スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)

【スクールジャック=ガンスモーク】 坂下谺/巖本英利 ガガガ文庫

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機巧外骨格、起動。テロリストVS元少年兵。

先の戦争から導入が試みられた、二足歩行兵器――機巧外骨格。
戦争を通してその性能を存分に示した機巧外骨格は、終戦後も重要な軍事力として運用されるようになった。それをうけ、戦勝国である葦原皇国においては機巧外骨格のパイロット育成学校が創立される。 生徒達は、そこで優秀なパイロットとなるために、日々研鑽を積んでいた。
しかし、そのような希望に満ちる現在において、戦時中の機巧外骨格運用の舞台裏で生まれた、決して消し去ることのできない遺恨が残っていたのだった……。 その確執の火薬庫は、いま学園を襲うテロとなって爆発する。
整備士として学園を訪れていた、黒宮凛児。
学内でトップクラスの操縦技術を持つ、花枝連理。
運命的な因果に絡め取られた二人の手に、生徒たちの命運が託される。
そして、浮かび上がるもう一つの因縁。
かつて特殊部隊の少年兵として機巧外骨格を駆っていた凛児の前に、その脅威が立ちはだかる。
戦争という悲劇が生んだ、機巧外骨格の名誉と汚名。
その真相を受け容れたとき、凛児は再び守るべきものを、その手に掴む!
本格リアルロボットものであると同時に「学校が突如テロリストに占拠されて――」という、これでもかと好みの要素をぶち込んだ贅沢な作品である。案外とないんですよね、ダイハードシチュエーションな内容の作品って。そんでもって、数少ないこの手の作品は、大概かなり完成度が高かったりする。
本作も一話完結の作品としては、起承転結の明瞭さやキャラの立て方、展開の手堅さから結末に至るまでの説得力まで、一本の映画を見るかのようにしっかり作り上げてるんですよね。これはもうお見事。
いやしかし、ロボットものと学園を占拠したテロリストものって、自然と舞台が閉鎖空間になるが故に大きなロボットの活躍する要素なんて用意しにくくて、食合せとして難しいなんてものじゃなかろうに、と思ったんだけれど、そういえば先達として「フルメタル・パニック」という偉大な作品がありましたか。あれも、占拠されたり侵入された場所が学校というケースは一回しかなく、それもかなり特殊な制圧のされ方だったんだけれど、閉鎖環境での人型兵器というのはある意味起死回生の切り札ともなり得るので、使い方次第ではなかなか流れをつかみやすいシチュエーションなのかもしれない。舞台が戦闘用の人型ロボットのパイロット養成学校、ということで主人公のようなロボットを操縦できる元少年兵、なんていうなかなか学校内に配置しにくい主人公の来歴を違和感なく準備しやすいですし。
ヒロインがあんなヤンキー娘、というのはけっこう斬新だと思いますけれど。あんな過去を持っていて、未来に対して明瞭な意思と覚悟を有して生きてきた娘がこういうキャラになる、というのは想像していなかっただけにかなり面食らいはしましたけれど、取っ掛かりのヒロインに対するインパクトとしてはかなりのものですし、初心さと気の強さと真っ直ぐさを併せ持つヒロインとして、最初の掴みから存在感が薄れない造作は非常に魅力的だったと思います。
それだけに、もうほんのちょっとだけ、主人公の相棒としての役回りが強かったらなあ、と思うところもありまして。いや、学生にも関わらず力量、度胸もばっちりで、要所要所で彼女がいなかったらどうにもならなかったケースも在って、十分相棒として活躍してくれているのですけれど、彼女の役割としてはそれ以上に主人公が所属した情報軍の、正義と理想の証であり体現である、という象徴の要素が強く、彼女を護ることに成った主人公側と、図らずも有象無象ごと彼女を殺す側に回ってしまったテロリスト側との明暗を裏付ける、ある種の錦の御旗的要素が重きをなしていたことが、彼女のこの物語における役回りを二重にしてしまっていて、ちと欲張ったかなあ、と。いやしかし、うーん。見事に両方こなしている、とも言える気もするんですよね。これを言及してしまうのは、こちらこそ欲張り過ぎるか。バランスとしては絶妙な割り振りとも言えますし、こちら個人の感覚的な部分に類する物足りなさとも言えますし。
テロリスト側の事情や主人公、ヒロインたちとの関係も含めて複雑に絡まりあった因果を、この事件で一気に取りまとめた上で解決しているわけで、脚本の練り上げっぷりはほんと完成度高いし、盛り上げどころも痒いところに手の届く、王道を心得ている安定感だし。うん、改めて振り返ってみると、面白さに文句つけようないのよなあ。
何気に、主人公の専用AIが機械知性にかかわらず一番情熱的で熱くて愛嬌があってムードメーカーで、といいキャラしまくってて、わりと美味しいところこの子が大方持ってってる気もするんですよね。このAIがいいアクセントになってるのよなあ。むしろ、相棒枠はこのAIがガッツリ食いついて離さなかった、とも言えるのですけれど。
アクション大作映画さながらの作品でしたけれど、それだけにこれ一作でキレイに完結しているのでシリーズ化は難しいかな。もし続くなら、次も映画第二弾、的にやってほしいなあ。