きりちゃんだけじゃなく、春や内記など家族もみな反対しないんだ。みんな、これが源次郎の生きる道だと喜んでその選択を祝福してくれたんだねえ。このあたりも、これまでのホームドラマ大河とは一線を画しているのかも。

さて、大坂城では次々と一旗揚げよう、或いはここを死に場所にしようという浪人たちが集まってきていました。
木村くんが名簿受付やってるのかー。秀頼の側近である彼が受付やってる、というところに何か意味を感じ取らなければならないのかもしれない。そういう事務仕事をする本来の文官職、官僚タイプの家臣がこの時期壊滅的に大坂城にはいてないのよねえ。
ところで、ここで木村くんが開いている参加者名簿、後に五人衆と呼ばれることになる真田左衛門佐幸村、後藤又兵衛基次、毛利豊前守勝永、明石掃部全登、長宗我部土佐守盛親の五人以外にも興味深い名前が並んでいて、一時停止して見てみると面白いかも。大谷刑部の弟とか、石川数正の息子とか、浅井長政一族とか、嫌がらせで出奔した主君の南部の姓を名乗ったヤツとか、何故かいる細川忠興の次男とか。
ともあれ、家康に烏合の衆と言われるのもまあ仕方ない。殆ど個人や少数単位で乗り込んできた寄せ集めに過ぎなかったわけですしね。それを戦える軍勢に仕上げることがどれほど困難なものか。往年の戦国武将の率いる軍勢とは比べ物にならぬものだったでしょう。この中で一勢の形骸を留めていたのは、黒田家を出奔した際に軍団の中枢となる中級下級指揮官クラスの臣下を連れて出た後藤又兵衛くらいのもので、あとは旧臣が多く集まった長宗我部盛親が唯一の元大名級としての面目を保った程度でしょうか。
もっとも、関ヶ原から14年の歳月が過ぎて合戦のノウハウが失われてしまったのは他の大名も一緒で、家康が見る影もなくなった味方の体たらくを大いに嘆いた、という話もあるのでさてもさても。

しかし、その家康……まさか秀吉のみならず彼の方にも認知症の症状が出始めているとは。さすがに秀吉ほどひどくはないものの、物忘れが酷い、名前を思い出せないなどくっきりと症状が見えるんですよね。源次郎の名前を忘れちゃってるとはなあ。何気にショックではあったり。
真田が大坂入りしたのを聞き及んで、「親か子か!?」と尋ねたのをまさかこういう展開で擦りあわせてくるとは。
とは言え、源次郎の名前を思い出せなくてもその明晰さを忘れておらず、また豊臣家が無謀な滅亡へと自らひた走るのを嘆いたり、と思考の明敏さは未だ衰えぬ家康。キラキラと輝いていらっしゃる秀頼様と、老いさらばえた家康。未来はどちらに輝いているか、と問われると思わず秀頼様、と言いたくなりますがその輝きにはやっぱり中身が伴ってないんですよねえ。どこまでも現実を見つめ続けている家康に対して、現実から遠ざけられ続けたがゆえに純真無邪気に輝いていられる秀頼。


その頃、江戸真田屋敷では信之兄ちゃんの元に、すえが縁談の報告に訪れていました……相手それかい!! いやまあうん、この真田丸では恋愛結婚だったみたいですから本人が幸せならいいんですけどね。
実父がああなっている以上、伯父である信之に挨拶にくるのは当然なんだけれど姪からちゃんと信頼されているというのはいい感じよねえ。
家中の方も稲が正室として、おこうが側室として密接に強力して奥を守り、また矢沢三十郎や小山田茂誠がきっちりと脇を固めるという充実した中身を保っていて、この頃信之が病に伏していたというのは事実みたいですけれど、それに動揺することなく安定している様子が見て取れるわけです。
でも、小さい頃にはいつも一緒に育てられていた稲の子信政とおこうの子信吉。この二人の仲は決して良好と言えないようで、武張った信政に文弱のきらいがある信吉とではどうしてもギクシャクしたものがあるわけで。
それに、生まれの方は信吉が早いもののその親であるおこうは側室。徳川重臣の娘である稲の子信政は幕府との関係を考えると無視できない、と嫡子をどちらにするかで信之兄ちゃん、大いに悩んでいたのですがここで敢えて自分の子ではない信吉を嫡男として推挙する稲様。この人、本当に立派な奥方になられたなあ。
単に生まれの早さだけではなく、信吉と信政の性格の違いを考えた上で、さらに盟友であるおこうのことも考えた上で、自分の子ではなく信吉の方を推す、という真田家の事を、家族のことを両方考えた上での理と情を兼ねた提言の出来る正妻という得難い存在。
また、信吉の嫡男決定を伝えられて思わず泣き崩れるおこうに寄り添い、言葉で感謝を伝え、そしてそっと手を握って気持ちを伝える稲様の姿がねえ。
ほんと、この家族良いわあ。

源次郎たちが脱出するために弄した策。あれ、宴で踊ってたのって雁金踊りだったのか。梅ちゃんとの婚礼のときにおこうさんが死にかけながら踊ってたアレ。数十年の時を経て、今度は源次郎の家族みんなで踊ることになるとは。そして、裏で進行する秘め事を誤魔化すためのものというのもあの時と同じなんですよねえ。あの時は室賀暗殺が裏で進行し、今度は源次郎の家族みんなの九度山村脱出のため。
なんでもこのダンスから一人ひとり消えるように脱出って、サウンド・オブ・ミュージックのオマージュらしいっすねえ。なるほどなあ。
かつて、九度山村に暮らすようになった時にはさっさとおっ死んでくれ、とまで言われた村長の長兵衛。何も言わず、源次郎たちが村を抜け出しそうとしているのを察して、さらっと助けてくれてるんですよね、これ。十四年の歳月、決して辛いことばかりではなかった。村の人達との仲がそれを示してくれているようじゃないですか。

さて、九度山を脱出したものの、警戒網を抜けて大坂に入城するのはまだ一筋縄ではいかないわけで。
一旦息をついて皆で今後のことを話し合った時、春が無邪気に自分も戦います、と言った際に源次郎がこれがもう反射的に、思わず、とっさに、という感じで「いかん!!」って怒鳴るんですよね。彼がここまで感情的かつ自分で自分をコントロールできない様子で声を荒げたのって、はじめてじゃなかろうか。
それだけ、自らも戦場に立ってそこで死んでしまった梅ちゃんのこと、心の傷になってたんだなあ。その思いを知っているきりが、そっと戸惑う春ちゃんに寄り添うんですよねえ。この思いやり、若い頃は無神経な女だったのに……。

あの服部半蔵の必殺技「押し通る!!」って、自分も源次郎と同じくぽかーんと見送ってしまったんだけれど、あれってかの懐かしき伊賀越えの時に初代半蔵が「押し通ります!」って言って策も何もなく突撃していった脳筋忍者のあれかー!


大坂城入城に際して、わざわざ白髪に歯の欠けたヨボヨボの爺さんに扮してしまう源次郎。これって、史料に有る源次郎のこの当時の自分の姿を語ったものや、軍記物のエピソードを元にしたネタなわけですけれど、なるほどこういう風に使ってきたのか。いや、前回の次回予告の際は全然わからんかった。この爺さんの新キャラ誰だろう、と真剣に悩んだくらいでw
勝手知ったる城である、の源次郎のセリフが胸に響く。そうなんだよなあ、まさに青春時代をここでずっと過ごしてきたんだから、他の連中とは年季が違う。でも、あの頃と違って城中のそこかしこには身なりも怪しい胡乱な浪人たちがたむろしていて、ごった返しようは雑然極まり……これを治部殿が見たらなんというか。
秀頼と面会した源次郎。向こうも、源次郎のこと、幼少ながら覚えてたのか。ほんと、純真無垢にキラキラ喜んでる秀頼様が色んな意味で眩しすぎる。一方で、秀頼が親しさを全面に出せば出すほど明らかに機嫌を損ねていく大野治長の様子がなんともはや。真田丸でも大野治長は再評価されないのかなあ。
ただ、彼が治部殿たちのような事務方仕事に優れた官僚型武将ではなかったので、大阪城内の兵糧の管理など全然把握できていない様子なのはまあ仕方ないのよねえ。その点、真田丸では治部殿や形部殿の傍らで豊臣家、天下の事務を目の当たりにしてきた源次郎は、数少ない豊臣軍事官僚の系譜を引き継ぐ武将、とも言えるわけで、もうしっちゃかめっちゃかになってる大阪城内の様子を見て、こりゃあかん、と兵糧などに口出ししてしまったのもまあ無理からぬことでもあり、実はあんまり周りの感情考慮してないあたりも治部殿譲りというわけですなあ……あかんやん。
にしても、平気で二度の徳川軍撃退の本当の功は私のものであって、父上見てただけだからー、とかはったりかますこの面の皮の厚さ。こっちは昌幸パッパの薫陶ですなあ……。


そしてラスト。十数年の時を経て再会した淀君と幸村。出会った瞬間、「茶々さま」「源次郎」とまるであの頃に戻ったような表情で見つめ合う二人。まさに、運命の再会というべき構図で……。ああ、ついに終わりが本当に始まったのだ、という実感が湧き上がったラストシーンでした。