ワールドエネミー2 不死殺しの王と王殺しの獣 (Novel 0)

【ワールドエネミー 2.不死殺しの王と王殺しの獣】 細音啓/ふゆの春秋 Novel 0

Amazon
Kindle B☆W

世界中に吸血鬼や屍鬼、魔獣などの強大な怪物がはびこる時代―人類は世界の敵たるアークエネミーとの全面衝突を繰り広げ、その命運は最強ハンター、ノア・イーストヴェルトに託された。元シスター・シルヴィを料理係に迎えたノアは、とある村の周辺で発生する屍鬼の騒動が大敵の仕業だと目星をつける。過去にヴィクトリア19世が治める王国での事件から因縁を持つ奇妙な大敵・獣の魔術師からの不穏な予言を手がかりに現地に赴いたノアたち。待ち受けるは、「王殺しの獣」の異名を持つ大敵=ヴァラヴォルフ・S。これは、数百年間にわたり人間を騙し続ける最悪の人狼と最強のハンターの死闘の記録。異例の反響を起こす世界最強のハンター・アクション、第2弾!
汝は人狼なりや?
数百年に渡りその正体を暴かれることなく、かつて一つの王国をも滅ぼしたという最強の人狼。「王殺しの獣」と呼ばれる大敵(アークエネミー)との戦いは、正面切っての剣と牙を交える攻防ではなく、誰に化けたかもわからない怪物の正体を暴き出そうとするハンターと、その数々の罠をくぐり抜けて逆に罠を仕掛けてくる人狼との、知略と経験を駆使した頭脳戦。
果たしてどちらが狩る者で、どちらが狩られる者なのか。
そもそも、当初は誰が人狼なのか確定していない上に、途中で入れ替わる可能性すらあったので、登場人物全員、というかむしろメイン級のキャラこそ疑わしくもあり、けっこうドキドキしながらページめくってたんですよね。
この人狼との対決の前に、ヴィクトリア女王とノアが知己を得た事件であり、獣の魔術師との初遭遇の事件の話をしているのだけれど、そこに出ていた顔見知りのキャラクターとて、知人であってもそれが保証にならない、実は人狼が成り代わっているんじゃないか、むしろ過去回想に出ていたのが伏線じゃないのか、という疑念まで湧いてくる始末。
その、誰が人狼なのか、という疑心暗鬼も、実際に人狼が牙を剥いて動き出して以降は正体も明らかになってスッキリするのだけれど、面白いことにそうなったらそうなったでむしろ人狼側にスポットがあたり、語られる物語の比重が移っていくのである。
人の中にまじり入り、人に化け、人になりきり、人の社会に、人の家庭に潜り込む人狼の大敵。誰よりも人間を熟知し、誰にも見破れぬほど人間として生きる怪物。
故にこそ、その怪物は、大敵は、人を理解してしまっているのではないのか。人の心を、理解してしまっているのではないのか。
むしろ、この第二巻の真価は人狼との対決が終わったあとにあったのかもしれない、というくらいに戦いの跡に残されていた事実は、胸を締め付けてくるナニカがあったんですよね。その余韻をかみしめずにはいられないナニカが。
同時にこれって、今ノアが連れてまわり、何だかんだとシルヴィとイチャイチャしているエルザの存在意義にも関わってくる話だったような気がします。史上最悪の大敵でありながら、今こうしてノアたちに協力し、口では色々言いながらも心からシルヴィを心配して気をかけ、何くれとなく助けてくれるエルザ。もうお前シルヴィのこと大好きだろう、と言いたくなるくらい、シルヴィとベタベタしているエルザが、大敵の中のあり得ない例外ではないかもしれない、という可能性。
人類の相容れない敵。ただそう決めつけて良い存在なのか、かの怪物たちは。その疑問を抱かせてくれる大敵を、早々にこの二巻に持ってくるあたり、色々と考えさせられるものがありました。
まあ大体にしてエルザがシルヴィのこと好き過ぎるのが悪いんですが。おのれ、一巻に引き続いて二巻でも終始イチャイチャしおって。シルヴィの方も自分が愛されているのを自覚して、エルザのことからかってるのもたちが悪いのですが。おのれ、女の子同士でけしからん、もっとやりたまえ!

1巻感想