我が驍勇にふるえよ天地3 〜アレクシス帝国興隆記〜 (GA文庫)

【我が驍勇にふるえよ天地3 〜アレクシス帝国興隆記〜】 あわむら赤光/卵の黄身 GA文庫

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クロード帝国各地で勃発した、未曽有の大叛乱を征伐したレオナート。その武功により、広大なるディンクウッド州を下賜され、彼の常勝軍とともに州都レームへ入城を果たす。季節は冬。レオナートは在りし日の伯母の姿を思い浮かべ、最良の領主たらんとする。大州を完全に掌握し、憎きアドモフ帝国に対抗すべく着実に力を蓄える日々。しかし、春を待たずして、軍靴の音が北より押し寄せる。アドモフ、来襲―!
「天におわすロザリア様よ、ご照覧あれ―全軍突撃!!」
魔法なし!痛快にして本格なるファンタジー戦記、これぞ“吸血皇子”の伝説伝承たる激震の第3弾!!

うわぁ、第三王子のやり口がえげつないなんてもんじゃないなあ。攻略したディンクウッド州がレオナートに下賜されるのを見越して、仕える人材は根絶やしにした挙句にわざと奸臣の類が残るような降伏条件を出したり、とある意味人材の焦土戦術というべき嫌がらせなんですよね。同じ国内でそこまでするかー、と思うんだけれど、アドモフ帝国という外敵が居ても、クロード帝国内ももはや実態は群雄割拠状態という認識なのか。
本来ならここまで広大な領地から人材を消し去られるとどうしようもなくなるものだけれど、同時にしがらみもなくなっているということでもあり、大胆な政策を打ち出せるということでもある。いや、既得権益だけは見事に残してくれているので、本来ならもっと政務に滞りが出てもおかしくはないはずなんだけれど、レオナートの場合出自が根無し草ではなく仮にも皇族であると同時に文武に多くの人材を抱えていたロザリアの財産をそのまま受け継いでいたからこそ、対処ができたんだろうけれど……ここまで文官側にも綺羅星を抱えていたとはなあ。辣腕の法曹関係者と裏社会のドンという秩序の裏表を担える柱を抱えているとか、領地のない根無し草だった人物に揃えられるもんじゃないですしねえ。
その意味では、何も持たないゼロからの出発ではなく、レオナート一人の物語というよりもレオナートを代表にして後継者とするロザリアの薫陶を受けた遺児たちの復仇戦とも言えるのか。
今回の新たな「吸血皇子」のフォークロアの誕生となるエピソードもまた、遺されていく者の想いを一緒に連れていく、というものでありましたし。過去に強くこだわりながら、その過去に引きずられずに先へ先へと血風切り拓いて進んでいく、これはそういう物語なのだ。
あの人が何もなし遂げられないまま無念のうちに死んでいく展開は正直かなりショックだったんですよね。彼こそは、正負どちらの面に転んでももっと劇的な展開の末の結末だと思っていただけに、こんな中途半端な形で無情に、無慈悲に終わってしまうとは予想だにしていなかっただけに。
でも、だからこそレオナートがその無念を背負っていく、その想いを連れて行くという姿が、吸血皇子レオナートという人物の特別な伝承として成立することになったのですね。これ以降、吸血王子の名の意味は変わってくるはずですし、レオナートが率いる軍勢の持つ空気もまたちょっと変わってきかねないのですけれど、際限なく
重荷を背負い続ける宿命を得たレオナートが果たして潰されずに行けるものか。潰れたら、闇落ちしそうな属性なんだよね、吸血皇子って。シェーラのメンタルケアがこれまで以上に重要になってくるんじゃないだろうか。ある意味、新たなレオナートのフォークロアに呑まれないのって、シェーラくらいだろうし。親友のアランですら、これに関しては掣肘を加える側にはならないだろうし。
しかし、アドモフ帝国側の軍制は凄まじいなあ。この時代としてはあり得ないレベルなんですよね。精鋭のみならず、万単位の軍勢の一兵卒までここまで訓練が行き届いてるって。
コストどれだけ掛かってるんだろう。
本来ならこれほどの集団連携戦術……集の力に、個の力は抗しきれずに敗退するというのが歴史の流れなのだけれど、本作は敢えてその逆を行くのだから堪らない。アドモフ帝国側の司令官ナイヘバッハは自己評価の低さとは裏腹に、名将と呼んで過言ではない相手だっただけに、出来れば陰謀の絡まない真っ向勝負で戦えればと思える人だっただけに、あの参謀若造五人衆には怒りがたまるじゃないですか。
アドモフ帝国側の宿敵となるだろうレイヴァーン、これは好敵手というよりも仇敵として立ち塞がってきそうだ。

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