大蔵卿局ぇ!!
この人だけは、一貫して足引っ張る役回りになってるなあ。


さて、冒頭に戻り茶々さまと源次郎が二人きりで会うのは、かつて若かりし頃に未だ茶々様が側室に上がらずに居た頃に密会した大坂城内の武器倉。秀吉が茶々には見せたくない、と彼女を遠ざけていた血と戦の匂いの篭った武器の倉。それが、今出番を迎えようとしている。
かつてを懐かしむように語りながら、その瞳に映るのは若き頃の情熱。その一方で心を占めるのは母としての思い。彼女にとっていちばん大事なものは、息子秀頼になってるのだなあ。
彼女が大切に思った人々は、みな尽く未練を遺して死んでいった。浅井の父に母お市。兄万福丸に、義父となった柴田勝家。そして、早逝した息子お捨。彼女が上げた名前の中に秀吉が入っていないことを尋ねた源次郎に、窘めるように茶々が「大切な人、と言いましたよ」と告げた時の、あの「ああ……」というため息の出るような気持ち。わかってはいたけれど、ここではっきりと明言しちゃうあたりが茶々様だよなあ。でも、吐き出せて良かったとも言える。
自分の生命はどうなってもいい、秀頼だけは死なせないで。
そう言って、源次郎の背中に抱きつきその顔を埋める茶々さま。ああ、茶々さま、やっぱり源次郎が……。
でもその願いには応えられても、気持ちには応えられない源次郎の想いが、優しく彼女を引き剥がしてその手を握り、そして遠ざける仕草に現れていたように思う。
そして何より、茶々さまが顔を埋めていた源次郎の背中……というか、源次郎が着込んでるパパ譲りの毛皮。臭かろう、臭かろう、とそればかり気になってたのは内緒であるw

ところかわって、こちらは江戸。病のため留守居となっている信之兄ちゃんが呼び出したのは、お松姉さん。ここで真田の身内である彼女に兄ちゃんが打ち明けたのは、息子たちを源次郎と戦わせたくない、という思い。それも、息子たちを案じるのではなく、弟の方を案じてるんですよね。息子たちの旗指物を見れば、弟の指揮が鈍るのではないか、と。源次郎には、好きなようにやらせてやりたい。14年間も耐え続けてきたあいつには、何の憂いもなく思う通りにやらせてやりたいのだ、という……兄ちゃん、兄上、兄上ぇ。正直、ちょっと泣きそうになった。兄ちゃん、弟を恨みに思うどころか、そんな、本懐を遂げさせてやりたい、なんて思ってたなんて。先週、あれだけ病を押してでも自分が出陣するべきだった! と悔やんでいたのは、徳川に忠誠を疑われることを危惧していたのではなく、自分が指揮していれば何としてでも弟の邪魔をさせなかったのに、という事だったのか。一方で、徳川の臣として自分の家臣が源次郎に味方することは君主として許してはならない、という苦渋の決断も果たしている。兄上、貴方という人は本当に……。

真田左衛門佐が大坂に付いた、という知らせは秀忠について大坂に向かっている真田信吉、信政兄弟の陣にももたらされる。というよりも、こっそり伝えたのは本多佐渡なのだけれど。あれ、将軍秀忠が場を離れたあとにこっそりと矢沢三十郎たちを呼んで伝えたのって、もしかして佐渡守の配慮なんだろうか。佐渡さまって、こういうケースだと謀略を巡らせるよりも、情の人だからなあ。

また、家康の陣には大坂城を出た片桐どのの姿が。いつもいつもぞんざいに扱われ続けた片桐且元。そんな片桐殿を家康は老体を気にせずわざわざ座から立ち上がって彼のもとまで降りてきて、その手を握りながら労を労い、彼の忠誠心をたたえ、その彼を追いやった大坂の面々を痛罵する。わりと、このあたり家康本心も混ざってるんじゃなかろうか。若い頃から心の中で何を思っていても、対面時には常ににこやかな態度を崩さない家康でしたけれど。
それにしても、このときの片桐殿の苦悶の様子が素晴らしい演技で。どれだけの葛藤、どれだけの煩悶、どれだけの迷いの果てに、家康に豊臣家の内情を伝える決心をしたのか。その苦悩の心情が伝わってくるようで。思わず、傍らに控えていた本多正純が同調してウルウルと眼を潤ませてしまうほどの迫真でした。ってか、正純も決して冷血でも無神経でもなかったんだなあ。ちゃんと、佐渡守の息子なんだなあ、とちょっと安心した。
そして、何より一番涙もろい家康公w この人、作中の登場人物の中でも一番こういうの弱いのよねえ。

しかし、城を離れながらも正確に城の内情を把握し、豊臣家の継戦能力を導き出してみせる片桐殿。伊達に、日ノ本最強の官僚集団、豊臣奉行衆の一人だったわけじゃないのよねえ。
あとのシーンで、大野修理殿が2,3年は戦えます、と言っているのを見ると尚更にそう実感するわけで。いや、あのシーンも修理殿、本気でそう思って言っているわけではないんだろうけれど。


さて、軍議の方は源次郎が一人出撃案を献策するも、場は籠城一択。早々に籠城に決まりそうになったので、源次郎は自分が折角出した案がろくに内容も吟味せずに無視されるのなら、自分など不要、城を出るからね! と軍議の場から出ていって自室に篭ってしまう。
こうして場をあとにすれば、向こうから和を請うて来る、という策なんだけれど、内記の言うとおり真田家伝統のハッタリだわなあw 
木村長門守重成に請われて、もう一度軍議の場に戻って詳しい出撃案の内容について地図を広げて解説するものの……やっぱり場は籠城案優勢。他の五人衆までもが籠城策を支持する中、唯一空気を読まない俺様な毛利勝永だけが面白い、と賛成に回ってくれる。場の雰囲気が変わってきたのを見計らってか、ここで、一度休憩、と織田有楽斎が提案し場が解散、となる。

裏では、織田有楽と大蔵卿局が大野修理と木村長門に、浪人共に主導権を持っていかれるな、自分たちが連中の首を押さえて大坂城の差配を仕切るのじゃ、と叱咤しているわけで。その指示に従って、修理殿は事前に源次郎以外の五人衆に籠城案を支持するように言って回っていたのですな。
お陰で、修理殿が黒幕みたいな風になってしまっているのだけれど、実のところ修理殿もこの時点で出撃案に傾いてるんですよね。というか、そもそも戦の経験が乏しい木村長門はともかくとして、修理殿の方は戦働きで武功もあげている人で、官僚型よりむしろ武将型の人なんですよね。まあ、片桐殿もあれで賤ヶ岳の七本槍の一人で、官僚としても武将としても辣腕の凄腕だったのですけれどw
と、片桐殿の話はともかくとして、援軍の宛もなくいきなり籠城しても先はない、というのを理解できる程度には戦場の嗜みがある人なわけで……。
ただなあ、この大坂城に集まった軍勢って指揮系統も何も編成されてないガチの烏合の衆なんですよね。かつての関が原の頃のように練度と編成と指揮システムが極まっていた頃のそれとは比べるのもおこがましい状態なんですよね。
往時の織田軍や豊臣政権化の軍勢なら、マジか? というような長駆の戦略機動も安々とこなせたでしょうけれど、果たして寄せ集めの大坂勢に、果たして源次郎の言うような攻勢が現実的に出来るのか。
規律でガチガチに縛られたプロの軍勢じゃないんだぜ? 
見てると、源次郎の出撃案について、あれ無理やで、という意見や感想が思った以上に出てて、苦笑してしまった。
まあ、厳しいよなあ。机上の空論と言われても仕方ない。茶々さまの、あいつら裏切るんじゃね? という不安も、現実に関ヶ原で小早川勢や南宮山に陣を敷いた連中が見事に裏切ったのを思い出すとねえ。茶々さまの落城経験から言っても、めっちゃ裏切られてますしねえ。

とはいえ、「勝つ」のが目的なら一か八か、の博打は打つしかないわけで。京都の街を焼き、古い神社仏閣を滅しても、勝つためならばやってやんよ、という覚悟を源次郎は決めている。
豊臣家を生き延びさせるため、ならやり方はまた違うものを取らなくてはならず、籠城案というのは的外れではないんだけれど、戦を選んだ時点で和睦前提って的外れではあるんですよね。
あと、豊臣ぶっ殺す派はむしろ家康ではなくで秀忠なので、家康をぶっ殺すと自動的に豊臣家も終了になる、という罠w 関ヶ原当時ならまだしも、この次期になると家康が死んでも徳川幕府が揺らぐことはもう無いんですよねえ。それこそ、秀忠もまとめてぶっ殺した上で幕府の官僚機構を担う人材をまとめて始末するくらいしないと。
それをやったのが明智光秀の本能寺の変だったのですけどね。あれ、信長と信忠だけじゃなくて、信長の抱えていた官僚機構と、織田家の家督を継いでいた信忠とそのネクストガバメントを担う側近衆をまるごと消し去っちゃったからこそ、織田家そのものが力を失って、軍団運用のために独立したシステムを抱えていた織田家軍団長たちが実権を握ることになったんですよねえ。
まあ、もっともこの場面で豊臣家が同じことを出来たとしても、かつての秀吉たち織田家軍団長たちのように統治を担うことの出来る人材が一切存在しないので、文字通りシッチャカメッチャカになること請け合いですが。伊達殿、ひゃっはー状態になりますなあ。源次郎の案通りに言ったとして、背後から伊達が秀忠本隊を挟み撃ちにしたあと、そのまま大坂城勢も一緒にまとめて撃滅しようとしかねない!!

しかし、ハッタリかまして場を掌握するのはパパ譲りだとしても、一人ひとり顔を突きつけて話し合って説得して味方にしていく、というのはこれは源次郎特有の人誑しスキルですよねえ。
元々源次郎寄りだった明石殿と長宗我部殿はともかく、まだ若い木村長門の心を射止め、あの面倒くさいのを拗らせた後藤又兵衛をすら、真正面から喝破して気持ちよく説き伏せてみせたのは、素直にお見事と言いたい。

でも、それ以上にこの軍議にて感動させられたのは、豹変して浪人たちに金貰って働く連中はおとなしく言うこと聞けよおら、と本性を露わにした織田有楽を、一喝してみせた大野修理殿でしょう。
お前が黙れ、彼らは豊臣家のために集まってくれた大事な客人、無礼は許さん。決めるにではあんたじゃなく、うちの殿様、右大臣秀頼様であるぞ!!
くわぁ、気持ちいい。ってか、カッコいい。アレだけ優柔不断に見えた大野修理殿が。あんな見事な啖呵を切ってくれるなんて。そして、ちゃんと秀頼の意思を誰よりも尊重している。修理殿、忠臣だよ。佞臣なんかじゃない、自分の立場や利益よりも豊臣家のために尽くす、治部殿のそれを継承する熱い忠臣だよ!!
前回で、決して悪い人じゃないんだろうなあ、と思わせてくれた大野修理殿だけれど、それでも力不足は否めないかと思っていただけに、この崩れかかった場を見事に仕切り直し、統制してみせた手腕。目上にもかかわらず、君主を無視して壟断しようとした織田有楽を厳しく鮮烈に批判し退けるその気合。母の頸木を脱して、豊臣家の重臣としての面目躍如したその姿、実に格好良かった。

これなら勝てる!!

そう思った瞬間もありました。
それだけに、それだけに……あっさり、茶々さまの「ダメ」の一言で覆ってしまう秀頼殿。
あの意味深な大蔵卿局の映し方を見ると、状況や浪人衆の様子も直接見ていない茶々さま、何もわかっていない茶々さまに色々と吹き込んだのは大蔵卿局なのでしょうね。昔から、そう昔からこの大蔵卿局が茶々さまを現実から遠ざけ、自分の信じる正しいことを吹き込み続けていたわけで。
その大蔵卿局かて、現実は何もわかっていないのですけれど。この人は、大坂城内で実権と主導権を握り続けることだけにしか視界が及んでいない、それ以外がまったく見えていない。そんな人が、決定権を握っている茶々さまの意思を思う方に動かしている、というこの状況。待ったなしのひでえありさまである。
だいたい、茶々さまの言ってること、矛盾してますもんね。浪人衆で信じられるのは真田だけ。だから、真田の案は許しません、って。

片桐殿、カルバリン砲で狙うのはこいつですよ、大蔵卿局ですよ! ちゃんと狙って!!

あと、相変わらず花の世話を一生懸命している長宗我部盛親殿には和んだ。この人が営んでた寺子屋、小屋の周りも花盛りだったんだろうなあw 寺子屋に生徒たちが通ってくるのを、家の周りの花壇や植え込みに水をやりながら待ってる様子が、なんだか瞼の裏に浮かんでくるようです。