ニアデッドNo.7 (電撃文庫)


【ニアデッドNo.7】 九岡望/吟 電撃文庫

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目覚めた少年は、何者でもなかった。
“再葬開始”の合図と共に、いつの間にか持っていた火の粉を纏う刃を振るい、異形の敵を倒すのみ。
“境死者(ニアデッド) No.7”──赤鉄。それが、彼に新たに与えられた名だった。
なぜ自分は戦うのか──。No.6である美しき少女・紫遠と共に、訳のわからぬまま死闘に身を投じる赤鉄は、やがてある事実にたどり着く。No.7の称号を持つ“先代”がいたこと、そして自分がその人物に殺され、No.7を“継承”したことを……。
現代ダークファンタジー、開幕!
イラストレーターの「吟」さんとのコンビはそうか、代表作の【エスケヱプ・スピヰド】と同じなのか。図らずも、エスケヱプ・スピヰドと同じく本作も主人公サイドのメンバーには番号が振られてるんですよね。オマージュとなっているのはサイボーグ009なんでしょうけれど、戦隊モノの色区別とはまた違う、個性的な面々が番号によって揃えられて一塊のチームとなっているシチュエーションってやっぱりなんかカッコイイんだよなあ。
本作はまだ第一作目ということで、メンバーの半分近くは他に出かけていて登場しないのですが、九岡さんがこういうスタイルを得手としているのが良く伝わってくるんですよね。もちろん主人公に焦点を当てながらも、メンバーそれぞれ多くのものを歴史、人生、他者の想いなどを背負った者同士が寄り添い、共に生き、共に戦い、たとえその過程で滅びるとしても、その生命と祈りとを引き継いだ者と共に歩み続ける、家族のような戦友にして運命共同体というものを描くことへの、筆に乗ったビリビリとした感触がまた素晴らしいんだ。
これは意図したものなのか図らずなのかはわからないけれど、エスケヱプ・スピヰドと同じく本作でもこの“境死者(ニアデッド) ”と呼ばれる存在になってしまうには、それまでの人生を一度リセットされることになるわけで、その際に前の人生における記憶は消え去ってしまうのだけれど、それはその人の中から以前のことが何もかもなくなってしまうということを意味してはいないんですよね。それはニアデッドになる条件にも深く関わってくることになるんだけれど、ニアデッドになるということは生まれ変わると同時に二人分の想いを引き継いでいかなくちゃいけないんですよね。人間だった頃の自分と、そんな自分に投げかけられていた先代の想いを。このニアデットたちの家族めいた仲間意識を思うなら、去っていった仲間に向けられていた他のメンバーの想いも受け止めて引き継いでいかなくちゃいけないのかもしれない。
それを、主人公たる赤鉄は中途半端に人間だった頃の記憶を残していたがために、すべて向き合っていかなくてはならなくなったわけで、その継承が中途半端であり「彼と彼女」の物語の結末がまた決着ついていなかったがために、赤鉄は他のニアデットたちよりも恐らくは過酷な形で直面していくことになる。
なかなかに、主人公に優しくないシチュエーションとも言えるのだけれど、物語のすべてが明らかになってみると赤鉄にこれからの覚悟とこれまでへの決別、そして本当の意味で死んだ自分と彼女の想いを引き継げる機会があった、というのはむしろ幸いなのかもしれないなあ。

しかしこれ、ヒロインはあくまで紫遠の方なんだろうか。夕里子はがっつり噛んでくるとはいえ、あくまで外部者であるわけですし。ただ、外側の人間だからこそ違う形で協力できる術はあるわけで、彼女自身能力的にも信念としても非常に優秀で、ニアデットたちにも有益だったりするので、これからも普通に絡んできてもおかしくはないのだけれど、エスケヱプ・スピヰドでの「叶葉」と違って、その存在が主人公の生き方の根幹に関わってくるというほどには深い関係にはないからなあ。
その方面は、現状緋霧が全部持っていったまま離していない状態とも言えますし。いや、その意味においてもニアデットって常に想いを置き去りにしてきているとも言えるわけで、その誕生の根源に絶対的な孤独があると思えば、その仲間意識の強さの根本がなんなのかも何となく伝わってくる。
ラストシーンの全員集合にはやはりワクワクするものがあっただけに、本格的にメンバー全員のキャラが明らかになるだろう次巻はすごく楽しみ。

九岡望作品感想