異世界修学旅行 6 (ガガガ文庫)

【異世界修学旅行 6】 岡本タクヤ/しらび ガガガ文庫

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異世界修学旅行、いよいよ大詰め!

修学旅行の最中に突如飛ばされてしまった異世界で、王女プリシラと共に、クラスメートを探しながら修学旅行を続ける沢木浩介たち二年一組。次なる目的地は、その主である魔王を喪い、今や聖徒会なる集団に支配され、新たな文化の発信地となっている魔王城!聖徒会の野望を打ち砕き、クラスメート全員で日本へと還るため、魔王城へと乗り込んで行った浩介たちだったが――。気付くと浩介の眼の前には、毎日のように通っていた――それでいて懐かしい、母校である緑ヶ丘高等学校の校舎がそびえていた。

「……あれ? 俺たち、異世界で修学旅行をしてたんじゃなかったっけ?」
「異世界? 何をファンタジーなこと言うとるんじゃ。それよりはやく教室へ行こうぞ! このままでは遅刻じゃ! 食パンをくわえて走るのは意外と難しいぞよ!」
「あ、ああ。でも何か、大切なことを忘れてるような――」

日本と異世界が、現在と過去が交錯する懐かしくも心地良い幻の中で、浩介はついに生徒会長・若王子暁と再会する! 聖徒会の、若王子の目的とは? そして、魔王を倒した勇者とは?
異世界で日本を想う修学旅行生たちの異文化コミュニケーションコメディ、第六弾!


元の世界に戻っちゃって学校生活とか修学旅行じゃないじゃん! と一度は思いはしたものの、学校生活自体が初体験かつ、いくら日本の知識は豊富とはいえプリシラにとっては日本は異世界なのだから、彼女にとってはこれが異世界修学旅行になるのか。
ついに、生徒会長若王子との対面、という肝心なところで、魔王城の扉をくぐるとそこは日本の母校でした、というパターンに。しかも、そこは時系列的に巻き戻っていて、戻ってきた面々の記憶も浩介をはじめとして全員が消えてしまっていて、二度目の高校生活がはじまってしまう。
ただし、傍らにプリシラが当たり前のように生徒としてくっついていた、という差異を生じさせながら。

いやもう、生徒会長の若王子が実は女でした!とか(みんなはクラスメイトだから当たり前に知っていたのだけれど)、実は浩介の元カノだったんだよ! という驚愕の事実でぶん殴ってくれた前回。そりゃもう、ついに若王子ご当人の登場という展開に、いったいどういうヤツなんだ。浩介との関係とは。そもそも、マジで付き合ってたの!? なんで別れたの!? どうして今、浩介は若王子から目の敵にされてるの?
という様々な謎や疑問を、どう表現してくれるのか。若王子との直接対決で明らかになるのだと思っていたのだけれど、そうかーー! 語らせる、対論させる中で事情や若王子のキャラを見せていくのではなく、若王子という人物の人となりを、どうして彼女が浩介に関心を寄せていったのか。そもそも、このキャラ濃すぎる面々ばかりの二年一組がどのように修学旅行に出発するまでに今のようなクラスになっていったのかを、追体験という形で見せてくるとは。
しかも、本来若王子が居たであろうポディションに、プリシラがはまり込むことで実際の過去の流れとはどんどん違ってきてしまうんですね。同時に、浩介をはじめとして修学旅行の記憶が戻ってきたり、この魔王の精神攻撃に類する体験型幻覚の中で少なからぬクラスメイトたちが悪堕ちしてしまい微妙にクラス崩壊しだしたり、ただの追体験では終わらないのである。
いや、二週目の高校生活だったからこそ、あのすっとぼけた脳天気なスチャラカ異世界修学旅行の中で、みんな少しずつ成長したり、以前より頑張れるようになっていたり、関係が進展したり、というのが過去との対比の中で浮かび上がってくるのである。坂上先生しかり、ハイファンタジー室田しかり。そして、若王子との関係をかつて盛大に失敗してしまった浩介しかり。
一方で、プリシラにとっては二週目ではなく、これが初めての学校生活。それも、どれほど仲良くなろうとも異邦人と現地人というしがらみがどうしても付きまとう二年一組のメンバーと、本当の意味でクラスメイトとして同じ時間を過ごせた体験が、プリシラにとってどれほど掛け替えのないものだったのか。
相変わらず学校生活でもスチャラカなノリでありながら、この浩介たちの以前よりも前に進めた二度目の学校生活と、プリシラのはじめての学校生活という二重螺旋の話の主筋がうまく芯棒となって物語を支えた上で、クライマックスで化学反応を起こすように収斂していく、この構成が実に見事なんですよね。
普段ふざけてばっかりのプリシラ王女、浩介たちとの関係にもこれまでも全然気後れなく、心底楽しそうに絡み合ってたと思ってたんだけれど、あんな風にしんみりと涙ぐみながら同じクラスメイトとして体験した高校での時間を語るようなキャラだと思っていなかっただけに、衝撃でありそれだけ本当に二年一組の愉快な仲間たちのこと、好きになってくれてたんだな。一緒に過ごす時間を大切に思っていたんだ、というのが実感できて、なんだか感動してしまいました。いやもう、そんなキャラじゃないのに。そんなキャラじゃないくせに。
ああ、ちゃんとみんな、青春してるじゃないですか。

家に帰るまでが修学旅行です、って一旦家というか学校に帰っちゃったのだけれど、もう一度仕切り直しで異世界に戻ってきた浩介たちを待ち受けていたのは、あっと驚くような衝撃の真実。
考えてみると二周目の高校生活では決着つけたとはいえ、異世界ではまだ若王子ともちゃんと再会してない件も含めて、色々と問題は残っているのだけれどそろそろこの異世界修学旅行もクライマックスの雰囲気になっていたぞ。
旅の終わりはもう近い……。

シリーズ感想