エロマンガ先生 (5) 和泉紗霧の初登校 (電撃文庫)


【エロマンガ先生 5.和泉紗霧の初登校】 伏見つかさ/かんざきひろ  電撃文庫

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「おにーさんっ、クリスマスパーティやりましょうよ! 」
12月、紗霧のクラスメイト・神野めぐみらの提案でクリスマスパーティを開くことになった和泉マサムネ。めぐみと山田エルフ、そして高砂智恵の初顔合わせや、エルフとっておきの"隠し球"、紗霧の可愛い企みなど、波乱必至のクリスマス。1月、マサムネは作家仲間の獅童国光、美少女イラストレーター・アルミの3人で『バレンタイン対策会議』を開いていた。全員が目当ての女子からチョコを貰うべく、激論を交わすのだが……! 3月、ラノベ作家たちのアニメ化バトルに決着がつき、和泉家は明暗分かれた同業者のたまり場と化していた。そんな中、兄妹の保護者である京香が帰ってきて……。兄妹別居の危機に、奮闘するのは意外な人物!?
ラノベ作家の兄とイラストレーターの妹が織り成す、大人気シリーズ第5弾!!

いやあ、これはマサムネが誤解するのも仕方ないよ。京香さんの接し方が親族としても大人としても保護者としても失敗しているというレベルでやらかしてる。ちゃんと話してみれば、というのは簡単だけれどこれ京香さんの方から取り付く島がなかったとも言えるし、あれだけ頭ごなしにやられてしまったら、マサムネが逸ってしまうのも無理ないなあ、と思う。
これって、京香さんとしては家族ゆえの遠慮の無さ、だったのかもしれない、と考えることは出来るかもしれないけれど。だって、このレベルで対人関係やってたらまともな社会人としてのコミュニケーションとれないでしょう。あっちゃコッチャで仕事上のトラブルが起こってしまいかねない。取引先とか上司相手でなく、部下や使用者に対しても普段はちゃんと気配りとか細かくやってそうな人ではあるんですよねえ。
結局、京香さんって無表情系妹キャラを拗らせ続けてしまった人なんでしょうねえ。いわゆるマサムネの父親を主人公とした物語のヒロインの人だったわけだ。その視点からすると、両親を喪ったマサムネや紗霧も酷い喪失感を抱えながら生きてきたんだけれど、京香さんとしても一番大切な人と、恐らく様々なエピソードを得て恋敵であると同時に友達だった人、家族を突然喪った、という意味では彼女の負っていた傷も相当のものだったはず。そんな中で、大人として、大切な人たちの忘れ形見の保護者として、あの人達の子供たちを自分が幸せに導いてやるんだ、自分が、自分が、という気負いが、京香さんがやらかす原因になってしまったんかなあ。
そもそも、マサムネたちを想う京香さんの距離感と、マサムネたちが見知らぬ親族である京香さんを見る距離感が全然異なっている事を、京香さん自身が自覚していたか怪しいところ。本来、子供たちと距離を詰めていく、という過程抜きにしてズケズケと遠慮なさすぎにマサムネと紗霧の間に踏み込んできてしまっているのがその辺想像させられるんですよねえ。これで、もっと大人として、叔母として包容力ある形で傷ついている子供たちを守るように動いてくれたら良かったのに、取った行動は自分の理想の押し付けだったわけですしね。
これ、京香さん自身が妹キャラだった、というところにも原因があるんでしょうか。大人世代の当時の描写がまだ無い以上想像するしか無いのだけれど、厳しいこと言っても包んでくれる兄みたいな人に、だらしのない姉みたいな人たち相手に、しっかり者で堅物の妹キャラとして小言を飛ばし、時に理不尽な物言いをしても、なんだかんだと甘やかして貰ってたんじゃないかなあ、と夢想してしまうんですよね。だからこそ、自分より小さくて弱い家族に対しての接し方がわからず、マサムネの父や紗霧の母に接するように、年上の家族たちに対するようにそのまま厳しく理不尽に接してしまい、破綻してしまった、と。あの「甘やかしてあげます」という言葉に込められた京香さんの想い、なかなかに想像をたくましくしてしまうんですよねえ。
これを、まだ子供だったマサムネたちに察してあげろよ、というのは幾らなんでも無理難題でしょう。彼らは彼らで自分の大切だった生活、思い出、そして大切な人と未来を守るために必死だったわけですし、どうみても京香さんはそれを無理やり奪っていく理不尽に過ぎなかったわけですから。
それでも、子供たちの成長は両者の間に出来てしまった溝を埋められるだけの「余裕」を生み出したわけで、その成長はそのまま人の輪の広がりでもあるんですよねえ。
考えてみると、これだけポジティブに人と人との繋がりを良きものとして描き切ることのできてる作品って、希少かもしれないなあ。さすがに、登校イベントは青臭え!と思ったんだけれど、それにちゃんと乗っかってくれるみんな、いい子だなあ、と思うほかない。
ムラマサ先輩のあの都合の良い女っぷりには、むしろ惚れてしまいそうだ。
本屋の智恵ちゃんもあれ、十分脈ありだったのか……ってか、彼女ライバル居ねえと思って余裕ぶっこいてたら凄まじいメンツにあっさり追い抜かれてしまった、という感じなんだろうなあ。勿体ぶってないで先物買いしておけば、というところなんだけれど、まあどうやっても先に紗霧という存在がドーンと居座っているので最初からどうにもならないのですが。
そんな揺るぎのない大本命の紗霧なんですが、彼女自身立場に甘えず常にメインヒロインとして燃料を投下してガンガンエンジン動かしているにも関わらず、全然突き放せないエルフちゃんのヒロインとしての凄まじいポテンシャルがヤバいなんてもんじゃないですよね、これ。酔っ払い共の後始末、嫌がりもせずに一緒にマサムネと掃除や片付けや手伝ってくれる姿に、もうなんか打ちのめされた。エルフ兄から、妹は一途で献身的という評価があったけれど、マジで登場人物中でも屈指の家庭的な娘なんだよなあ。そういう範疇に留まらず、なんというかこれだけ、この娘と結婚したら絶対に幸せになれる確信が得られる娘って、かつて居ただろうか、ってな感じなんですよねえ。すげえ、すげえキャラだわ。

シリーズ感想