。
あるお客は現在を生きるための潤いとして、欠かせない生き甲斐の糧として、この店にまた訪れることを目標にして険しい日々を過ごしていく。
またはこの店で食べた料理を自分の生活の種にする目的だったり、命からがら絶体絶命のピンチに店に飛び込んできて自分の命が助かったことを実感するのに、ねこやの美味しい料理が活を入れてくれたり。
ただ料理の美味しさを楽しむだけではない。食べる人にも歴史があるのだ。それは、三十年以上異世界食堂として異世界の人々に料理を提供しているねこやの歴史にも、知らず多く絡みついている。
そして、それだけ長く続いているということは、それだけ多くの出会いと別れも横たわっている。
一つ一つは短い短編なのだけれど、それを一つ一つ繋げていくと異世界の様々な側面やそこに生きる人達の横顔、国々の風俗、そしてねこやとの繋がりなんかが見えてきて面白い。また、ねこやが異世界と繋がった成り立ちに関する謎なんかにもさらりと触れるエピソードが出てきて、そう言えばヨミって書籍版にはまだ登場してなかったですよね?
先代の店主である爺さんはいくつかのエピソードで登場しているのですが。
今の店主も、けっこういい歳なのに独身のようで、それにも色々と背景というか歴史というかエピソードがあるようなのですが、なかなか掘り下げにくいテーマではありますねえ。尤も、現店主も若くない以上後継者問題、というのは出てくるのですが、それに関連する人物はまだ登場してないのね。
ところで、先代店主がヨミだと思ってるコメントをちらほら見かけたのですけれど、ウェブ版だと店主は生粋の日本人で、ヨミは女性だったんですよね。この辺は変えてこないと思うのですけれど。

エピソードの中ではハンバーグとマカロニグラタンが、カップル二人の初々しさが可愛らしくて好きですねえ。単純に美味しそうとなると肉まんとウインナーポテトが、って洋食屋としてはアレなメニューなんだけれど、空腹を刺激するとなるとこれかなあ。

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