ヒーローお兄ちゃんとラスボス妹 抜剣! セイケンザー (GA文庫)

【ヒーローお兄ちゃんとラスボス妹 抜剣!セイケンザー】 逢空万太/児玉酉 GA文庫

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「わたしはどうしても世界征服がしたいッ!」
高校生の少年、鶴来奏斗は、海外留学から戻ってきた双子の妹、湊と一緒に訪れた地元の催しで『聖剣』を引き抜き、謎の騎士団「ブラッドテンプル」を呼び出してしまう。驚く奏斗をよそに、彼らを従えて野望に燃える湊。大事な妹の暴走を止めようとする兄に対し、悪の大首領になったはずの妹は、いつの間にか開発していた「ヒーローに変身するアイテム」を授けてきて―――!?
自由奔放な妹と個性的な敵たちに囲まれつつも、兄として譲れない戦いが始まる! 地域密着型変身ヒーローコメディ、このあとすぐ(in a flash)!
これはとてつもないマッチポンプ!
いやあ、妹が実は悪の組織の大幹部で、とかな展開は往々にしてあるかもしれないけれど、悪の組織の大首領に就任すると同時に、お兄ちゃんに変身アイテムを授けてヒーローに仕立て上げるという正義の味方の博士ポディションに座ってしまうとか。それも、お兄ちゃんと騎士団のまとめ役の見てる前で。それぞれに秘密じゃないのよ。もう見てる前で堂々と両方の黒幕に収まってしまうという。
これで裏切らない騎士団のマーリン卿が色んな意味で健気すぎる。妹が送り出してくる騎士団のナイトたちの対抗策をその妹に相談するというこの構図なに!? という以前に、騎士団のメンバーとして現界した連中は兄妹の暮らすマンションの同じ棟の部屋に住んでるんですけどね!!
敵さんの部屋に晩御飯のおすそ分けを持っていくヒーローお兄ちゃんの図。
いや、騎士団の連中って戦闘時だけじゃなくて常時全身鎧状態なので、見た目厳ついんですけれど、それで日常生活送られると別の意味で目の毒である。鎧姿なの、怪人が人間状態になれないのと同じような理屈なんだろうけれど、これだけアットホームな雰囲気にするなら別に普段は人間っぽい姿になればいいのに、と思わないでもない。夜型のやつとかはともかくとして、パーシヴァルなんか女性体であるのだからなおさらに。
まあ、この作品自体兄と妹がひたすら賑やかにイチャイチャする、というヒロイン一点突破型だから余計なヒロイン候補は出さない、という向きだったのかもしれないけれど。妹ちゃんが世界征服するんだぜ、という野望もそもそもお兄ちゃんラブから来るものですからねえ。王佐のマーリンちゃんとそれ心得て、妹ちゃんの無茶振りや自由すぎる振る舞いに従っているのだから、健気である。ガチの忠臣じゃあないですか。
それに比べて、肝心のお兄ちゃんはちょっと親しい仲であるが故の無神経さがチラチラあって、マーリンちゃん愚痴るのもわかるのよねえ。難聴設定は完全にネタなんだけれど、あんまり気持ち良いものでもないですし。
妹ちゃん、自由奔放のようにも見えるけれど人の嫌がるような真似はしないし、好き放題やっているようでお兄ちゃんに大変気遣ってるし、無茶言うのも甘えているというのが良く伝わってくるので鬱陶しさとか欠片もないんですよね。ああこの娘、本当にお兄ちゃん大好きなのね、というのが粘性なく快活に伝わってくる。愛は深く、しかし重くないのである。むしろ、重くなりすぎないようにミナちゃんがすごく気をつけている、というべきか。
だからこそ、お兄ちゃんにはその気遣いの健気さをちゃんと認識してほしいものである。もう少しね。
残念ながら、どうやら売上が全然だったらしくて、本作この一巻で打ち切りの模様でさすがに一冊で切りというのは厳しいなあ。つらい。
ただ、カクヨムの方で二巻以降の続きを掲載しているので、気になる方はそちらへゴー。

逢空万太作品感想