世界最強の人見知りと魔物が消えそうな黄昏迷宮1. 冒険者世界も不景気です (MF文庫J)

【世界最強の人見知りと魔物が消えそうな黄昏迷宮 1.冒険者世界も不景気です】 葉村哲/鳴瀬ひろふみ MF文庫J

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迷宮の魔物を狩り、資源を得ることで発展した『冒険者の国』ローゼンガルド帝国。
しかし、安価で手軽な蘇生魔法の開発、Lvに応じた適切な狩り場案内。効率的な迷宮攻略は冒険者を激増させ、魔物を激減させた。魔物が枯渇すれば経済的破綻は間違いない。この危機に1人の新米騎士と3人の人間的にはダメすぎる天才が集められた!
「ほんっとうに、このPT、なんで、こんなひとばっかりなんですかあああああ!」
新米騎士・ティルムは、冒険者ギルド、商人組合、神殿連盟を代表する一方で人としては問題しかない3人の天才達をまとめあげ『人工迷宮計画』を成功させることができるのか?
これは世界の危機に立ち向かうPTの、ダンジョンと日常の物語である。
今回は破滅属性を持っている人が居なさそう。ということで葉村作品では珍しいを通り越して実は初めてなんじゃないか、というくらいにダーク要素のないコメディ作品でした。
……いや、帝国が経済破綻めがけて一直線、という社会的に破滅待ったなしな状況ではあるんですけどね! 石油埋蔵量の枯渇カウントダウンはじまりました産油国並のピンチである。いや、何気に燃料から生活用品から食料供給まですべての資源を迷宮からの供給によって賄っていることを考えると、本気で深刻な国情なんですよね。
すでに現段階で枯渇は目に見えて顕著になってきていて、実際に冒険者の収入は右肩下がりで国の経済活動そのものが滑落していっている状況なのだから、ある意味魔王軍が攻めてきた、というよりもヤバい世界の危機なのである。
コメディしとる場合やないんやんでぇ。
しかし、危機が迫れば迫るほど組織間の協力よりも、主導権争いや責任回避、権益保持のための争いが激化するのも常なることであり、そんな組織間のパワーゲームの結果、大変優秀であるが失っても問題ないどころか所属組織としてもわりとアリ、みたいな問題児が抽出され、協力パーティーを結成させられたのが件の主人公パーティーなのである。
幸いなのは、問題児揃いであるもののパーティーの仲は普通によろしいこと。あと、帝国から派遣されたティムルが、ガチお母さん属性でよくこの問題しか無い、特に性格面で問題しか無いメンバーをバッチシまとめてることに成功している点でしょう。ティムルお母さん、凄い、えらい、つおい。
いやでも、マジでティムルお母さんフォロー上手いんですよね。貧乏くじ引かされてあっちゃこっちゃで悲鳴あげ、絶叫し、怒声をあげたり泣き入れたりはするものの、振り回されているという印象は欠片もなく、癖がありすぎる三人のメンバー、超人見知り冒険者のセージに毒舌聖女アルナリア、マリッジバーサーカーな冒険商人ククリカという大残念会な面々を、うまいことコントロールしているし、ティムルだけが割を喰う、という下手な立ち回りもしていないですし。まあ酷い目に遭うときは、誰か一人じゃなくてみんなまとめて喰らっているので、ティムルが最初に嘆いていたみたいな貧乏くじ引かされた、という感じではないのである。いやもう、苦労していらっしゃるのは大変よくわかるのですが。
でもこれはもう、適材適所を見抜いた王女様の慧眼であろう。慧眼っつーか、この王女様登場シーンほぼ土下座しかしていない変人なのですけれど。普通にしているよりも土下座姿勢している方が場面長いんじゃなかろうか。土下座とはある意味交渉における必殺技なのだけれど、この姫様開幕ブッパでカマしてくるから太刀打ちできんなw

ダンジョンを攻略するのでも、敵モンスターを倒していくのでもなく、交渉したり捕獲したり、とあれこれ試行錯誤をしながらダンジョンの中のモンスターを、人工迷宮の方へ移動・移住させていくティムルたち。この力任せじゃない試行錯誤が、ドタバタと何度も失敗したりトラブルに見舞われながらもワイワイと賑やかに進行していく様子が、また実に楽しいのだ。今回、普段よりもさらに掛け合いキレキレなんじゃないでしょうか。癖者揃いの四人が、なんだかんだと意気投合して仲良くなっていくのも見ていてホカホカしますし、自分葉村さんのポンコツなノリの中に潜んだ破滅設定とかもうゾクゾクするほど大好物なのですけれど、真っ向からのコメディもこれ文句なしに面白かったです。
多分、この作者さんの言葉や文章の転がし方自体が好きなんだろうなあ、と改めて実感した次第。
いやもうこのパーティー、凄い好きになってしまったので是非是非ガンガン続いてほしいです。エピローグで決定したパーティー名にはさすがに吹いたww

葉村哲作品感想