幼い女神はかく語りき (講談社ラノベ文庫)

【幼い女神はかく語りき】 暇奈椿/夕薙 講談社ラノベ文庫

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現代の日本、燈京―アメリカから訪れたインタビュアーを前に、幼い女神はかく語る。「それじゃあ、彼の話をしましょう―」時は古代、空白の四世紀―未だ神話が綴られる神秘と幻想の時代。この国のはじまりを築いた、はじまりの“士”の話。―邪馬台の侵略、異国の神々、異形のモノノケ、“化外”の民。真人と常夜。ただの人間だった少年と、無力な女神だった少女との出会いが、最新にして最古の誓約を結び奉る―!!アニメ化された大人気シリーズ『クロックワーク・プラネット』の暇奈椿が紡ぐ、過去と現在が交錯する新たなる創世ファンタジー!

神代の黄昏時、神々の時代が終わりを迎えようという時、それでも神の存在は隔絶していて、人間はそれに付き従うばかりだった頃に、神々の血を引く英雄ではなくあくまでただの人間として、「人の強さ」を証明しようとした男の戦いが、結果として現代においてなお本邦のみが物質文明の中に神秘を内包した神話と地続きの国になっている、というのは面白い話である。
他の外国がみな、人間の世界になっているのに日本だけが、神と魔と魑魅魍魎妖怪変化と人間が入り混じった怪異にして神威の国になってるんですよね。まあこの日本を現代に至るまでの歴史に組み込むのは難渋すると思うのですけれど。海外が日本の国情を正確に把握できていない、というのもよくわからない原理ですし。認識阻害でも掛かってるんだろうか。
ともあれ、神が威を奮った他所は神々が滅び去って人の世界になったのに、人たる英雄である真人が女神である常夜や鬼であるマウラたち人外を飲み込み巻き込んで、その上でたった一人の強さではなく、「人の強さ」とは依存ではない支え合う力、弱さもまた力だという答えのたどり着いた結果が、神も妖も幻想も現実もすべてを丸っとひっくるめた世界へと繋がる道だった、というのは興味深いなあ。はっきりと具体的に書いてあるわけじゃないけれど。
北欧神話のヴァルキリーまで出てきた時はびっくりしたけれど、このごった煮感はむしろ好きなんですよね。神仏習合や他の地域の神話体系を自分の地域の神話に取り込む、外の神様にこっちの名前をつけて同体にしてしまう、というのはよくあることなので。マリア菩薩みたいなものか。
そうでなくても、神話というのはそれぞれ隔絶しているのではなく、案外距離が離れた地域同士でも地続きであるので、違和感というのはないんですよね。それよりも、他の地域では神代が次々と消えていき、それでも現世に残ってしまった神々の生き残りがはるばるこの極東の地まで流れてきてしまった、というシチュエーションはむしろ世界の大きさを感じられて、ワクワクさせられるじゃないですか。同時に、各地の神話体系が黄昏を迎えているという事実そのものに寂寥を感じさせられるわけでもあります。かのヴァルキリーの出自からして、北欧神話の最盛期の向こう側ですもんねえ。
でも、そんな終わりを迎えつつ在る存在が、この極東の地で生き残るために足掻いている。それは、元々この地に居た土着の女神でありながら、外夷によって追いやられて彼女の民もろとも滅びを迎えつつ在る常夜も然り、世界中でその製鉄と鍛鉄の腕を持って名を知らしめながら、今この極東の地で末路を迎えつつ在る鬼の一族、ドヴェルグ、ドワーフと呼ばれた民の末裔マウラもまた然り。
だからと言って、神々の時代が終わって代わりに人間に拠る人間のための輝かしい時代が幕開けようとしている、という雰囲気は微塵もなくて、むしろ人間もまた神々の庇護のもとで翻弄され無力に踏み躙られ、或いは威を借りて暴れまわり、と新たな時代を担うような輝きを感じさせるものではなかったのであります。
そんな中で、そんな何もかもが黄昏を迎えつつ在る世界の中で、果たして真人がどうしてあんなに「人間の強さ」にこだわっていたのか。彼の来歴は語られることはなかったのですが、彼自身手探りで正解を見つけられないまま、強さを証明しようとあがいていた中で、弱い女神と出会い自立した鬼娘と出会い、反発し喧嘩し諭され支えられ叱咤して、そうして手を取り合って真人自身、寄って立つ答えにみんなで辿り着いていくという過程は、新たな時代の英雄の誕生であると同時に何より主人公らしい一端の姿でありました。
まあ、圧倒的にマウラがイイ女、良い嫁すぎてあらカタ持ってったような気がしないでもないですが。エロいし姉御肌だしロリだし母性的だし、と非の打ち所が無い。なんじゃこの鬼仕様はw

振り翳す旗、寄って立つ核、生き様を手に入れた真人であるけれど、果たしてここからどのような軌跡を辿って、アマテラスを名乗る女神が今なお国を司る神国が現代に続いたのか、その道程は大変気になるところであり、ってかちゃんとした国造りするくらいまではちゃんと書いて出してほしい。
あと、現代では真人どうなってんの、とか。

暇奈椿作品感想