ノーブルウィッチーズ5 第506統合戦闘航空団 激闘! (角川スニーカー文庫)

【ノーブルウィッチーズ 5.第506統合戦闘航空団 激闘!】 南房秀久/ 島田フミカネ 角川スニーカー文庫

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オペレーション・マルス発令! ロマーニャ奪還に向け、激闘の空へ!!

将軍暗殺阻止の一件から活動停止となったA部隊は、出撃こそできないものの隊としての団結を日々強めていた。
そんな中、ネウロイの巣を掃討すべく501JFWと504JFWへオペレーション・マルスが発令される。
「これは私の国を取り戻す戦いなんだ・・・」
アドリアーナは単機ヴェネツィアへと飛ぶため活動停止中のA部隊に別れを告げて……!?

ちょっぴり守銭奴な魔女が煙焔を突き抜ける!異色の部隊、激闘が幕を開ける第5弾!
今回も肝心のネウロイとはあんまり戦わないのだけれど、ストパンワールドにおけるスパイアクションものというジャンルで捉えたら、これはこれでその方向性において充実してきたような感触が伺える。そもそもからして、国際政治の力学の結果誕生している統合戦闘航空団の中でも、この506は特にその誕生からして政治的な意味合いが強い部隊であったためか、より深く政治的な局面に踏み込んでいってるんですよね。その点から鑑みると、隊長のロザリー・ド・エムリコート・ド・グリュンネ少佐とB部隊のジーナ・プレディ中佐のクレバーな政治力と諜報戦能力は他の統合戦闘団の幹部クラスと比べてもちょっと図抜けてるんですよね。ロザリーさんは、ホワイトホールでも悠々とやってけそうな腹黒貴族系の政治スキルの持ち主だし、ジーナ中佐ときたらあれ諜報機関でスパイマスターやってても不思議じゃないタレントなんですよね。
国際政治の駆け引きのみならず、王党派というガリアの暗部に深く関わる政治結社との暗闘にその成立過程と立場上巻き込まれることになる506JFWを影に日向に守り続けているのは、明らかにこの二人の功績なんですよね。特にロザリー隊長は実質あがりを迎えた上にA部隊の活動停止に託つけて、名誉隊長として実権を半ば手放したことから、自由に動き回れる余裕を得て何気により辣腕を振るい出しているし。
プリン姫は那佳と関わるようになってからと、これまでの力押しではどうにもならない事件や仲間たちが理不尽に傷つけられる出来事を経験してきた過程から、随分メンタルも成長してB部隊ともある程度穏当にやれるようになったし、こと戦闘面での隊長としてはみんなを率いるに十分な態勢を整えつつあるのだけれど、やっぱり軍内政治のみならず政治家や暗部との政争を出来るタイプじゃないんですよね。貴族としてはこの娘は真っ当すぎる。だからこそ、ロザリーにはこれからも庇護してもらわないとちっとマズいんですよねえ。ジーナ隊長も実力と貫目と手練手管は十分以上にあるのは間違いないんだけれど、合衆国人で欧州の軍上層部や政治家に顔が利くとは言えないだけに、他の統合戦闘団ならともかく貴族ばかり集められたが故にそれに関する面倒事が持ち込まれがちな506を率いるのはちと難しいんだよなあ。
ともあれ、ロザリー隊長とジーナ隊長が諜報戦で奮闘はしてくれているものの、すべての問題を振り払えるわけではなく、幾つもの不穏な出来事やヤバイ事件が舞い込んできて、こういうケースが続くと部隊の雰囲気そのものが暗くなっちゃいそうなものなのだけれど、そんな空気を振り払って逆に皆の仲を深める要として躍動してるのが那佳ちゃんなんですよねえ。この娘の人からの好かれやすさはやはり尋常ではない。あれ、実家の本家の方ももうちょっとぞんざいな扱いを受けているのかと思ったら、礼儀作法を仕込まれるために滞在している間に、本家の人たちみんな陥落させちゃってたのね。本家の大御所や娘さんのみならず、現当主の若旦那まで誑し込んでいたとは。欧州行きの見送りの際に一番ガン泣きしてたのが、両親ではなくて初対面の時あれだけ酷い扱いであしらおうとしていた当主さんだったという話には笑ってしまった。
那佳ちゃん、いつも金なくて守銭奴極まってるみたいな態度だけれど、実際の所本家の方は那佳ちゃんのためなら幾らでも支援するぜ、という姿勢だったんですねえ。那佳ちゃん、あれで本家や実家にはろくにおねだりも要求もしていないようで。まあ、稼いだお金の殆どを実家に送ってるくらいだしなあ。

時系列的には、ちょうどストライクウィッチーズの二期クライマックス。オペレーションマルスでロマーニャに出来たネウロイの巣に、ネウロイ化の改造手術を施した大和を突入させるぜ、というあの最終作戦の頃だったわけで。
あれ、ロマーニャ奪還という大舞台にもかかわらず、肝心のロマーニャのウィッチが全く参戦していなかったのはどうにも違和感があっただけに、再建途中の504が道中支援、アドリアーナがずっと助攻で加わっていた、というところはむしろ納得だった。506が関与していなかったのはA部隊が活動停止を喰らっていたから、というのならまあ表向きは参加しないのも仕方ないわなあ。こっそり頑張っていたわけだけれど。
それぞれのウィッチが政治的な理由で集められた506だけれど、今となってはちゃんと所属するウィッチたちの帰る我が家になっているのは、なんとも嬉しい話じゃないですか。
ネウロイを打ち払って人類領域を取り返しても、その侵攻によって失われたものはもう戻らない。故郷を奪還し、でも疲れ果てて戻ったかつての自分の屋敷は空っぽの温かみの失われた人の居ない空間で、もう帰る場所にはなってくれない。迷子の子供のように途方に暮れて立ち尽くした彼女が思い描いた帰るべき我が家、そんな彼女の前に現れて、手を差し伸べてくれる新たにできた家族ともいうべき仲間たち。
そうなんだよねえ。統合戦闘航空団の物語は、ただ戦うために集った部隊の話ではなく、もっと親身な距離感へと至るホームとファミリーの物語なのよねえ。ノーブルウィッチーズも、きっちりそんな方向へと収束してきた感がある。

シリーズ感想