境域のアルスマグナ2 盾の死神と博士の絡新婦 (MF文庫J)

【境域のアルスマグナ 2.盾の死神と博士の絡新婦】 絵戸太郎/パルプピロシ MF文庫J

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それは一つの可能性。道を踏み外したもう一人の「レオ」。

<水葬の王>鳴海滝徳と乙姫に勝利し、<王>としての第一歩を踏み出した怜生。
多忙な日々を送る彼の元に、一文字卿から送り込まれた護衛は、この世で最も嫌いな女性――武芸の師、切花白羽だった。
彼女に常時護衛されながら、編入した神霊学部で<王>としての基礎を学び、学友達と過ごし、束の間の安息を満喫する怜生。
しかし、敵は既に背後に迫っていた。偶然か運命か、敵も医療魔術師。そして……
「私の名はレオ――レオ・フランケンシュタインだ」
最強・最速・極悪の三拍子揃った凄絶過激な魔王の狂宴、恐怖と悲哀が綴る第二幕。
輝く覇道を歩む者と、悪辣な外道を強いられた者。二人の「レオ」が激突する――!
ふっ、ふははは、これはすげえ。これはヤベえ。これは本物だわ。デビュー作である第一巻もわりと絶賛しつつもまだ荒削りな部分が見え隠れしてただけに、二巻の出来栄えには大きな関心を寄せていたのだけれど、いやビックリした。あそこから完全にパワーアップしてる。スケールアップしている。バージョンアップしている。基礎工事の上からさらに巨大な基礎工事やった上でタワーマンションが建設され始めたのを目の当たりにしているかのようである。
これ、間違いなくレーベルの一線級。昨今の新人の中でも図抜けて一押しできますわ、これ。
第一巻が怜生がこれまでの人生を覆して、王としてこの世に事を成すことを覚悟を決する彼と伴侶である花蓮の物語だとするならば、この二巻は怜生を王として担ぐ、臣下であり仲間であり親友であり家族となる、その生涯をともに駆け抜けるであろう同胞が集う物語でありました。王は一人で王足り得ず。それを怜生も花蓮も痛感するエピソードであり、そんな彼らを勇んで支えることを選ぶことになる友との出会いの、家族との再会の物語であり、彼らの王であることを選択した、彼の王の臣下たるを選んだ、身命を賭して共に征くことを臨んだ選択の物語でありました。
場合によっちゃあもっとスケールの小さい、怜生と花蓮の小さな輪っかに多少のヒロインが加わって、話のたびにゲストが現れるみたいなこじんまりとした物語になるのかとも思ってたですが、どうしてどうして。こうも一気に怜生を王として頂点とした「緋の龍王」の結社が誕生するとは思わなかった。組織的にも少数の小さなグループじゃなく、実家の傭兵結社である鬼神会を中心に切花の一部にエドァルドの一族も加わるわけで、新興結社としても決して非力ではない組織力となってるんですよね。
それ以上に、幹部級の結束が素晴らしい。元々養子とはいえ家族だった鬼柳家にも冒頭できっちりケジメつけて傘下に加えたのは元より、旧知であった白羽と学友として知り合うことになるエドァルドと武藤くん。今回初登場にも関わらず、ここまでしっかりと熱い関係を育んでくれるとは。彼らの性格と背景がしっかり描かれていたせいか、出会って間もないにも関わらず友達としての関係は元より、ここぞという時に手助けなんて軽い決断ではなく、自分たちがこれまで背負ってきたものも含めて全賭けして、怜生の理想に、彼の王道に付き従う、いや花蓮と二人だけで行こうとする怜生の首根っこ捕まえて、水臭えぞこの野郎とばかりに臣下の盟に加わるその心意気。いやあもう、燃えた萌えた。
白羽先輩にしても、彼女が抱えていた致命的な欠点であり弱点をこの一連の戦いの中で浮き彫りにされ突きつけられ痛感して壊れかけたさなかで、それでも這い上がり自らを叩き直して生まれ変わったような革新を持ってしてまで、随身してくるこの守り刀の面目躍如のような活躍。
当番回みたいな概念なく、前回からの登場人物、今回初登場のキャラ関係なく、全押しでどのキャラクターにも厚みと魅力を添えてくれた上で大いに躍動させてくれたわけで、そりゃあ面白いし盛り上がるよ。もうどこを見ても、どの場面でも魅力的なキャラがわらわらと盛大に自律して動き回り、魂からの発露を叫びまわってるんだから、お祭り騒ぎもいいところだ。
その中にはちゃんと今回の敵キャラも含まれていて、レオとフロレンスのコンビもまた実に魅力的な敵役として振る舞ってくれているんですよね。図らずも怜生と似た理想のもとに世界を飛び回った挙句に悲劇を経て大いに道を踏み外した怜生の零落版であると同時に、お互いへの愛の証明のためにわかっていながら外道を歩む悲恋譚の主役カップルでもあるわけで。
やっぱり自分は敵役が小物とか小悪党とかよりも、こうした魅力的な人物の方がぴょんぴょん盛り上がるんですわ。
愛情というと、花蓮のわりとぶっ壊れたそれもインパクトあるんですけれど、それ以上に姪っ子コンビの燐と燦の形にこだわらない、家族愛でも異性愛でも支配する愛でも支配される愛でも形式なんてどうでもいい、家族でも恋人でも主従でも構わない、関係性などにとらわれない獣のような無軌道で奔放で自由で、しかし寵愛……愛してくれるなら、恩寵……見返りがあるのなら、それで構わない、ある種一途な愛の形もまた、盛大にぶっ壊れていて、これもいいんだよなあ。
白羽先輩も、あれ結構あからさまに下心見せてたりしますしねえ。警護役として職務に忠実であり忠誠の塊みたいな堅物と見せかけておいて、中身はしたたかに女してるの、かなり好みです。
いやもう面白かった、素晴らしかった。一巻読んでの期待値を遥かに上回る一品を仕上げてきてくれました。
Marvelousです!!

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