気づけば鎧になって異世界ライフ (電撃文庫)

【気づけば鎧になって異世界ライフ】 猪野志士/吉武 電撃文庫

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異世界に転生したら、 なぜか鎧になっていた……ってオイッ!?

気づいたら見知らぬ世界にいた俺。どこだ、ここ? それに身体が動かない。頭や腕はおろか、指や目蓋さえピクリともしない。おいおい、どうなってんだよ~!
困惑していたら、近くから女の子の声が。なんとか声を絞り出して話しかけてみると、彼女は「ええっ!」と驚く。彼女がスッと差し出した手鏡を見ると、鎧姿の俺が映っている。彼女に鎧のバイザーを開いてもらったら……中身がない……空っぽだ……。
えっ! 俺って、鎧になっちゃった!?
異世界で鎧になった少年の超非日常生活。さて、どうなることやら──。
あれ? 意外とハードモードな世界観?
異世界転生に限らず、同じ題材に作品が集中してくると他の作品との差別化を図るために多種多様の派生が誕生してくるのは常のこと。人間以外のモンスターに転生してしまうのなんてもう珍しくもなく、昨今自動販売機や温泉にまでなってしまう主人公が居るのを思えば、剣や鎧というのは最早突飛でもなんでもないのでしょう。要は結局、物語が面白いかどうかに勝負は掛かってくるわけだ。そこに、人間以外の存在に転生してしまったが故の展開の妙であったり、ストーリーテリングの重要な鍵となる要素があれば尚良。
そういう観点から見ると、本作は良く丁寧に仕上げているんじゃないかと思うんですよね。鎧になって女の子に着込まれる、なんてどこまでも頭の緩いエロコメディにしようと思えば簡単な設定なのだけれど、意外と硬派な展開になっていますし。いや、エロコメディを極めようとするのならそれはそれでありではあると思うんですけどね。ひたすらエロくドタバタなコメディだって面白く書けるのなら全然いいのですけれど、むしろそういう頭の悪い展開って面白く書くの何気に難易度高いんだよなあ。
むしろ、真面目にストーリー作るほうがやりやすくすらあるんじゃなかろうか。故に、というわけでもないんだろうけれど、本作は「鎧になってしまった」という設定をなかなかうまく使っていると同時に、ある一定の条件に達すると人間形態に戻ってしまう、という無機物転生モノとしては危ない橋となる設定も、彼の出自と置かれた境遇に則して上手く捏ね繰り回しているんですよね。個人的には、鎧になったというならではの「遊び」がもうちっと欲しかったと思う所なのですけれど、鎧のアスヤは熱血であるが故にかわりとエロスに関しては理性に死守を要求するタイプですし、エルもこう「男の子を着ている」という意識があんまりないみたいで……って、こう思ってしまうということはやはりエロコメを期待していたのだろうか、自分。
アスヤやエルが置かれている境遇って、何気にダークな側面が非常に強くて、ただ単に鎧と鎧を着る者という一心同体の関係以上に、一蓮托生・運命共同体、或いは一緒に諸共堕ちていく可能性を持った関係性が秘められていて、好みではあるんですけどね。フィリオがいい具合にラブコメとしても人間関係を掻き回してくれて、ラストには人間関係的にもパーティーの能力的にも三人一組な雰囲気も作れててよかったんじゃないでしょうか。