わはははは、これはえぐい。これまで「何言ってんだこいつ」としか思わなかった織田有楽斎や大蔵卿局の言っていた「真田は信用なりません」「あの者たちは戦いたいだけなのです!」という言葉が、実のところ何も間違っていなかったことが、この局面で明らかに。
源次郎、あかんそれはあかん。いらんところまで、石田治部殿のそれを引き継いじゃってるじゃないか。
あれだけ人誑しの魅力を持っているにも関わらず、人の気持ちがわからず、賢しらな策に走ってしまう。昔から色んな人に叱られてきたことが、何も治っていないことが発覚してしまったわけで……。


「あの手この手よ」


正面からの無謀な突撃による多大な被害を前に、諸将を抑えてじっくりねっとりと攻略にかかる家康公。このあたりの老練さが堪らない。
でも、三十万の兵を三組に分けて、一晩中鬨の声をあげさせよ……って、眠れないの城内の人たちだけじゃなくて、徳川陣営も一緒なんじゃないだろうか。
「私も眠れん!」とか秀忠さん愚痴ってないだろうか。本多佐渡あたりは気にせず眠れてそうだけれどw
声が聞こえない位置までさげるわけにはいかんだろうし、3日に一度一晩中声上げ続けないといけない、って大変だと思うんだけれど。


大坂城では、これを機会に総攻撃だよね!! と、ウキウキしている秀頼公を抑えて源次郎が、ここは籠城に徹して耐える時です、と説き伏せている。襲撃してくる敵を撃退し続けていればいい、というのは実際どうなんだろう、というところなんですよね。果たして、それで士気が続くのか。既に現状だけで出陣しないという方針に城内の不満が高まっているというのに。
それに、源次郎の戦争観って微妙に古い気がするんですよね。この時期、既に合戦は火力戦の様相を呈していて、家康が準備させているカルバリン砲は特別としても、大砲の運用のみならず火縄銃の弾薬の消費量からして尋常ではないはずなのである。あれって、ちょっと信じられない規模でガンガン消費していくっぽいんですよね。一向宗がこの場所で信長相手に10年粘っていたときは、海上輸送によって外部から補給があったから保っていたけれど、大坂の陣では早々に西側の砦群が制圧されて封鎖されてしまっていますし。

ともあれ、ここで秀頼公に戦略方針を伝えた上で、決めるのは秀頼公自身です、周りの意見にかんたんに左右されてはいけません、と諭す源次郎。あとのことを考えると、お前が言うな、になってしまうのですが。

徳川の鬨の声に動揺する大坂城内で、我関せずなのは茶々さま。このときの茶々さまって、実のところもう肩の荷が下りたというか、城のことは秀頼に任せるつもりだったんじゃないのかな。以前、秀頼に反発されて自分から自立しようとしている姿を見送った時の嬉しさと寂しさが入り混じった表情と、その後の特に口を挟もうとしなくなった姿を見ると、ね。
でも、源次郎に茶々の妹である初が訴えるんですよね。姉は、死にたがっている、と。

考えてみると茶々という人物の素顔は複雑に入り組んでいるんですよね。少女としての彼女、女としての彼女、母としての彼女。初の言う死にたがっている、死に魅入られている茶々も、息子の自立を喜ぶ茶々も、それを恋する男の懇願で踏みにじる女としての茶々も、ただ慎ましく息子と源次郎と三人で暮らせればいい、と呟く彼女も、みんな嘘偽りのない本心なのでしょう。様々な顔が目まぐるしく入れ替わる、茶々というキャラクターを竹内結子という女優は、まさに魔性の魅力で演じきっている。


一方、江戸の真田屋敷では単身大坂城に入城しようという平野さんが、信之兄ちゃんの元を訪れていて、兄ちゃんの方も兵糧持って一緒に行く気満々という……いや、自分も行くんかい兄ちゃん!!
賤ヶ岳七本槍の誰ひとりとして大坂方の味方をしようとしないなんて、これじゃあ太閤殿下が可哀想じゃねえか、自分くらいは味方してやりたいじゃねえか、という平野さんの侠気がもう泣ける。あんた、大坂城じゃ仕事せずにゴロゴロサボってただけだったのに、そんな人がこんなにも豊臣家への心意気を見せるなんてなあ。殿下が可哀想、というあたりに忠誠心というのとは少し違う、彼の情の厚さみたいなものを見てしまって、なんともかんとも。
信之兄ちゃんが行けなくなったあとも、恨み言一言も言わずに旅立つ平野さん……カッコいいよあんた。
その信之兄ちゃんはというと、いやこれはさすがに稲様もお怒りよ。こっそり兵糧横流し、だけでもお家断絶の危機だろうに、それを当主自ら大坂まで出向いてやろうってのは絶対あかんて。
それでも、振り切って行こうとする信之にたいして、稲姫様が切った切り札は……超久々の出浦さんだーー!!
出浦さん、まだ後遺症で体不自由なままなのか。既に忍としては引退状態なのね。実際は、出浦さん、真田家の家老職としてバリバリ働いていたみたいだけれど。
最初の方、信之のことをちゃんと敬語で殿として接していたのに驚いた、と思ってたらあっさりと昌幸パパの息子への態度に戻っちゃったけれど(笑
お前の父は、もっと先を見て動いていたぞ!!
……え、えぇぇ? そうでしたっけぇ!?
出浦さん、幾らパパが好きすぎるからって年月が経って美化が進みすぎてるんじゃないでしょうか。先を見ても「まったくわからん!!」とか言ってましたよ、あの人。
まあ、あの人が無茶できたのは信之という保険が常にあったからではあったんでしょうけれどね。それを兄ちゃんは誇っていいと思うんだけれど、彼も真田なのだなあ。十四年以上も不遇をかこつていた弟には自由にさせてやりたい、と語った兄ちゃんだけれど、兄ちゃん自身生まれてからこの方ずっと我慢我慢の人生だったんですよね。自分だって自由にやりたい、という気持ちが爆発したのが今回だったのかもしれません。
まあ、振り切って行こうとしたら出浦さんにネバネバ弾爆発させられたわけですけれど。
ネチャネチャしたネバネバ液まみれになってるのを、奥さん二人に両側からいそいそと引剥してもらっている姿は、これはこれでなんというか両手に花でございますなあ、と思わないでもなかったのですがw


出浦さんに続き久々登場、家康公によって源次郎調略のために呼び出されたのは、
そう懐かしの真田信尹叔父上でありますよ。以前の段階で既にダンディが極まっていたのに、久々に登場した信尹叔父上と来たら御髪が白くなったロマンスグレーダンディになってしまって……かっこよすぎるじゃないか。
この頃、また徳川家の旗本として就職していた叔父上。甥っ子の調略を命じられて「あれは我ら兄弟と違って義に厚く……」って、弟の方は出浦さんと違って兄貴を全然美化してなくて、さすがというかなんというか。
加えてこの時、叔父上っては自身についてもさらっと昌幸と同類ですから、と家康公にしれっと言ってしまってるのが凄いのよねえ。
無駄、と言い切りながらもさらに家康公から源次郎を十万石の大名に、と報酬の釣り上げまでされて、では行ってまいりましょう、と承る叔父上。さてこの時、叔父上果たしてどれだけ調略を成功させるつもりがあったのか……。
なにげに、もし源次郎に直接会って彼の中に迷いのようなものがあったら、信尹叔父上なら見事に源次郎を落として可愛い甥っ子を十万石の大名に仕立て上げるくらいしてた気がするんですよね。
しかし、甥っ子にはそのつもりは一切見当たらず、だからこそ家康からの書状を手渡した時に
「……読まんでいい」
と不敵な笑みを浮かべながら小気味よく言ってのけてくれたと思うんですよねえ。このときの叔父上のかっこよさと来たら、もう濡れそう。このときの源次郎の信尹叔父上を見上げている時の目は、あの少年の頃の一番尊敬していた叔父をキラキラとした目で見ていた頃の、それと同じようで、本当に嬉しそうで。
自分のようにはなるな、言った叔父上の言葉を忠実に守って生きてきた源次郎ですけれど、でもやっぱり源次郎はこの叔父上のようになりたかったんだろうなあ、と思わせてくれる表情でした。

あと、信尹叔父上、真田本家を調略するなら信政が狙い目、なんだろうなあ。甥の子どもたちと会って即座に関係性を見抜いているあたり、調略のプロの腕前は一切衰えていないのが見て取れる。叔父上の手にかかったら真田本家、一発で崩壊しそう。
そんな叔父上が「調略、不首尾でした」とどこかドヤ顔で報告する様子がまたなんとも痛快で……。
いやこれ、真田の身内が源次郎と密会していた、という事実だけで家康としては十分であり、信尹叔父上もそれをわかった上で割り切っているのでしょうけれど。


有楽斎、思いっきり本多正純とつながっていましたね。ここまで直接つなぎを取っているとは思わなかった。というわけで、正純側の要請で大坂方の方針を和睦に進めようとする有楽斎。その言に簡単に乗ってしまう大蔵卿局。
ここであっさり説得されてしまう秀頼公がなあ……。ちゃうねん、源次郎が言っていたのは母親の言うことを聞くな、じゃなくて人の意見に影響されるな、ということやねん。
源次郎としては、ここで秀頼公を見切ったのかもしれないのだけれど、源次郎の傲慢さと拙速さは自分の思い通りにならないのなら、自分の言説を翻すのに躊躇いがないところなんだろうなあ。
大野修理の頼みがあったとはいえ、あれだけ秀頼に良いこと言っておきながら、彼の意見を翻させるために秀頼に働きかけるのを諦めて、茶々の方にアプローチするという、これ佞臣のやり口じゃね?
茶々に会いに行く源次郎を見送るきりの表情が、かなりきついものがあった気がするんですよね、あれ。

二人きりの密会。そこで茶々が語ったのは大坂城も豊臣家も戦もどうでもいい、自分が願うのは秀頼と一緒に過ごせればいいということだけ。願わくば、どこか遠くの小さな国で源次郎も一緒に三人で……。
これって、家康と茶々の考えている落とし所、決着点が実際は何も変わらなかった、ということを意味してるんですよね。そして、源次郎自身が春に語っていた現実的な最良の形とも重なっていた、と。その中に源次郎自身がどうする、というのはなかったにしろ。
そんな茶々の本心を聞きながら、なおも戦を続けるために、戦に勝つために、茶々に変節を強いる源次郎。これって、秀頼への裏切りであり、また茶々への裏切りでもあるんですよね……茶々はそんな源次郎のことを理解した上で、のことかもしれないけれど、それはそれで女の業だなあ。

信じていた源次郎に裏切られた秀頼の、あの信じられないとばかりに眼をうるうるさせた表情が、あまりにもピュアすぎて、胸が痛いです。
その傍らで、これは私が頼んだことなのです。左衛門佐は悪くありません、と必死に訴えている大野修理殿が、ちょっといい人で健気すぎやしませんか?

もうドロドロがえらいことになってしまっている豊臣上層部に対して、鬱憤を晴らそうとキャッキャ騒いでいる牢人五人衆プラス木村くんと団右衛門たちが本当に楽しそうで……ここ癒やしパートになってるなあw
団右衛門のキャラ、ほんと好きですわー。小手さんが演じる塙団右衛門のあの「塙団右衛門です」の発音が好きで好きで。
あと、悪い先輩たちにどんどん影響を受けてしまっている木村くんの将来が大変に心配です。このままもし大坂方が存続していたら、木村くんどんな武将に成長してしまっていたんだろう。
そして、大坂冬の陣最後の戦いでもあり、塙団右衛門の見せ場でもあった本町橋の夜戦。みんな戦がしたいからって大将格の牢人衆たちが、団右衛門の指揮下に入って大暴れってほんとにただ暴れたいだけじゃんかよw
ミサがありますからやりません、と帰っちゃう明石さんに、大名格の自分がなんで団右衛門の配下に云々と言い訳して脱出してさっさと源次郎にあいつら出撃するつもりだよ、と告げ口する長宗我部さん(笑
自分も一緒に行きます!! と、先輩たちの悪い遊びに思い切って参加しちゃう木村後輩w
長宗我部さんから聞いて止めるのかと思いきや、自分も鬱憤晴らしに夜襲にこっそり参加する源次郎。
こいつらほんとに……。

暴れまわった挙句に倒した相手に丁寧に「塙団右衛門です」と挨拶しながら、手作りの木札「塙団右衛門参上!!」を置いて回る団右衛門。
折れた槍の柄を鉄パイプみたいにやたらめったら振り回す後藤又兵衛。
どこの剣戟アクション映画だよ、というくらい二刀流で決めまくってる毛利勝永。
出浦さん仕込みなのか、刀を逆手の忍者風の握りで構えて疾風の足運びで立ち回り、旗を見つけるや思わず掴んで振り回す、旗を見ると振り回さざるをえない源次郎。

お祭りか、というくらいの大騒ぎで、イヤほんとに楽しそうですなあ、あんたら。


でも、冬の陣の最終局面はもうすぐそこに。ついに家康が首を長くして待っていたイギリス製の最新式カルバリン砲が到着。これ、射程6キロというとてつもない代物で、これを大坂城北の中洲に設置して城内に打ち込んだんですよね。射程は大坂城全域をすっぽりと覆うほどの広さで……これがあるだけで、源次郎の篭城論がどれほど脆いものだったかが露呈してしまったわけです。
まあ恐るべきは、このカルバリン砲を当時の南蛮船は何十門も積み込んでた、というところなんですけれど。

そして、ついに放たれた砲弾は大坂城天守の鯱鉾に偶然命中し、落下した鯱鉾が館の梁を突き破り、それが丁度偶然通りかかった茶々さま一行を巻き込んで、侍女二人を下敷きにしたのでありました。
あれほど恐れた人の死を、間近で眼にしてしまった茶々の、あの凄まじい形相。ここが竹内結子屈指の名演で、崩れた梁の下敷きになった侍女たちに思わず這い寄るように茶々が手を伸ばすのですが、これが侍女たちを助けようとしているのではなく、最初に浮かんでいた恐怖といった感情が一切消え失せて、死そのものに魅入られたかのような鬼気迫る壮絶な無表情になってて、それを腰にしがみついて止めようとするきりの「なりませぬ!!」という悲鳴じみた叫びとあいまって、凄いシーンになっていたのである。
まさに、運命の砲弾であったのでした。