キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 (ファンタジア文庫)

【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦】 細音啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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高度な科学力を有する帝国と、「魔女の国」と畏怖されるネビュリス皇庁。永く続く二国の戦場で、少年と少女は出会う。史上最年少で帝国の最高戦力となった剣士―イスカ。皇庁最強とうたわれる氷の魔女姫―アリスリーゼ。
「わたしを捕えられれば、キミの夢も叶うかもしれないわ」
「そっちこそ僕を倒せばいい。君の世界統一の前進になる」
宿敵として殺し合う二人。しかし、少年は少女の美しさと高潔さに心奪われ、少女は少年の強さと生き方に惹かれていく。共に歩むことは許されず、互いを倒す以外に道はなくとも―。敵対する少年少女が世界を革新するヒロイックファンタジー!
殺意が足りない。
てのは冗談にしても、殺し合っているというには二人とも戦場で戦っていてもそれほど戦意を漲らせ、火花飛び散らせている、という風ではないんですよね。敵同士でありながら恋が芽生える、という展開はものすごく大好物なのですけれど、敵同士故の葛藤、愛しさ余って憎さ百倍という剥き出しの感情のぶつかり合い、強敵故の相手の強さへの興奮、というこう味方同士・友達同士では出来ない本気のぶつかり合いというものの研磨によって、純愛が磨き抜かれていくところが魅力的というものが多いのですけれど、そこの熱量がちと足らないかなあ、と。
二人とも、戦う目的にいささか迫真性が足らない、というのもあるんですよね。アリスの方は立場から与えられた目的を自分の目的に定めているにすぎないし、イスカの方ははっきりとした目標があるもののそれを叶えるための過程がふんわりとしすぎていて、しかもその行動で目的が叶うのかというと実のところ本人も確信があるわけではなく、お互いにあんまり切羽詰った感がないんですよね。なので、初戦闘からお互いに興味を抱く流れもちょっと柔らかすぎて、芽生える興味・恋心というものもふんわりとしていて、情熱的な観点からするとやや物足りなかった。
それに、即座に中立都市で再会してしまうというのも、お互いの素顔を知るという展開はともかくとして普通にお互いの正体を認識しながら普通に仲良くなっちゃってるんですよね。いやいいんですけど。二人の人柄からして、縁があれば仲良くなってしまうのも仕方ないんですけれど、これだけ仲良くなってしまったらもう本気で戦ったり殺し合ったりなんて出来ないでしょうに。実際、おおかた共闘路線で話は進んでしまいますし。
いわるゆ敵味方に分かれた宿敵同士のボーイミーツガールとしては、ちょっと歯ごたえが足りなかったかなあ、と。対比的な会話の応酬も、なんかとってつけたようでしたし。結局、あれやこれやと共闘する流れ続きそうだしなあ。かと言って今更本気で戦わないといけない、なんて展開も強いられたものとして痛快感のあるもの、決着に手に汗握るもの、にあんまりなりそうもないし。
そのへん、現状の認識を見事にひっくり返してくれるなら嬉しいのですけれど。

細音啓作品感想