俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する (ファミ通文庫)

【俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する】 藍月要/閏月戈 ファミ通文庫

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高等専門学校(高専)に通う雨ケ谷幹人は、学校の友人11人と中学生の妹と共になぜか異世界へ飛ばされた!そんな彼らがまずやったのは、物理法則の確認。摩擦、重力、大気構成―自分たちの知識を駆使して周辺を調べあげるメンバー。そして始まるサバイバル生活を想像して落胆するのだが…。そんな中で見つけたのは、ある魔道具。それが彼らの運命を大きく変えていく―。のちに魔法技術の礎を築きあげ“賢人”と称された英雄たちの物語が、今始まる!
そうなんだよなあ。異世界って別の宇宙の世界なの? 同じ宇宙の他の惑星とはまた違うの? という疑問は異世界モノを見続けているうちに常にこびりついてたんですよね。
異世界へと時空間だか次元間だか移動することと、何万光年も離れた惑星へと空間跳躍してしまうこととどちらが難しいんだろう、とかね。まあここが本当に異世界なのか、それとも別の惑星なのかという問題についてはあっさりと流されてしまうのだけれど。
あっさり、というとせっかく物理法則を確認するのに地球とほぼ物理法則が変わらない、というのは折角スポットを当てているのにちょっと勿体なかった気がする。むしろ、所々法則が異なっていたほうがそこから派生するトラブルがいいネタになっただろうに、それもあっさり流されてしまったなあ。
まあ、本作の主人公たちは物理学などの学者じゃなくて、あくまで高専の技術者たちなのでタイトルとは裏腹にそっち方面専門じゃないから仕方ないのか。
というわけで、異世界に飛ばされてしまった高専生たち。高専というと、一般人の認識は「ああ、ロボコンでロボット作る人たち」という認識に集約されてしまうのだけれど、まあロボット作る人達はやっぱり一部なんですよね。それでも、ここで登場する人たちは高専生としてのアピールらしくちゃんとロボコンやってる人たちなのですけれど。
ただ、折角十一人もの様々な分野のスペシャリストが集まったというのに、その中でちゃんと話に絡んでくるのって主人公と部長とヒロインの天才プログラマーの他2,3人だけで他の人達は名前すら明らかにならずに結構扱いぞんざいなんですよね。数少ない女性キャラにしても、化学と建築が専門分野ということだけ明示されただけで、中盤くらいまで名前も表示してもらえない始末で。
スポットを当てるキャラクターを絞って描きたいというのと、実際に物を作り上げるのにはそれなりの人数が必要だろうという実情がぶつかってのメインと脇の扱いのこの差なんだろうけれど、若干不器用さが目立ってしまったかな、と思う。
所詮技術者でしかない彼らが、冒険者として前線で戦うのは難しいという現実に直面しつつ、運良く保護してもらった元貴族の冒険者の庇護のもとに、魔道具を嬉々として分解して解析していく、技術系変態集団の普通の転移者のメンタリティとは異なるこの技術バカの理屈優先の馬鹿騒ぎは、見てるだけでも面白かった。一応一般人枠の妹ちゃんがちゃんとアクセントになってるんですよね。異世界側の人たちにとっては、高専生たちは異世界人であって彼らの変人っぷりの根拠がよくわかっていない以上、ツッコミや反応要員としては力をフルに発揮できませんからなあ。
「電流帰還バイアス回路ごっこしようぜ! 俺、安定抵抗な!」にはなんというか、笑ってしまうしかなかった。工学系の分野出身の人には色々とあるあるネタが詰まってるんだろうな。