これが事前に予想していたのと違って意外な良作だったんですよね。
原作は電撃文庫の新人賞大賞作品。なんだけれど、個人的にはこれ、あまり面白みのない物語だと思ってる。
面白味というより、花がないというべきか。キャラクターも全体的に地味ですし、何より物語を綴る文章に尖ったものがなくて、かなり平坦なんですよね。語り口が退屈、と言っていいかも。
物語の肝となる話の筋立て自体はよく練られていて紆余曲折あるよく出来た話なんだけれど、それを語る文の方に色が薄くて、眼が上滑りしそうなものなんで、単純に盛り上がらないしすげえ面白い!というふうにはなりにくい。
それでも、雑だったり適当だったりではなくて、丁寧に書かれているものだから途中で投げだしたくなることはないのだけれど、印象には残りにくい作品だった。
もっと、メインたるゼロと傭兵の掛け合いがニヤけることのできるようなものだったらよかったのだけれど、あんまり心を擽るような妙味のある台詞や、絶妙のタイミングで殺し文句が吐かれたり、ということもなく、そもそも傭兵の性質がツンデレというには乱暴だし、思いやりにかけるものが多くて、カップル的に楽しむにもハマりにくいものがあったわけだ。
少なくとも、私個人の趣向にはあんまり合わなかった。

のだけれど、これがアニメになってみると意外なほど見れる作品になってるんですよね。
小説が原作のアニメ化のハズレる原因の一つとして、小説側の面白さの要素の一つが文章の面白さ、独特なセンス、地の文の語り口の絶妙さだったりするにも関わらず、アニメ化という映像への変換によって、その面白さの要素がスポイルされてしまうこと、というのがあると思うんですが。
本作に関しては、逆に文章がスポイルされることによって、物語の筋立てやキャラクターの関係などがわかりやすく全面に押し出されてきたことで、本来それらが持っていたポテンシャルが実像を得ることができたんじゃないか、と考えている。
特にこのアニメは原作の一巻だけをワンクール使って描くというなかなかに贅沢な仕様なだけに、話の流れやキャラの見せ方など元の原作の丁寧さをそのまま転写できたことも大きいのだろう。
正直、ゼロがこれだけ直裁的に大胆に、傭兵への好意を露わにしているとはアニメを見るまで気が付かなかったくらいだ。いやこれは、原作が傭兵視点の一人称だから、というのも大きいのだろう。何しろ傭兵ときたら、素直に物事を受け取らず、言動を受け取らず、常に拗ねたような視点で世界を見ていたから、ゼロの真っ直ぐな好意に対しても、えらいフィルター掛けてみていたと思われる。アニメでの俯瞰的な視点から見たゼロの様子は、もう恥ずかしいくらいじゃないですか、これ。

まあこういうアニメ化による見方の代わり方もあるのだなあ、と感嘆させられている。