クロニクル・レギオン 6 覇権のゆくえ (ダッシュエックス文庫DIGITAL)

【クロニクル・レギオン 6.覇権のゆくえ】  丈月城/BUNBUN  ダッシュエックス文庫

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照姫と平将門の暴走により混乱を極める皇都東京。ついに全ての騎力を取り戻した征継は、志緒理と共に反撃の機をうかがっていた。だが京都遠征より突如折り返したローマ帝国の将軍・衛青が皇城を制圧、女皇を従え実権を握ってしまう!一方、水面下で征継たちと協力関係にある大英帝国軍は、関西方面で総大将・カエサルとの決戦に挑む。だが、ローマが新たに召喚した正体不明の英雄“ネモ”により、リチャード獅子心王が倒されてしまい…!?志緒理は起死回生を懸けて、江戸城址に眠る聖獣・大国主命を復活させ、新たな力とすることを試みるが…!?復活せし英雄たちの過去と現在がクロスする極大戦記、第6巻!
志緒理姫、ガンガン寿命削っていくなあ。この姫さんの凄いところは追い詰められて、他に選択肢がなく寿命を捧げるのではなく、ここぞという場面においてここで勝負かけなあかん! と、惜しげもなく自分の寿命を課金してしまえる勝負勘なのでありましょう。ガチャじゃないよ!? 運を天に任せているわけじゃあない。
一方で、大勝負を仕掛けておきながら自分がリスクを負うタイミングを追い詰められるまで慎重に取り回して温存してしまったのが照姫なわけですね。彼女に勇気や無謀がなかったわけではなく、これはもう生き馬の目を抜く生き方をしてきた志緒理と、飼い殺しにされてきた照姫の人生経験値であると同時に、志緒理の場合は心身を捧げ尽くせる相手と敷いて絶対的に信頼できる征継が傍らに居たのが大きいのでしょうなあ。これは、征継の真名がカエサルや黒太子のような王たるものたちではなく、大業を支えた功臣であったというのもあるかもしれません。それも、文字通り世界に覇をなしたチンギス・ハーンの臣下たる大将軍ですからな。男女としても君主としても、これほど稀有壮大な心持ちにしてくれる支えはないでしょう。
その意味では衛青将軍も同系統なんですよね。才能から人品からこれほど清廉にして鮮烈な人が歴史上どれほどいるものか。ただ、その外戚となりながら一族の権勢を高めることなく清廉に徹したことが、彼の一族の政治力を損なわしめてしまい、衛青将軍没後に一族が族滅させられたという事実が、彼に思うところを与えてしまっていた、というのはなかなかに予想外の展開でした。
彼のような人物が禄を食んでいたローマ帝国から離反して自由に振る舞い出す理由が想像つかなかったのですが、これはなんとも思わぬ方向から攻められたという意外感と同時に、衛青将軍の人となりが変貌してしまったのではなく、彼らしい清廉な在りようが変わることなくある種の稚気と後悔の発露だったとするのなら実に面白いところである。ってか、この期に及んで野心を滾らせるでもなく、ああいう涼やかな振る舞いを自然とこなしてしまう衛青将軍が好人物すぎて、なんかもう眩しい。
今回の行動を見ていると、決して腹芸や策謀を巡らすことの出来ない人ではなく、やろうと思えばスルッとこなせて、宮中の掌握の手際なんか見ても権力握ろうと思えばサラッと魔窟だろうと万魔殿だろうと仕切れてしまいそうな、このやり手風味たるや。本気で野心持ったら容易にカエサルとでも対抗できそうな君主になれてしまいそうなんだよなあ。それでも、根本的にその気にならない野心の無さが衛青将軍の根底であり、また魅力なんだろうけれど。この人が結果的にとはいえ敵に回らなくてよかったと心底思う。ってか、人類史における騎馬機動戦の最高峰にあたるだろう二人が両翼に侍るって、志緒理姫贅沢過ぎるくらい贅沢ですぜ。
とか言っている間に、カエサルの隠し玉であるネモ将軍の正体が明らかになって、ヤバさ待ったなしになってしまったわけですけれど。
あのネモ将軍の正体開陳、攻撃開始のシーンのイラスト、めっちゃカッコよかったですなあ。あれこそ、悠久の大地を駆け抜ける大将軍の姿でありますよ。ってか、浪漫だな。
衛青将軍の独自介入というイレギュラーに翻弄されながら、時間的にも戦力的にも瀬戸際を綱渡りしていく志緒理陣営なのだけれど、無い時間の合間を縫って飄々と志緒理姫をはじめとしたヒロインたちを喰っていっちゃう(性的)征継、まさに肉食の馬というかこいつユニコーンの一種なんじゃないだろうか。澄ましたスケベ馬。
挙句ついにアル中で女としてどうなの!? という有り様に徹していた竜胆先生にまで女の顔をさせてしまうという、やりたい放題だね!
しかし、一方でさすがはカエサルというべきか。志緒理がなんとか陣営を固めて権力と実動力を掌握していく一方で、着々と手をうち詰将棋のごとく見える手と見えざる手を同時に指し勧めていくこの政治家としても軍人としても人類最高の一柱たるを思い知らせてくれる手腕で。
逆にそうした頂上たる一柱だからこそのウィークポイントを攻めようとしている志緒理や大英帝国もまた、謀略戦では負けていないという、この政軍謀のあらゆるを駆使した鬩ぎ合いが大いにクライマックス感を高めてきている。
次回がラストというに相応しい盛り上がりだこれ。

シリーズ感想