異世界食堂 4 (ヒーロー文庫)

【異世界食堂 4】 犬塚惇平/エナミカツミ ヒーロー文庫

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家族を持ったことのない、遠い異世界からやってきた女。家族を失い遠い大陸から戻ってきた男。終戦間もない混沌の時代に二人は出会った。女ができた仕事はただ一つ。魔王を狩ることのみ。男ができる仕事はただ一つ。料理を作ることのみ。やがて女と男は店を持ち、家族を作り、そして異世界の客を招く。かくて始まりし『異世界食堂』。毎週土曜日にだけ開くこの店は、絶品の料理で、多くの客をもてなす。『洋食のねこや』、創業五十年。『異世界食堂』、開店三十年。今日も、チリンチリンと扉が開く。

あれ? けっこう先代店主が勇者だったと思ってた人多いのかしら。先代のキャラからしても根っからの料理人っぽかったのだけれど。
というわけっで、洋食屋「洋食のねこや」の成り立ちと「異世界食堂」誕生の謎が描かれた第四巻。偶々、異世界とねこやがつながってしまったのではなく、ちゃんと明確な理由と意思があってのことなんですよねえ。
人に歴史あり、店にも歴史あり。
この作品は、過去から未来へ、次世代へと残し受け継がれていくもの、というテーマみたいなものが色んな場面から伺うことが出来るのだけれど、「異世界食堂」のはじまりとそこに込められた願いがこうして語られ、そして時代である今の店主によって続けられている今の「異世界食堂」に暦お婆ちゃんが現れて、改めて店のマスターキー。異世界へとつながる扉を閉めることの出来る鍵を託して、今の故郷である日本の孫とともに住む自宅へと戻っていく姿は、なんとも象徴的であり印象的でありました。
先代の爺様と、かつて邪神を封印した四英雄の一人であり、この異界である日本に流れ着いて、一人の暦という女性として生きることになったヨミという女の出会いと、二人によって育まれた願い。
でも、それを引き継いだ今の店主が、異世界のお客さんたちに料理を供しているのは先代たちのそれとは、また少し形を変えて成り立ってるものなんですよね。アレッタを給仕として雇っているのもその一貫だし、久々に店に訪れた暦さんが、「ねこや」が先代と自分の手を離れたんだなあ、と実感している様子に何か沁み入るような感慨を抱いてしまいました。
確かに受け継がれるものがあり、しかしその先で時代や人に合わせて変わり適応していく。変わりながらも変わらず、変わらないまま変わっていく。歴史や伝統って、そんなものなんですかねえ。
王妹であるハーフエルフの先祖返りであるヴィクトリアと、彼女の小さな甥っ子と姪っ子のエピソードもまたそんな変わるものと変わらぬものを併せ持った家族の話ですし、帝国から広がった「ダンシャク」の芋の真実なんかも、知られざる歴史の1ページであると同時に、店主の幼いころのヤッチャッタエピソードでもあるわけで。
そんな店主ですが、わりともういい歳にも関わらず、まだ未婚で子供もいないわけですよ。かつて居たらしい恋人に関しては、なにやら悲恋めいた話があるらしいですけれど、現状後継者いないんですよね。
これについてはウェブ版ではちゃんと答えが提示されているのですが、書籍版だと影も形もないんですよね。今後、どうするんだろう。掲載エピソードからすると、まだ書籍版だとそこまで行ってないのか。では、これからに期待でしょうか。
それにしても、先代とヨミお婆ちゃんの若き頃の質朴としたラブロマンス、これはこれでいいもんだなあ。先代は、過去の異世界食堂のエピソードでも感じたけれど、粋な人なんですよねえ。それでいて、戦前生まれの人らしい逞しさも迸っていて、まあヨミお婆ちゃんからすると運命の出会いだわなあ。
意外と、今の店主とはかなりキャラも違っているのも興味深い。
そして、客同士の間でも広がっていく人間関係。本来なら遠い異国の地で消息を絶ってしまった親族とか会えるはずがないのに、ねこやでばったり再会して、生存確認! とか、この異世界食堂でないと成立しない話ですしねえ。エルフのフェルダニアにも旅の連れ、いや新たな家族が出来たり、スイーツを通じて新たなパーディーが生まれたり、とここにも「変わっていく」ものがあり、そこに「異世界食堂」が素知らぬ顔をして大きな存在感を齎している。
いやしかし、改めて原作というか小説版はこれ、飯テロパワー高いですわ、強いですわ。読んでてめっちゃお腹空く。ぶっちゃけ、お子様ランチとか凄い食べたくなってしまったのはどうしてくれよう、ってなもんですけれど。パフェやスイーツは食べれても、お子様ランチだけはもう頼めないもんなあ。どれだけ恥じらいを捨てようともw

シリーズ感想