信之兄ちゃん、稲の制止を振り切って上京することに。夫の決意に、ついに条件をつけながらも首を縦に振る
稲ですけれど、真田のお家大事というのは前提にしても、必ず生きて帰ってきてください、と眼を潤ませて訴えるあたりはこの人も正しく信之兄ちゃんの奥さんしてるんだよなあ。
旅立つ間際に、信之を見送るおこうがまた咳していたのが気になるところですけれど。稲もおこうも、これから史実だと5年くらいで亡くなっちゃうんだよなあ。
松姉ちゃんは最後まで明るく、弟が死ぬなんて考えていないのかわかっていても知らないふりをしているのか、源次郎のためにお土産を包んで、また信之にはお守りとして真田の象徴である六文銭を渡すのである……三途の川の渡し賃、この場面で渡しちゃっていいの?

大坂側の迎撃計画は、源次郎の秀頼出陣に寄る京都伏見城攻略案は退けられ、又兵衛と毛利勝永の天王寺ラインでの防衛に決定する。こうなると、選択肢ももうあったもんじゃないんだけれど。

一方の徳川方は、家康がこの期に及んで秀頼の助命を口にしたことで秀忠が激高。「父上は甘すぎる、豊臣の血は根絶やしにする!」と言い捨てて席を立ってしまう。恐ろしい男に育ったのう、と驚いたような呆れたような、でもどこか頼もしげに息子の背を見送る家康。秀忠初登場時の、息子に対する物足りなさに苛ついていた頃から比べると、やはり見違えるものがあったんだろうなあ。
でも、やっぱり家康はあれだけ滅ぼす滅ぼす、と口にしながらも内心は嫌だったのね。
大坂方からは、降伏勧告を蹴って手切れが申し渡され、もう結末は決まってしまったわけだけれど、それでも家康としては嫌だし罪悪感あるし、やらねばならないと割り切りながらも憂鬱だったのでしょう。
だからこそ、同じ時代を生きた最後の同胞である上杉景勝をわざわざ個人的に呼び出して、二人きりで酒を酌み交わすような真似をしてしまう。景勝の、後ろ暗い思いがあるのでしょうという容赦ない指摘に顔をしかめながらも、怒りはしないんですよね。そんでもって、景勝の口から源次郎の勇姿が語られるのを聞いて、真田は親子揃って、と吐き捨てながらも……どこか懐かしそうなんですよねえ。長い長い家康の人生の中で、彼に噛みつき自分の行路に立ちふさがり続けた真田親子。怒りがあり、嫌いでもあり、腹立たしく忌々しい存在ではあったけれど、今となってみると憎しみが湧くものではなく、家康にとっては自分と一緒に走り続けた並走者でもあったんだろうなあ。その最期に、いったい何を感じているのか。過ぎ去っていくものへの懐かしさと寂しさを噛みしめるような、家康の姿がなんだか胸にしみるのでした。

そして、4月29日。大野治房と塙団右衛門が樫井の浅野勢に攻めかかったことで夏の陣がついに開幕。
この戦いで先鋒を受け持った塙団右衛門は討ち死に。
あの愉快で騒々しいムードメーカーが、真っ先に潰えてしまうのである。

大坂城に運び込まれた塙団右衛門の亡骸を前に、茫洋とした表情で「いずれは皆も、この男の横に並ぶのですか?」と呟く茶々。
ああ、もうこの段階で茶々さまはもう半分現世から浮き上がってしまっていたのか。

そして、後藤又兵衛と木村重成が道明寺に向かうものの、本多正信の一筆書きのような鮮やかな謀略によって謀反の疑いをかけられた又兵衛は、焦りから指揮に乱れを生じてしまう。
このときの本多佐渡の謀略は、老いてさらに磨きをかけたような鮮やかさで。もう言葉もありませんでした。やっぱすげえわ、この人。

一方、もう一度源次郎に調略をかけるように命じられた真田信尹と合流して、源次郎に会いに行こうとする信之兄ちゃん。尾張を治めることになる徳川義直の陣に留め置かれた際に、そこで遭遇したのは……平野長泰。って、おっさん、なに当たり前の顔して陣に加わってんのさーー!! 兵糧取られちゃうのは仕方ないにしても、かっこ悪い、それはかっこ悪いよ!! あの懐かしいスルメ噛み姿がなんとも小憎たらしいッ!!
その時、吟味役として現れたのは尾張徳川家に使える室賀久太夫……って、室賀正武の息子だぁ!! すげえ、けっこう似てるッ。顔似てるよ!!
信尹たちが正式な家康の使者とわかって解放しようとしたものの、彼らの素性がかつて自分の父を討った真田の一族だと知って、思わず邪魔しようとした室賀息子を、信之が一喝する!!
「黙れ小童ァァァ!」
色んな名言が生まれた真田丸ですけれど、やはり最大の名言といえばこれだよなあ。
まさか、室賀さん亡き後もう一度これを聞けるとは。それも、散々言われまくった信之が、当の室賀の息子に向かって。

室賀息子を圧倒して、城に乗り込んだ信尹と信之。源次郎は、使者の中に兄の姿があることに呆気に取られるものの、嬉しかっただろうなあ、もう一度最後に兄に会えたというのは。
最初の時は調略するつもりもなかった信尹叔父上だけれど、今回ばかりはもう先はないだけに、出来るならば甥っ子を助けたい、と信濃一国を手土産に説得しようとするものの、信之は弟は死ぬ気ですから、と割って入る。
そう、兄は死ぬ気の弟を生かそうと、死なすまいと説得に来たのである。今度も、絶対に助けるから、死ぬな、生きろと。
でも、「それでまた十四年」とポツリと呟く源次郎が、辛い。あの九度山の生活はやっぱり源次郎にとって……。
もう一度、犬伏の約束を果たすのだ、と。父はもういない。でも、もう一度兄弟で酒を酌み交わすのだ、と。ならばここで酒を酌み交わしましょうという源次郎の誘いを蹴って、立ち去ろうとする信之兄に、たまらず源次郎は叫ぶのです。

「兄上と酒を酌み交わしとうございます! 兄上……」
「これは今生の別れではない!」

もう、これが最期なのだと覚悟している弟と、それを認めまいとする兄。これほどお互いを誰よりも理解し噛み合った、悲しいすれ違いがあるだろうか。
そして打ちひしがれる源次郎の肩をしっかりと掴み、「生きたいように生きればよい」と言い残して去っていく信尹叔父上。
この人は、本当にもう源次郎にとっての理想そのままだったんだろうなあ。

そして、道明寺合戦である。
大阪夏の陣って、この道明寺合戦の5月6日から実質3日間だけなんですよね。ついに、クライマックスに突入してしまった。

徳川から播磨35万石のオファーを受けた後藤又兵衛。信濃40万石のオファーを受けた真田幸村に対して、まったく打診がなくて、なんでだーっと荒れまくる毛利勝永が、なんか可愛いですッ。

道明寺合戦は、以前は霧に撒かれて真田・毛利勢らの後続の到着が遅れてしまい、孤立した後藤勢が壊滅させられた、という説が本命だったようですけれど、最近はその辺否定されてるみたいですねえ。
ともかく、後続が戦線に参加する前に戦闘が始まり、後藤又兵衛は討ち死にしてしまった、と。
同時に、別戦線の八尾・若江でも長宗我部勢が藤堂勢を打ち払ったものの、木村勢が木村重成の討ち死にとともに壊滅したことで撤退中に追撃をうけて大損害を受ける。
作中ではここで戦場から逃亡することになりますが、一応史実では翌日まで残ってたか。

大坂方の作戦がすべて筒抜けだったことで、織田有楽斎の他にも間者が居たことがようやく発覚。そう、これまで作戦会議はすべて台所で殺っていたわけだけれど……なんで台所なんかで大事な作戦会議や密談してたんだろうなあ、ほんと。
間者は大坂城の台所を預かる大角与左衛門。その料理長とあからさまに忍者っぽい黒装束と密会していた場面を目撃してしまった上田から作兵衛に連れてこられた与八は、口封じに殺されてしまうのでした。戦は嫌だ嫌だとずっと嫌がっていた彼が、こんな死に方をしてしまうとはなあ。

後藤勢が壊滅した後、襲い掛かってきた伊達勢とぶつかる真田勢。伊達の黒と、真田の赤が相まみえるこの見栄えの良さ。伊達政宗、今まであんまりカッコイイ姿見せてくれなかったけれど、ここに来てようやく伊達政宗ッ! という張りを見せてくれましたねえ。鎧姿、良いわぁ。

戦は負け戦。城の中は負傷者のうめき声が響き渡り、落城が間近に迫っていることが肌で伝わってきます。
後藤又兵衛討ち死に、の報を聞いた時の秀頼公のあの表情。この時になって、ようやく、ようやく滅びの実感が得られたのか。

源次郎も、家族の脱出を進め、正室の春と娘阿梅、次男大八を伊達政宗の元に避難させるのでした。実際は意図して伊達のもとに行ったわけではなく、落城の際に乱取りで阿梅が伊達に捕まって、その縁が回り回って家族まとめて庇護することになるみたいですけれど。
梅は片倉重長の後妻となり、大八も伊達家に仕えることとなり、源次郎の血筋もこうして残ることになるんですなあ。

そしてきりである。てっきり、春を守って一緒に脱出するのかと思っていたのですが……。彼女に与えられた役目は、千姫を徳川の陣まで送り届けること。どえらい重要な役目をまた。
でも、その後は好きにしろ、沼田に帰れ、と突き放す源次郎に。戻ってきます、最期まで付き合いますよ、とどこか投げやりに言い放つきり。
「源次郎様のいない世の中にいてもつまらないから」
ものすげえ殺し文句きた。

ついに、ついに源次郎陥落である。思わずきりを抱きしめる源次郎。きりの口から思わず飛び出た言葉が

「遅い」

いやもう本当に遅いよ!! どんだけかかるんだよ。丸一年かかったじゃないか。ってか、最終回一話前って。キスで唇を塞がれながらも、もごもごと十年前にしてくださいよ、あの頃が一番キレイだったのに、とか思わず愚痴っちゃうきりが最後の最後まできりらしくて、あんた大河史上最高のヒロインだわ。
果たして、序盤のあの無神経で鬱陶しくて消えてなくなれと非難轟々だったヒロインが、ここまで株をあげると誰が思ったか。もう一人の主人公と言わんばかりに、常に源次郎とともに同じ場所で生き、同じ場所を見て、同じ時代を駆け抜けていった、相棒のようなヒロインが居ただろうか。

ここで入るナレーションがまたいいんですよね。高梨内記の娘、と語られ出した時にどこか現実の人ともフィクションのキャラとも付かない場所に居たきりが、フッと史実の中の人として源次郎の懐の中に降り立つのである。

「高梨内記の娘に関しては、さまざまな言い伝えがある。 真偽はともかく一つだけ確かなのは、信繁に関わった女性たちの中で最も長く傍にいたのは、彼女だということである。」