ロクでなし魔術講師と禁忌教典8 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 8】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

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成績不振による退学を回避するため、聖リリィ魔術女学院に短期留学することになったリィエル。システィーナとルミアも同行し、さらには男子禁制の楽園でお嬢様を手玉に取ろうと、グレンも女に変身し、臨時講師として赴任することに!?…しかし、そこで見たのは、お嬢様グループ同士の抗争で!?
「あっれー??ボクが想像してたのと全ッ然ちっがーう!!」
女学院という名の鳥籠。先の見えた人生にくすぶる彼女たちは破天荒なロクでなしの姿に触れて―
「断言してやる。俺ならお前達を『魔術師』にしてやれる」
グレンの講義が、箱庭の少女達の運命の鎖を引きちぎる!
やっぱりグレンは「先生」してるときが一番面白いなあ。
教え導くなんて柄じゃあ全然ないのだけれど、彼自身行き詰まってにっちもさっちもいかない時があった人生経験からか、同じように停滞してしまっていたり鬱積に沈んでしまったりしている子を見るとなんだかんだとちょっかいかけるんですよね。面白いのはそれが手取り足取り十全手を引っ張る補助ではなく、ちょっとした新しい視点の捉え方、見地の得方ってなもんで、言わば選択肢を増やして出来る範囲を広げていくことなんですよねえ。
それは選択肢の無さにこそ魂を淀ませていた聖リリィ魔術女学院の面々にこそクリティカルだったのでしょう。あの手のひらを返してのモテモテっぷりは、閉塞の打破という観点が大きかったのではないかと。アルザーノ校では、教育方針の旧態化に対して生徒たちが逼迫していたわけではないですからねえ。それに、講師としての能力を示す以前にこれでもか、とロクデナシさを見せつけられた上で、講師として真面目に活動するようになってからも、人品の卑しさは日常的に露呈し続けるのを見せられた以上は、生徒たちとしてもまあ無闇な信奉はできないよなあ、と。十分、慕ってはいるんでしょうけれど。
とはいえ、セリカの授業のお陰でグレンの講師としての能力の高さをみんな痛感したようですから、帰ってきたらそれはそれで大歓迎されるんじゃないでしょうか。

というわけで、リィエルの退学回避のために、ルミアとシスティーナを連れて女学校に短期留学することになったグレン。もちろん、グレンは先生として。女教師ですよ、女教師w
こいつ、ちゃっかり女風呂に入ってるんですけれど、ちゃんと粛清しないといけないんじゃないでしょうか。
今回わりと怖かったのがルミアの方で、グレン先生の周りに女の影がまとわりつくことに関してこれまでは寛容の一言だったのですが、どうやらそれはちゃんと理由と原因があり、相手が親しい人物であったからこその寛容であったようで、知らないよそ者の小娘どもがグレンをちやほやするのを目の当たりにした時の、あのひんやりとした雰囲気は、真っ当に機嫌を悪くして怒っていたシスティーナよりもよっぽどヤバかったです。
ある日突然肝臓にナイフをぐさり、系だったりしそうだよなあ、ルミア。
しかし、これまでグレンの薫陶を受け、数々のヤバい事件をくぐり抜けてきたシスティーナとルミアだと、やっぱり実戦も知らない箱庭のお姫様たちじゃあ格が違うのか。そりゃ、修羅場の経験が段違いだもんなあ。ちゃんとこれまでの経験がフィールドバックされた活躍を、システィーナもルミアも見せてくれて、これは痛快でしたねえ。特にシスティーナは何度も弱い面をさらけ出さされて、失敗や屈辱にグチャグチャになる場面を見続けただけに、その成長を強く感じさせてくれる今回の話は、なんとも気持ち良いものでした。

一方でリィエルの方は、個人的に新しい友人を作って友好を深める、というグレンやシスティーナ、ルミアにべったりで、離れると泣いてしまうほど幼かった姿からも、これまた成長と自立を強く感じさせる話でもありました。自己の存在や意思が極めて薄かったリィエルが、ルミアやシスティーナと育んできたものが、こうして結実するのを見るのは感慨深いものがある。
てか、リィエルと親交を深めることになったエルザ女史、何気にとんでもないキャラなんじゃなかろうか。魔術抜きでかなり凄いことしてるんですけれど。近接無双はリィエルの独壇場でしたけれど、これエルザのトラウマが解消されて本格的に実力を発揮できるようになったら、リィエルとのコンビ、かなりとんでもないことになりそう。二人の関係についても、なんかとんでもない方に行きそうな気配もありますが。周囲に温かい視線が……w

新キャラとしては、派閥トップのお嬢様二人よりも、毒舌忍者のジニーが良いキャラすぎて、かなり存在感喰ってた気も。エルザとジニーはこのまま合流しても不自然なさそうなくらい、馴染んでましたねえ。どうも話の流れによってはお嬢様ズと合わせてまた登場しそうですけれど。
久々に先生なグレンを堪能できて、良い回でした。何気に、帝国の闇について結構核心的な部分まで踏み込んでた気もしますが。

シリーズ感想