EXMOD 2: 黒ノ追撃者 (ガガガ文庫)

【EXMOD 2: 黒ノ追撃者】 神野オキナ/こぞう ガガガ文庫

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敵はアメリカ政府――迫る最強の特殊部隊!

朝、ベッドの中で目覚めた真之斗の隣には裸の世衣がいる。二人は長い長い大人のキスを交わす……。「海ほたる」を舞台とした「F」こと山崎四郎との戦いの最中、世衣から愛を告白された真之斗はそれを受け入れた。毎週末ともに朝を迎える関係となった二人を祝福しつつも、亜世砂は真之斗への想いを吹っ切ることができず、ひとり寂しさを感じていた。一方、山崎四郎の事件以降、暴走するEXMODたちが増えてきていた。そのため、「黄昏」機関のクラタの要請で、真之斗たち三人は暴走したEXMODたちを捕獲する仕事を受けていた。そんなある日、クラタは気になる情報を入手する。真之斗たち三人をEXMODの実体資料として引き渡すよう、アメリカが日本政府に圧力をかけているというのだ。実際、「上」から3人の引き渡しを打診されたクラタはこれを拒否する。ロマナ・ギャリソン少佐に率いられたEXMODのマリー・Rと特殊部隊「アイヴァンホー」は、日本に上陸。真之斗たち本人を直接襲うという強硬手段をとる。必死の抵抗を試みた真之斗だったが、敵の情け容赦のない攻勢に、ついに世衣がさらわれてしまう……。
少年少女たちの過酷な戦いを描く青春SF第2弾!

これは亜世砂がキツすぎるなあ。世衣にしても真之斗にしても、亜世砂の存在にあれだけ寄りかかっておきながら、同時に世衣と真之斗の二人の世界が完成してしまったが故に、亜世砂の存在を省いてしまっている。あの気丈な亜世砂が寂しいと零すなんてよっぽどじゃないかと思うのですけれど。
姉と結ばれてしまった幼馴染への恋心。これをずっとしまいこんでるのも辛いのですけれど、恋愛感情抜きにしても世衣と真之斗はお互いに夢中すぎて、亜世砂のこと結構蔑ろにしてるんですよね。もちろん、当人たちにそんな意識は毛頭ないのだろうけれど、二人共自分のことをあまり気にかけてくれなくなってしまった、というのは心細いなんてものじゃないだろうに。
それでもこの娘は、笑顔を貼り付けて二人のことを支え続けるのだ。健気の一言である。
世衣が攫われてしまったことで暴走寸前に不安定になった真之斗の最後の縁として、献身的に彼を庇護しつづけた亜世砂だけれど、これって亜世砂の方がEXMODの暴走状態になっておかしくないくらい精神的に傷ついているんですよね。
正直、あんな形で結ばれたことが救いになるとは思わないのだけれど、亜世砂にとってはあれで十分なんだろうか。あれだけで、今後ずっと耐えられるのだろうか。二人に対して心から笑顔で居続けられるのだろうか。
出来るんだろうなあ。暴走もせずに、全部受け入れられてしまうんだろうな。
そんな強い娘なのだ、亜世砂は。負け戦でちゃんと負けられる娘なのだ。でも、そうなると「強い」ってなんなんでしょうね。強いことは幸せになれることとは、何の関係もないのかもしれない。

ともあれ、恐らくはこのままジリジリとした変化のさなかでいつか何らかの形で修羅場が訪れるはずだったろう三人の関係に、劇薬或いは爆薬として突如殴り込んできて、すべてをぐちゃぐちゃに引っ掻き回してしまったアメリカ特殊部隊の襲来。
同盟国の都市の真ん中で堂々と襲い掛かってくる無茶苦茶っぷり。そりゃあ、クラタさんかてここまでやってくるとは思わんかっただろうなあ。しかし、だからこそ組織のメンバーの数多くを殉職させてしまったクラタさんの痛恨の失策なのである。あれだけ一方的な奇襲をされた展開でありながら、それなりに反撃で相手にもダメージを与えているあたり、黄昏機関って想像以上に優秀な組織だったのだろう。クラタさんのあのクレバーな有能っぷりを見たら、彼女が集めたメンバーが伊達ではないのもわかるのだけれど、それだけにそんなメンバーの多くを無残に戦死させてしまったのは、本当に痛恨だ。
それでいながら、復讐心に駆られて相手を根絶やしにしてやる! と意気込めないのが組織人の辛いところであり、プロの挟持なんですよね。激高しながら、同時に冷静に粘り強く交渉材料をひねり出し、落とし所を探り出していく。同時に、まだ未成年である真之斗たちの最低限の人権を守ろうとし、公務員として国益を損なわず、とプロの職業人としても公人としても一人の大人としても挟持を見せ続け、情を失わず、理を勝ち取り続けるクラタさん、ある意味前線で暴れ続けるだけであることを求められた真之斗よりも、あらゆる方面で七面六臂の活躍してたの、このヒトだよなあ。お膳立てから何から、ぜんぶクラタさん頼りだったわけですし。
どれほど人外の力を有しようと、それだけで世界には太刀打ちできないどころか手も足も出ない一個人にすぎない、という現実を、覚醒した真之斗の無双っぷりがむしろ如実に表現していたのが興味深かった。
いやそれにしても、亜世砂の報われ無さがやっぱりゴリゴリと胸に痼りを残すのです。真之斗も世衣ももう少し妹に構ってやって。

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