【天使と鴉のプレセピオ 人狼×討伐のメソッド １】 斜守モル／マナカッコワライ MF文庫J
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“人狼”、彼らは一年間に一人、人間を喰らわなくては、その命を保てない。カナガワ3区の新人討伐官・連野壮真は、人に化けて人を喰らう人狼を討伐するため、自らを天使と名乗る同僚の討伐官・篠崎樫乃と任務に励んでいる。共に両親を人狼の手によって失った二人。だが、二人は初めての囮捜査で偶然にも、樫乃の両親の仇である、遺体にV字の傷跡を残す・侵才の人狼“VOLF”の犯行の痕跡を発見する。しかし、樫乃が人狼の正体を見破ることができる“暴きの目”を発現させてしまったことで、二人の運命は大きく変わってゆくこととなり―!?第12回MF文庫J新人賞受賞、鮮烈の小説デビュー作。これは―決して暴いてはならない真実の物語。
うわぁ、こう来たのか。中盤まで、射京さんもなかなか合流しないし展開的にも停滞していて、台詞も地の文もぎこちない固さがあったからかやや退屈に思いながら読み進めていたのですが、途中からの大どんでん返しにおおおっ、と引っ張り込まれました。
これは全然予想だにしていなかったので、思いっきり不意打ちだった。
ただ、得体の知れない妖しさをまとっていた射京さんが、ここからある意味「普通」になってしまったのが残念だったんですよね。主人公の一人としても、物語の牽引者としても存在感が足りていなかった気がする。あれだけ渦中にありながら、なんだかんだと傍観者的な立ち位置に振り分けられてしまった感も。
一方で、破滅的な熱情に冒された壮真くんと樫乃の関係。どこか暖かなひだまりのような関係に見えたそれが、一枚幕を引き剥がしてみれば凄まじいまでの熱量が渦巻く、単純に割り切れない複雑な思いが入り混じったものであることが明らかになった途端に、物語そのものがヒートアップしていくのだけれど、火がつくその前の穏やかでありながら掛け替えのない二人の関係を、もうちょっと楔を打つかのように深く打ち込めていたら、後々の展開ももうちょっと衝撃的だったのかもしれないなあ、とここにも足りなさを感じてしまいました。
ある種の相互依存に近い比翼の関係を伺わせる危うさはヒタヒタと感じられてはいたのですが。
物語の命題となる部分、人間を喰らうという行為に込められた形に出来ない愛の在り方や、守るという想いを貫く為の拠り所となる人間と人間以外の存在の価値観の境界線。壮真くんと樫乃の関係をメインに据えて、描きたいものをガンガンとぶつけてくるスタイルは、荒っぽいながらも一点突破の様相があって物語の造形としてはかなり好ましいものだったのですが、その芯となる部分以外のところがあれこれと粗が多すぎるのも事実。そして、キャラクターの魅せ方や語り口の滑らかさなどにもぎこちなさや足りなさが目立っていて、心に訴えかけられる熱を感じる作品ではあっても、単純に話が面白いかというとうーん、と唸ってしまう作品でもありました。
それでも、新人作品としてこの痛ましくも切々とした想いの果てを描けるのは、得難いものがあるんですよね。
次やその次を期待したくなる作品でもありました。
Ａｍａｚｏｎ
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